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第37夜(学園編) 新生フローレンス

 







 あれから8年。




 フローレンスは最大の悲劇を乗り越えた。




 あの時。

 彼らは自分達こそが最優良種族だと今まで思っていたのかもしれない。その油断が全てを呼んだのだとフローレンスにいる人間達が気づいた時には既に遅かった。

 当時の貴族達の当主、その6割が死ぬという大事件から幕を開けた帝国との戦争は3ヶ月の悲劇と後に歴史に残る程の大戦争となり、数え切れない犠牲者と大損害を出した。


 結果的に言えば、犠牲を出しただけでフローレンスは何も得ることなく、惨敗した。


 それはルーシフーの乙女と呼ばれる彼女の言う通りにすれば、全く別の最善の結果が得られたであろう事だった。だが、彼女が幼すぎて重責を背を負わせたくない、大人のメンツとして幼女に頼りきりはプライドに関わるといった上層部の個人的な理由から、彼女が休暇を取っている僅かな間に、有効だと思った作戦を立案し、実行した。


 ‥‥それが更なる悲劇を呼ぶとは知らずに。


 帝国は既にフローレンスでは禁止魔法に指定されている移動魔法を使える者以外を退却させており、城壁を修復しても無意味になっていた。‥‥それに気づいたのはだいぶ後になってからだった。そして、ただでさえ襲撃による当主の死や、領地が占領されたことで大打撃を受けていた貴族達に更なる悲劇が待っていた。

 魔族を奴隷にしていた貴族やその貴族と懇意にしていた商人が軒並み、魔族に襲撃されたのだ。

 帝国は自身の領土拡大やフローレンスの陥落から目的を変え、自分達の種族のプライドを穢した者に報復する方向に変えたのだ。そのせいで貴族の中には家も領地も金も失ったり、幼子1人残して一族が断絶したり、政治の中枢を担う貴族が次々と力を失い、無事な貴族などこのフローレンスには殆どいなかった。

 また、結局、帝国に占領された領地を取り返すことも出来ず、そのせいで残った領地に対し、領地支配する貴族の方が多いという悪質な飽和状態になってしまった。


 これだけの事で3ヶ月。たった3ヶ月でフローレンスの状況は一変してしまった。


 帝国はあらかた自身と同じ魔族かつ隷属されていた彼らを解放するとそれ以来沈黙し、侵攻することはなくなったが、退却することもなく、フローレンスは常に緊張感を持ったまま打開策を練らなくてはならなかった。

 その一方で、犠牲者は未だに計測出来ず、捕虜となって帝国に送られた人間の数も分からない。特に犠牲者の多かった兵に関しては、今までの騎士団や私兵では防衛に足りず、恒常的な増員が必要になり、フローレンスの残った領地から領民が次々と徴兵され、深刻な領民不足及び働き手の不足で農作物の生産も滞り、フローレンスの経済は深刻な不況となった。


 だが。


 この件により、グローゲンは自身が中心人物となった城壁作戦の失敗及び全ての責任を負って、宰相の職務を自身の息子であり、長男であるルークに渡し、辞任。元々から引責退位を表明していた王もまた自身の息子であるルキウスに王位を譲り、国政から完全に退いたことで、フローレンスには転機が訪れることになる。

 物理的な大打撃を受け、かつ、フローレンスに溢れ返った貴族達と領地支配をルキウスは見直し、同時に今回の戦争の責任と功績を整理した。その結果、貴族から爵位の剥奪や領地の縮小もしくは支配権の抑制などの処罰をルキウスは次々と下し、貴族の人数を大幅に減らし領地支配制度を見直した。同時にこの戦争で武功を挙げた騎士に報償を取らせ。また、物資配給に尽力した商人や商会にも王として謝礼をした。

 これによってルキウスは元々力を失っていた貴族の地位を完全に落とし、騎士や商人の地位をあげたことで、身分差の縮小にルキウスは成功し、そして、彼はフローレンスの歴史に残る大革命をすることになる。


 三部議会。


 貴族、騎士、商人による議会政治を開始したのだ。

 騎士と商人に限り、市民選挙によって選ばれたものだけが議会に出られるが、それでも今まで貴族に任せきりであった政治が騎士や商人に代表されるような一国民一平民の手に渡るようになったことはフローレンスの歴史を塗り替える出来事になり、元々国からの重税や今回の戦争や不況によって生活苦にあえぐ市民に政治熱を燃えさせ、フローレンスは空前の政治ブームが巻き起こった。

 その数年後には農耕民や労働者も議会の参加権が与えられ、フローレンス各地で益々、生活の改善、政治革命の熱は膨れ上がった。




 一方、ルキウスはこれによって貴族が弱体化し、出来てしまった政治の穴を塞ぎ、戦後の混乱と敗戦の傷による被害を最小限に抑えることに成功する。

 慢性的な騎士不足は選挙権を求める市民が次々と志願して騎士になってくれた為に解消し、経済の不況も商人を政治に参加させることで効果的かつ的確な経済政策を行えるようになり、不況から脱却することに成功。その経済の好調を背景に、農耕民や労働者の意見から農業革命や労働環境改善など次々に成功させ、ルキウスは自身の権力を盤石しながら、革命を推し進めていった。


 一連の改革によってルキウスは市民からの圧倒的な支持と支援を得ることになり、立憲君主制国家ながら絶対的な名君として崇められるようになる。‥‥その一方で、彼は貴族の不満を次々と買うことになっているのだが、ルキウスがそれに意に返すことは無かった。



 既に政治は市民の手に渡っていたのだから。






 そんな一方。





 今から8年前、そして、あれから8年後。

 辺境伯領の領主に引き取られた少女はというと‥‥。





 ‥‥少年になっていた。








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