幕間 ユリア嬢の落ち度
はじめまして、私はユリア・ローザレンス。
他とは一味違う異世界転生ヒロインっです!!
そう私はあのネット小説のテンプレート展開で有名な異世界転生ヒロインなのです!!じゃっじゃ~ん!
いやあ、生まれ変わる前はドルオタのゲーオタアラサーだったんだけどさ。男に縁がない枯れた人生で、こういうのにすごーく憧れたんだ。乙女ゲームに自分が入り込んじゃうの!だって、ネット小説的展開だと、イベントとか規定の台詞を言うだけで強制力とかそんな力だけでチヤホヤされるわけでしょ?あれさ、悪役令嬢の話でよくある設定だけど、考えてみたら利用できるよね!?
多分、私みたいな干物女にはそういうシステムが無いと恋人1人出来ない。なら、利用するっきゃ無いでしょ!うんうん!折角、ヒロインになったんだもの!狙って行かなくちゃ!
ちなみに私が転生したこの世界、『Fortune Love 8』は当時トップアイドルだったグループの名前をあやかって作られた乙女ゲームだ。中身は全くそのアイドルグループとは関係ないけどね!
魔法とモンスターと人間以外の様々な種族がいる世界で国の行く末を左右する大恋愛をする‥‥そんなモットーの乙女ゲームで、フローレンスという人間による人間の為の人間の国が主な舞台だ。
フローレンスはかつて他の種族によってその場を追われた人間達が千年かけて作り上げた国で、立憲君主制のような議会制度を持つ法治国家制度と中世ヨーロッパのような文化を持つ。建国時の名残から他の種族を寄せ付けない排他的な国だ。
そんな国を中心にして、このゲームの物語はヒロインが16歳‥‥そうこの私、ユリア・ローザレンスがこの国が運営する学園、ブーゲンビリア学園に入るところから始まる。
攻略対象は6人。どの攻略対象を選んでも最後には力を合わせて敵を倒しながら、国の未来を作っていく。
そう!このゲームはただ恋するだけじゃない!
所謂、RPG要素があり、自分達の前に立ちはだかる敵を策略や謀略、時に力任せに倒してエンディングを目指すのだ。なんかもう努力、友情、勝利的な?要素もあって、恋愛だけしたい人には億劫だけど、+α欲しい人にはかなり受けたのよね。モンスターも出てくるし。
攻略対象の一番人気はもちろんミカエラ第2王子!何故、第2王子が国の行く末に関わるかってネタバレになるから言わないけど。彼が何故一番人気かってやっぱりイケメンキャラだからよね!外見も中身もイケメン!それでいて影のあるキャラクター!私の大好物!
まあ、詳しいキャラクターはさておき、とにかく、ここは乙女ゲームの世界なのですよ!!
いやぁ、盛り上がらない理由がないね!
画面の中のあの人と本物の恋愛が出来るんですもの!よく考えて!?有り得ないことが実現しているんだから!
こうなったら、私のミカエラ王子をゲットするべく、攻略しちゃうわよ!!‥‥余力があったら、他の攻略対象も狙っていくけどね。
これを思い出したのが、1歳で良かったわぁ。
王子様ルートを原作よりも安定して攻略する為にあれこれ出来るんですもの。
ローザレンス家は伯爵位を持つ名門貴族とはいえ、これからヒロインを脅かすべく色々起こるの。
まず、うちの家族。お父様が夫婦仲の悪さが原因で、不倫しちゃってて醜聞が立ったせいで起こるトラブルイベントがあるから、そのフラグをまず折らなきゃ。あれ、ミカエラ様との好感度が上がらない癖に醜聞を期間内にどうにかしないと、結婚が破談になるのよ。面倒くさい。でも、2人を惚れ直させることに成功して本当に良かった。これでフラグのへし折り成功!
あと、アイリスね。この子は所謂、悪役令嬢。この子が王子様ルートで一番面倒なのよ。他のルートでは大して脅威にならないんだけど‥‥。アイリスは我儘傲慢、悪役令嬢の鏡みたいな性格でヒロインを虐める根っからのいじめっ子で、ヒロインが王子様に惹かれていると知るや、何度でも邪魔してくる敵なの。アイリスは自分より優れているヒロインが許せなくて、そのヒロインが王妃になると考えたら、それだけで嫉妬に狂ってしまうキャラ。最終的には魔法で怪物になって襲ってくる。これでミカエラ王子のお母様亡くなってしまうのよね‥‥。
うん、どうにかしよう!ミカエラ様のお母様が死ぬとそれはそれで凄く大変だし!とりあえず、私に対して虐める気がなくなるようにすることと、我儘傲慢な性格にならないようにすればいいよね!よっしゃ、じゃあ単純に考えて、私は舐められないようにして、アイリスを頻繁にお父様や先生に怒って貰えるようにしよう。悪役令嬢にならないよう芽をとことん潰せばいいのよ。いくらか乱暴でも!あ、仲良くなるとかスケジュール的に無理だから、勘弁してね。相手の気持ちを考えながら、いい方向に。なんてネット小説の登場人物みたいに出来ない。アイリスには悪いけど、あなたの幸せ考えながらやっていたら、お父様とお母様の仲を取り持つのが疎かになる。だから、アイリスとは極力関わらないことにしていた。ま、あの悪役令嬢のアイリスだし、やりすぎてもへこたれずに生きていけるでしょ!
それに私には王子様ルート、幼少期最大のイベントが待っているんだから。
王子様ルート最大のイベント‥‥それはお嬢様誘拐イベント‥‥!!
RPG要素があるということはこのゲームにはラスボスがいる。ちょっとどんなラスボスだったか覚えていないけど、フローレンスを脅かすヴィランであることには変わりはない。そのラスボスにはもちろん多くの部下がいて‥‥えーと確か、魔女。そう、魔女!!名前忘れたけどラスボスの部下に魔女がいて、魔女の手下がローザレンス家を襲いに来るの。その時、ヒロインは娘に愛が無いとはいえ両親を庇って、魔女の手下に連れて行かれるの。そこでヒロインは魔女から『愛する人を愛するほど殺めようとしてしまう』呪いにかけられちゃう。これを機にヒロインは心を閉ざしちゃって、それを優しいミカエラ様が少しずつ開こうとするの‥‥!その過程で2人は愛を育んで、最後は2人で呪いに打ち勝って最優のエンドである『永遠の愛』エンドになる!
このエンドの必須条件がこの呪いを受けて、かつ呪いを王子に解いてもらうこと‥‥!
私はこのエンドを目指す。うん、目指さなきゃ!!
ただこの手下に連れて行かれるには条件があって、“すんごくいい子”じゃないとだめ。家族の為に身を捧げるような優しくて健気な子じゃないとダメなの。幾ら両親から愛されていなくてもね!
ふふふ‥‥。私は1歳からずっと家族の為に、ミカエラ様の為に頑張ってきたのよ。絶対連れて行かれるわね!ま、どうせシナリオ通りに世界が進むはずだから、私が連れて行かれるのは当然の帰結なんだけど!
‥‥ってオモッテタノニナー‥‥。
何でアイリスが連れて行かれるわけ?
あの子、悪役!超嫉妬深くなる悪役だってのに!何で私がお屋敷に元気でいるのかなぁ!?
‥‥両親がまさか私を引き止めるなんて思わなかったし、最大の原因はアイリスよ。そう!あの子、あんなに家族を大切にする方じゃないでしょ!?しかもユリアを守る人がいないじゃない、とか私を大切にしているような発言しちゃってて、信じられないんだけど。あの子、悪役なのに!いつの間に改心しているわけ?私、何かした!?てか、優しくて健気な子の条件が私より当て嵌っていたから、連れて行かれたんだよね?なして!?どのへんが!?
うわーん、嫌だー。
王子様ルートのフラグをよりによってアイリスなんていう悪役に取られるなんてー!
これじゃ永遠の愛エンド諦めるしかないじゃない。
うー、こうなったら別の攻略対象を目指そうかな‥‥。
うん、選り取りみどりだもの。第一希望は諦めるしかなくても、第二希望はある!え?その思考クズすぎないかって?大丈夫、大丈夫、こんな思考がバレなきゃ良いんですよ。
つーぎーはだーれにしようかな、と!
諦めの早さも一味違う私の特徴!
えっ?アイリス?いつか帰ってくんじゃない?
私は公爵様の攻略ルートのフラグ立てに忙しいのよ。ああ、公爵様!あそこにも敵がいるからな‥‥えーとこうして‥‥っと。
ちなみにアイリスも魔女のところではなく、ハルトのところに連れて行かれたので、ルートは発生しません。王子はいつの間にか人生独り身ルートが開かれました。お疲れ様です。