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第34夜 回顧からの英断

 







 いや、馬鹿にしないで欲しい。

 魔法で死んだ?なんで、そんな結論に至るかだって?


 簡単だ。


 それ以外、結論がどう足掻いたって出ない。

 まこちーの最期を見ていた3台のカメラ全て、まこちーの背中から突然ナイフが出てきたように見えた。メンバーの話でもそれは証明できる。

 最初こそ、明らかに不審な動きをしていた柊美優が怪しいと思ったが、白だった。‥‥いや、俺の直感は未だに“柊美優が犯人”だと思っているが、証拠不十分すぎる。

 ともかく、ナイフが突然、現れたのは本当だ。

 これを魔法と言わず、何と表現すればいいか分からない。ナイフ以外に目に付くものがまこちー自身とメンバーしかいない時点で詰んでいた。他に目に付くものを強いて言うなら、いつもMV撮影にはいるプロデューサーがその撮影だけいなかったことだが、関係無さそうだった。



 だが、魔法と考えると一つだけ納得する要素がある。



 凶器のナイフは確かに金属製だったが、この世界にはどこにもない金属だった。

 まだ発見されていない金属、それがナイフの形に錬成されている。奇妙で不可解すぎた。



 それが魔法なんていう不可思議すぎるもので出来たというなら、妙に納得した。





 ‥‥しかしながら。





 そこまで考えていたというのに、真相にたどり着く前に、俺は死んだ。

 別の事件の捜査中に後輩を庇ったらそのままお陀仏したようだ。‥‥うん、後輩を庇ったって字面、超ヒーローっぽい。俺の人生が輝かしい最期を迎えたように見える。正確には上司の叱責に涙目の後輩のフォローしていたら、偶然落ちていたコピー用紙に滑って、机に頭ぶつけて、当たりどころ悪くて御臨終‥‥というアホみたいな最期だったのに。

 ‥‥いや、もうこれが俺だよな、うん。





 ‥‥だが、俺の物語はここで終わらなかった。





 何と転生した。

 いや、もう何がどうなっているのか分からない。

 しかも、乙女ゲームの世界に。

 そこはただの異世界にしてくれ、と本気で思った。


 その上、よりによって『fortune love 8』と来た。最悪である。


 王のパレード中にルキウス王子を見て、『あの人、第二王子に刺されるんだよな‥‥。』と回想した瞬間の絶望は半端なかった。

 あの乙女ゲームは俺が唯一手を出した乙女ゲームだ。理由?まこちーである。

 彼女がガチなゲーマーなのは、ファンにはよく知られていたことだった。

 だから、グループ名をあやかってタイトルにしたこのゲームを彼女なら絶対にするだろうと踏んで、プレイした。そして、握手会の時の会話ネタにして、盛り上がろうと思っていた。


 ‥‥正直に結論を言おう、全くの無駄かつ不快になっただけだった。


 彼女は“プレイしてなかった”し、中身は全くグループとは関係が無かった上に、俺には耐えられない内容だった。

 本当に‥‥女性ってこういう‥‥やつが好きなの?

 攻略対象との恋愛パートは置いておこう。男の俺からしたら理解しかねる点が幾つかあるか、まあ、女性の理想像だ。突っ込まないでおこう。

 だがだ。

 ‥‥なんだ。このストーリー。

 フローレンスを中心に行われる恋愛模様なのだが、このフローレンスの退廃、腐敗よう、直接描いている訳では無いが、聡い奴なら誰でも分かるぐらい酷かった。そんな国の未来を恋愛によって変えるわけだが‥‥まあヒロインと攻略対象が‥‥よして、置こう。深く考えると当時の不快感で鬱になる。とにかく、どのルートでも終わりはとても端的に言うと、腐っている国がおとぎ話の終幕のようにヒロイン達によって“幸せに末永く暮らしましたとさ”ってなるのだ。ツッコミどころ満載。

 クソゲー。

 俺はそうこの乙女ゲームにそんな総評をした。




 そして、そんなクソゲーに俺は転生した。




 転生した先が、物語には出てこないモブキャラの類に入るキャラだったことが唯一の幸い。あのヒロインと攻略対象に会うなんて却下だ。男爵の爵位は持っているが、金はない貧乏騎士の家に俺は生まれた。ちなみに爵位は昔、祖父が魔族との戦争で首級をあげたから、貰ったらしい。しかし、名誉爵位である為に、領地はなく、ミドルエリアの治安向上という無茶難題な命令をこなすだけの底辺貴族である。

 ‥‥治安向上‥‥所謂、取締りだが‥‥まさか転生してもやるなんざ。思わねえよ。




 ま、お陰で俺はまこちーと再会出来たわけだが!!



 そうあのまこちーが転生していたのだ。



 街の噂で、前世があってここをゲームだと言っている奴がいると聞いていたから、俺以外に転生者がいるのは分かっていた。だが、まさか、まさか、まさかのまこちー。俺のテンションは爆上がりだった。彼女の名前であるシヴァリエ・マイネスからして、彼女もモブキャラだろう。そんなキャラはあのクソゲーにはいなかった。まこちーなら転生してもヒロインが有り得ただろうが、このゲームに限ってはまこちーがヒロインなのは断固反対だ。あの攻略対象と恋愛とか有り得ない、有り得させてはならない‥‥。

まこちーファンの1人として絶対阻止しなければ。前世のことを思えば、意気込みの質も違った。


 だが。


 正直に言うと、ここまで話しておきながら、俺は前世の記憶に対する実感が薄かった。

 シナリオに左右されないモブキャラだったのもあるだろう。どこか幼い頃を思い出すようなそれに似ていた。

 もちろん前世の知識はあるし、子どもの振りが出来ない程に、精神的に大人びすぎている。だが、だからといって前世の自分と今の自分をひと続きに見られるかと言えば、NOだった。何だか違う生き方をした別の自分を見ているような気がする。


 だから。


 まこちーと再会した時、友達から始めませんか、なんて普通に言えたのだろう。ファンなら一線越えたくても超えないよう自分を抑えるのも重要だから。春川翔太だった俺なら絶対しない、築き上げた信頼関係を優先するだろうから。

 だが、俺は、フィン・グラードは違う。

 要は小さい頃から憧れていた人が目の前に現れたようなもので、接点を欲しがるのも、特別な関係に憧れるのも仕方が無かった。

 それに思うのだ。


 春川翔太は結局、まこちーを守ることもできなければ、救うことも出来なかった。

 彼女をプロデューサーに勧めたが為に、彼女の人生を狂わせ、未来がまだまだあった筈なのに誰かに殺されるという最期を飾る。その上、その最期の死に際の謎さえも解き明かせず。彼女を殺した者を断罪することもできなかった。



 だが、(フィン)は‥‥。



 まだ今からがある。彼女また10代で死なすわけには行かない。前世の俺が彼女に抱いていたあの気持ちは俺にもある。

 俺は彼女を守ることも救うこともしてやりたい。

 とはいえ、彼女は乙女ゲーのモブキャラ‥‥大丈夫だと思う。シナリオには出てこないし、せいぜい彼女の魅力が攻略対象にバレないことだが‥‥あ、ストーカーされてたや。わりと大丈夫じゃないな‥‥。






 ただ、一つだけ確実なのは。






 ‥‥今の俺より、大丈夫であるということだ。









「改めて紹介するね。こちら、私の兄のハルトお兄様!」

「‥‥。」

「は、は、はじめまして‥‥。」


 ニコニコと機嫌良さげに隣にいる人物を紹介するまこちーもといシヴァリエ嬢。そして、たった今、紹介された彼女の隣にいるその人‥‥ハルト・マイネス伯に俺はもう冷や汗と震えが止まらない。

 めっちゃ、

 めっちゃ睨んでる‥‥!

 目が冷えきってる‥‥!

 殺気が溢れてる‥‥!

 マジで殺される‥‥!!


「‥‥シヴァリエ。」

「はい、兄様、何ですか?」

「‥‥友達か?」

「はい!友達です。」

「本当に‥‥?」

「ん?そうですよ?ね、フィン?」



「あ、は、はい‥‥友達、友達ですぅ‥‥!」



 まさか転生したまこちーにこんな超怖い兄が出来ていたなんて知らなかった。‥‥あのストーカー少年が危険だとか怖いだとか言うはずだ‥‥。やばい‥‥これでシヴァリエ嬢に手を出したら‥‥殺される‥‥絶対殺される‥‥。



 俺氏、死ぬ。



「お友達になってくれて本当にありがとうございます。今日のお礼もちゃんとしたいので、あの、お手紙書いてもいいですか?色んなお話したいです!」


 っ!?はい!!もちろんします!!!!

 だけど、お兄様からの視線がかなり痛くなってるので、あんまりお兄様刺激しないで!お願いだから!!後で闇討ちされても当然の展開に思えるくらい怖い目で今!見てるから!!



「‥‥。」



 ヒィッ‥‥!!


 ‥‥決めた‥‥。

 俺、今世はまこちーの為に生きるけど‥‥あのお兄様だけは敵に回さない。うん。絶対回さない。死ぬから!!


「コンゴトモヨロシクオネガイシマス‥‥。」







 ‥‥だが、この時、またしてもしでかしてしまう‥‥。

 まさかこの出会いと誓いが8年後、とんでもないことに発展するなんて思わなかったんだ‥‥。思える筈が無かったとしても、俺がもし‥‥まこちーの友達になりたいなんて言わなければ‥‥どんな未来が待っていたんだろう?





 全てのカードが揃った時に、俺はまこちーに出会ってしまったのかもしれない。

 本当はもう出会う前からこれは始まっていたのかもしれない。


 ‥‥そう、あのまこちーがメジャーデビューしたあの時から‥‥。







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