第四話 お礼と自己紹介と質問
辺境都市オリアの城門へと連れていかれる俺は助けてもらったお礼と、歩きながらお互いに軽く自己紹介をしようと、冒険者の男に話しかける。
「先ほどは助けていただき、ありがとうございました」
ぺこりと、丁寧になりすぎないようにお辞儀をすると。
「いいってことよ、俺はCランク冒険者のラングだ」
「あっ、俺の名前はタカラ ヨシミです」
つい自分の異世界に来る前の名前を名乗ってしまっていた。
「ん、タカラ・ヨシミ?家名を持っているのか?お前元の世界でも貴族だったのか?」
「いえ、俺の世界では貴族はいませんが一般市民でも家名があるところだったんです。ただこちらに転移してきた影響なのか、タカラ ヨシミがヨミという名前だけに変わってしまって・・・」
どうやってステータス見たんだと突っ込まないでくれよと思いながら。
「そうか、この世界では貴族以外では家名が無いのが普通だ。ステータスにヨミとしか表示が無いのなら名乗るならステータス通りのヨミを名乗ったほうがいいだろう、事情を知らない者に家名を聞かれてステータスを調べられるとまずいことになるしな」
歩きながら詳しく聞いていくと家名があるのは王国が管理する貴族のみで、貴族以外が家名を名乗るの事は厳しく処罰されるらしい。
「じゃあこれからは、ヨミとして生きていかないといけないんですね」
「そうだなトラブルに巻き込まれたくなければ以前の家名と名は捨てたほうがいい」
その他にも、冒険者って毎日クエストをこなすんですか?とかスキルと魔法の事を聞いていく。
「んー俺はそうだなあ、クエストは常時依頼のものを毎日受ける事が多いな。今日、受けたのは西の平原を見回りながら西の森に続く街道の異常が無いかとか調べてギルドに報告するクエストだ」
「へ~じゃあ俺は、そのクエスト中にラングさんに助けられたんですね」
「ははっそういう事だ」
「あとスキルと魔法の事を教えてもらってもいいですか?」
「おうっいいぞ、まずはスキルだが通常はすぐに覚えることが出来る・・・が、スキル技を覚えるのに少し時間がかかるかもしれないな。例えば剣術のスキルは訓練すればすぐに覚えるんだが剣術のスキル技のスラッシュは何度か剣の鋭い振りと体さばきを練習して覚えることになる」
「スキル技としてステータスに登録されるには特訓が必要と言うことですか?」
「ステータスに登録されれば、マナを消費してこんな風に<スラッシュ>とモンスターを切り裂く技を手軽に出せるようになる」
ラングさんが<スラッシュ>と剣術のスキル技名を唱えると、鋭く青い剣線が空間に走った。
「うわっすごい・・・」
その物凄い剣技に俺はマジマジとラングさんを見つめてしまっていた。
「まあ、初めて見たんなら驚くだろうなっ。お前のその顔・・・初めて技を見せたガキンチョどもと同じ顔してたぜっ」とラングさんにニヤリ顔されてしまった。
「いやっほんと、なんって言ったらいいのか。あこがれますっ」
もう俺の心の中ではこんな凄いことがスキルでできるんだとスゲーと興奮してしまっていた。
「あっあと魔法はどんなものが?」
異世界に来たんだ魔法も使ってみたいっ。
「魔法はマナが使えればだな。強力な魔法になると精密なマナの制御と、その現象を起こすための深い知識が必要だと言われているかな・・・俺も強力な魔法の事はよくわかってないのでこの説明が正解なのかは分からんが」
「では、初心者用の魔法とかは簡単に覚えることが出来るんですか?」
「そうだな、初心者は生活魔法を覚えるな。例えばマナを使い<****>と唱えれば火を起こすときの火種程度の火を出すことができる」
俺には何を言ってるのかわからなかったが。その辺に落ちている枯草を拾い、ラングさんが唱えると枯草に火が付いた。
「あと、冒険者に必須な生活魔法がこれだ<****>」と唱えると今度はラングさんの体全体がうっすらと青くなり先ほどの穴狼の血や汚れが無くなっていた。
「ラングさんすごっ!!!」
俺はラングさんの生活魔法を見ただけで大興奮していた。
◇ ◇ ◇ ◇
そんな話をしていたらあっという間に辺境都市の城壁内に入るための入場検査の列に到着し。
「さて、もう少しで辺境都市オリアに入ることが出来る。ヨミお前は異世界から転移してきた稀人だ・・・稀人は見つけ次第保護し冒険者ギルドへ連れていくことになっている。俺と一緒に冒険者ギルドへと来てくれるか?」
いまさらながらに、ラングさんが改まって聞いてきた。
「その、ラングさん。冒険者ギルドに行けば・・・ほんとに俺を保護してくれるんでしょうか?」
何も無い俺は甘えるしかない・・・が。
「まあ、冒険者ギルドが保護しろと言ってるんだ。悪いことにはならんと思うぜっ?」
そうだよな・・・俺はラングさんの申し出に従うことにした。
スキルと魔法に興味津々な主人公です。