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似ているふたり

 騎士見習いのジャンは、テオのもとで騎士になるための修業をしていた。


 十三歳にしは小柄で、他の騎士見習いたちからからかわれることが多かったが、それは最初のうちだけだった。


 ジャンは騎士見習いになりたてだとは思えないほどの技術を持っていた。

 それもそのはず、彼は早いうちにその才能を見いだされ、十歳のころから騎士見習いをしていたのだ。


 貴族の少年が従者として騎士に仕えるようになるのはだいたい十三、四歳くらいからで、十歳といえば、普通はまだ小姓として行儀見習いをしている年ごろだ。


 そんなジャンが何故テオのもとにやってきたのかといえば、それまで従者としてついていた老齢の騎士が病で亡くなってしまったからだった。


 若いころにいくつも武勲をたてた素晴らしい騎士で、ジャンは彼の指導により既にその才能を開花させていた。

 そこで、老齢の騎士の死を知ったジャンの兄・クルトが、自らの友人であるテオに弟を紹介したのだった。



 この日、見習いとしての仕事をひととおり終えたジャンは、空き時間を利用して剣の稽古をしていた。

 槍はそこそこ使える自信があるが、剣はまだまだだと自覚していた。


 それに、ジャンは確かに騎士見習いの中では飛び抜けた腕を持っているが、テオからはまだ剣、槍共に一本もとれたことがない。


 騎士――しかもその中でも負け知らずと言われているテオと、いくら才能があるとはいえまだまだ騎士見習い中であるジャンの勝負の結果として、それは至極当然のものではあった。


 だからこそジャンは更に訓練をして、いつかテオから一本を取りたいと、そう思うのだった。



※※※


 夕焼けですっかり赤く染まった空の下、親方のもとでしごかれてへとへとになったソフィが城に戻ると、訓練場で剣を振る人影を見つけた。


 ソフィが入ってきた脇門の周辺には、馬房や、この城にいる騎士や騎士見習いたちが訓練をするための場所があるのだ。


 定められた訓練の時間はとうに過ぎているはずで、ソフィがこの道を通るときにはいつも訓練場は静まり返っている。


 ソフィはすぐに、その人影がいやに小さいことに気づいた。

 その割に、振り下ろされる剣には迫力がある。となると、思い当たる人物はひとりしかいない。


 ソフィはその人影の視界に入って稽古を中断させるようなことのないように注意しながら訓練場に近づいた。

 訓練場といっても、柵で囲われているだけなので、下手に近づいたらすぐに気づかれてしまうのだ。


 適当な位置まで接近したところでソフィは立ち止まり、ジャンがひとり稽古をする様子をじっとみつめる。


 ソフィ自身は剣を振ったことなどないけれど、兄たちや騎士が練習する様はよく見学したし、武芸大会なども見たことがあるので、剣を振る様子を見れば、そこからある程度のことはわかる。


 だから、ジャンの腕前が相当なものだということも、すぐにわかった。


 今、ジャンはソフィの目の前で静かに、けれど力強く剣を振っている。

 ジャンの体には少々長すぎるように見える剣を、見事に扱っている。


 その動きは流れるように美しくしなやかで、けれどそのひと振りにはそこにある全てのものを断ち切る

ほどの鋭さがあった。


 ソフィはそんなジャンの動きに見惚れた。


 ジャンが激しく動く度に、栗色の髪の先から、その細い顎の先から、汗が飛び散る。


 ふいに、ああ、ジャンも同じなのかもしれない、とソフィは思った。

 ひたむきに剣の練習をするジャンと、琥珀細工師を目指して親方のもとで日々修業を積んでいる自分の姿が重なる。


 胸が熱くなり、自分もがんばらなければ、という思いが溢れてくる。


 やがて日が沈み、ますますあたりが暗くなってゆくにも関わらず、ジャンが練習をやめる気配はなかった。


 ソフィはもっと見ていたいという気持ちを抑え、そっとその場をあとにした。

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