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兄弟と姉妹

 テオが一連の仕掛けが無事落ち着くところに落ち着いてほっとしていると、「どうなってるんだ、これは?」と横に立つアモリーから問い詰められた。


「全てが丸く収まったってことだ、兄上」


 なんの説明もなしに協力していたアモリーは、当然なにも知らないのだ。


「どうやらそのようだが……。つまり、うちの妹たちはそろってハルバーヌ家の男どもにさらわれるってことじゃないか」

「いいだろ。どっちも将来有望だし、きっと幸せにしてくれるさ」


 テオの言葉に、アモリーは嘆息した。


「おまえが言うのなら、きっとそうなんだろうけどな」


「だろ? ソフィのことがあってどたばたしているうちに、クルトの誤解を解いていないことをすっかり忘れてたんだ。突然ソフィが結婚するなんて言い出したときには驚いたけど」


「面白がってないで早く本当のことを教えておけば、こんなことにはならなかったんだろうが」

「何事もすんなりいったらつまらないだろ? 人生楽しくないとな」


「おまえはいいかもしれないけどな、つきあわされるほうは大変なんだぞ。しかもおまえ、自分の妹たちと友人を混乱させて、かわいそうだとは思わないのか? そろそろ自重してくれよ」


 アモリーがため息をつきながら言うが、テオは笑みを浮かべて誤魔化す。


「でもさ、終わってみれば全て上手くいったって思うだろ? 見てみろよ」


 テオに促されたアモリーは、妹たちのほうを見た。そこには、まだ混乱の余韻が残っているものの、幸せそうに笑う妹たちの姿がある。


 その姿を見たアモリーの顔に笑みが浮かぶのを見て、テオも安堵する。

 テオだって、妹たちには幸せになってもらいたい。

 人を深く傷つけるようないたずらはちっとも楽しくないからだ。


 ソフィの怪我はテオにも予測できない事態だった。

 傷心のソフィの傷に塩を塗るようなことになる前に上手く真実を話して誰もが傷つかないように収めようと考えていたところに、ジャンが一騎打ちの話をもってきた。


 予想外の展開だったけれど、使えると思った。

 だからテオはそれに便乗して、片をつけることにしたのだ。


「――あっ!!」

「な、なんだよ?」


 アモリーが突然大きな声を上げた。驚いたテオは、詰まりながら問いかけた。


「そういえば、おまえに頼まれてたサリー湖畔に別邸を作るって話だけどな」

「ああ、どうだった? できそうか? 小ぢんまりとしたのでいいんだけど」


「土台は出来上がっている。俺はまたてっきりおまえの道楽に使うんだと思っていたが……」

「俺が行ってどうするんだ。サリー湖に映る満月を共に見た恋人たちは幸せになれる――って噂を、兄上も知ってるだろ?」

「ああ、知っている」


「だからあの別邸は、俺たちから可愛い妹たちへのプレゼントだ」


 その言葉に、アモリーは目をみはった。


「もしかしておまえ……いや、だって俺が頼まれたのは、一ヶ月近く前だったぞ。そんなに前からこうなることがわかってたっていうのか?」 


「結末はひとつしかないと思ってたさ。クルトがサラのことを好きなのはわかってたし、サラが必死で探している人物の容姿は俺の耳にも入っていたからな。それにソフィとジャンだって、そばで見ていれば互いのことを気にしているのは明白だった」


 全てはほぼ予想通り。

 だが、ソフィを傷つけた連中だけは許せない。


 連中は今獄中にある。

 彼らを裁く権利は、テオにはない。

 そして父は、仕事に私情を挟むような人間ではないはずだ。


 しかし彼らが反省も後悔もしないようであれば、そのときは自ら手を下すかもしれない、とテオは思っていた。


「俺にはおまえのことがさっぱりわからん。わかるのは、おまえには敵わんってことぐらいだ」


「なに言ってるんだ。俺みたいに悪知恵ばかり働いたって意味ないだろ。兄上みたいにしっかりと地に足をつけて、堅実に仕事をこなせる人こそすごいんだ。もっと自信をもてよ。俺は、兄上には一生敵わないと思ってる」


 アモリーは時期領主としての務めを立派に果たしている。

 地味な仕事でも、ひとつひとつ丁寧に、きちんとこなしていることをテオは知っていた。


 別邸の件はテオの借りだ。

 アモリーは気にするなと言ってくれるけれど、そういうわけにはいかない。


 ジャンは再び四人に目を向けた。

 サリー湖畔への遠出の計画は、四人への詫びの気持ちだ。


 もちろん、別邸を作った理由はそれだけではないのだけれど。

 使い道は、他にもある。


(例えばサリー湖のすぐそばにそびえるザラ山脈を挟んだ隣国の動きを探るためとかね)


 テオは心の中で呟いた。

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