村一番の美少女と村二番の美少女、イケメンの君ならどうする?
むかしむかし、でもそんなにむかしではない昔のことです
ある村に美少女が住んでいました
村一番の美少女です
この村にはもうひとり美少女がいました
村二番の美少女です
村二番の美少女はちっちゃな頃から村一番の美少女と比べられて悔しい思いをしていました
村一番になれない悔しさをずっとひきずっていたのです
村一番の美少女と村二番の美少女は14歳になりました
やはり村一番の美少女が一番で二番の美少女は二番のままです
村二番の美少女は勝負に出ました
そうです、処女を棄てたのです
非処女になった村二番の美少女は男子に大人気になりました
それまでも人気だったのですが圧倒的人気になったのです
イケメンたちがよってくるのを片っ端から食い漁りました
それから3年が経ちました
村二番の美少女は着々と男性経験を重ねていきました
だけど村一番の美少女は処女のままです
「あんた、まだ処女らしいね!だっさーい!!」
村二番の美少女にそう言われると村一番の美少女は悲しそうに涙を浮かべました
村一番の美少女には好きな男子がいました
村一番のイケメン少年です
だけど村一番のイケメン少年は女の子が苦手でした
そして村一番の美少女も男の子が苦手なのでうまくしゃべれません
お互いの気持ちはなんとなくわかっているのに、目が合うと照れてしまって話すことができなくなってしまうのです
さて、村二番の美少女が一番好きなのはこの村一番のイケメン少年だったのです
村二番の美少女は村一番のイケメン少年が童貞だと知っていました
そこである日少年に近づくと言いました
「ねぇ、ヒサシ。あたし、ヒサシのことずっと好きだったの。付き合おうよ。エッチもOkeyだよ?」
イケメン少年は硬い表情をさらにこわばらせて言いました
「ば、馬鹿なことを言うな!」
そうして真っ赤な顔で走って逃げてしまいました
イケメン少年はハッとしました
村二番の美少女がせっかく告白してくれたのに、なんていう断り方をしてしまったのだと思うと申し訳ない気持ちになりました
村二番の美少女が嫌いというわけではないのです
村二番の美少女の気持ちは嬉しいのだけれど、村一番の美少女が好きなのです
エッチはしてみたい、でも、だけど……
村一番のイケメン少年としても悩みましたが、まずは謝りに行こう、ちゃんとわけを話そう
そういうわけで村一番のイケメン少年は村二番の美少女のところへ戻ると好きな人がいることと、村二番の美少女が嫌いではないこと、エッチはしたいけど今は勉強が大事であることなどを説明して謝りました
村二番の美少女はとりあえず納得したようでした
2人は笑顔で手を振って別れました
イケメン少年がしばらく歩いていると横山くんが近づいてきました
「よう、さっきお前、エミリーとハナシてたよな?」
「ああ、エミリー、可愛いよな、いい子だと思うよ」
「あの子、サセコだろ?」
「違うよ!そんなウワサは全部デマだよ。じゃあな」
それだけの会話でした
次の日学校に行くと村二番の美少女が怒っています
なんでも昨日、番長の家にいたとき横山くんから電話がかかってきたそうです
番長は横山くんに村二番の美少女がいることをいいました
どうやら番長は村二番の美少女が家に遊びに来ていることを自慢したかったらしいのです
「ちょっとハナシをさせてやるよ」
横山くんとハナシしてやるように言われた村二番の美少女は電話を代わりました
「はーい、よこぴー久しぶりー!」
すると横山くんはこんなことを言い出しました
「あ、エミリー、昨日ヒサシと話ししてたよな?」
「あ、うん、道であったからさ」
「聞いたぞ、お前のこと」
「は!?なんて言ってたの?」
「エミリーはビッチでサセコだってよ」
「なんですって!?」
この話を聞かされた村一番のイケメンは驚きのあまり声も出ませんでした
「どういうこと!?」
それにしてもなんでしょうか
イキナリこの剣幕は?
村一番のイケメンを諦めきれない美少女は寂しさからつい八つ当たりをしてしまったのです
だけど村一番のイケメンとしても村二番の美少女のことは嫌いというわけではない
好きだと言ってくれたことは凄く嬉しかったのです
だけど自分を好きだと直後に、よりによって乱暴者の番長の家に遊びに行くとはどういうことだ!?
自分とは全然タイプの違う番長と二股をかけられているような、軽く見られているような、そのような気持ちになってしまったのです
口下手な村一番のイケメン少年は言葉が出てこなかった
ただ歯を食いしばって溜息をついた後、「俺は全てが嫌になったよ!」とわけのわからないことを言ってしまいました
「そんなことあたしに言ってもしょうがないじゃん!なによ!付き合ってるわけでもないのに!」
そう言い返す村二番の美少女から黙って視線をそらすと、村一番のイケメン少年は背中を向けて校舎裏を後にしました
しばらくして村一番の美少女を決めるコンテストが開催されました
公正で民主主義な投票の結果、村一番の美少女には、なんと、村二番の美少女が選ばれたのです
発表の瞬間、村二番の美少女に投票した男子達が大喝采をあげました
そうです、村二番の美少女は番長を初めとして、乱暴者たちとエッチをしまくって票集めをしていたのです
そして乱暴者たちは村人たちを呼び出して村二番の美少女に投票するようにキツく説得したのです
続いて投票が行われました
村一番キモい女子を決める投票でした
そこで選ばれたのは村一番の美少女でした
「処女はキモいんだよ!」
「処女なんて恥ずかしい!」
「死ね!ブス!」
口々に村人たちは村一番の美少女に罵声を浴びせました
村一番の美少女を憎む村二番の美少女と、村一番の美少女に振られた乱暴者達が、これまた村人たちを「説得」して回っていたのです
民主的に決まったことなので従わなければなりません
村一番の美少女から村一番のキモブスになってしまった美少女はうずくまってすすり泣きました
その姿を村人たちが笑いました
村一番のイケメン少年が駆けつけてきました
「サオリはキモくないよ」
「ヒサシくん」
その二人の様子を見た村二番の美少女は怒り狂いました
そして乱暴者の権力者達にもちかけました
村で一番キモい男子を決めるコンテストを開催したのです
一番きもい男子に選ばれたのはもちろんそうです
村一番のイケメン男子でした
「キモいんだよ!」
「カッコばっかりつけてんじゃねえよ!」
「童貞野郎!」
「包茎のくせに!」
村中の女子の視線を集めるイケメン男子をここぞとばかりに村人たちは罵倒し、イジりました
村一番のイケメン男子は民主的な投票で決まったことだから仕方ないと思いました
それから元村一番のイケメン男子と元村一番の美少女を見るたびに村人たちはキモい!だとかクサイ!だとか言ったり、学校の先生達も一緒になってつらくあたりました
ちょっとしたことでもクラスの皆の前で怒鳴りつけたりして村人たちの機嫌を取りました
元村一番のイケメン少年も美少女もお互い話すこともなく、目が合うと、以前は視線を絡ませあったりしていたのですが、それもなくなりました
元イケメン少年は美少女に迷惑がかかってはいけないと思ったし、元美少女も自分のせいでイケメン少年に迷惑をかけてしまったと思っていたからです
そうしてお互いを思いやるほどに2人は疎遠になっていきました
そうして数ヶ月が経ちました
元イケメン少年はクラスのキモい男子として誰にも口を利いてもらえません
その日は校内マラソン大会でした
元イケメン少年がヘトヘトになりながらもグラウンドに戻ってくると沿道の女子たちが「キモーイ!!」と罵声を浴びせました
その中で1人「頑張って!」と声をかける女子がいます
元1位の美少女です
元イケメン少年は驚いた顔をしましたが、ニッコリ笑うと全力スパートでごぼう抜き、惜しくも1位はなりませんでしたが堂々の準優勝です
表彰台から元イケメン少年は元美少女を探すと手を振りました
元美少女も手を振って飛び上がって祝福しました
閉会式が終わって皆が着替えるために教室へと向かいます
「おめでとう!」
元イケメン少年の元に駆けつけてきたのは村一番の美少女……つまり元二位の美少女でした
「すっごいかっこよかった!!」
「あ、ありがとう」
「ねえ、今日一緒に帰ろう?」
「い、いや、それは……」
そうやって元二位の美少女がまとわりつくので元一位の美少女は近づくことができませんでした
「話したいことがあるの!」
そうやって元イケメン少年の前に真剣な眼差しで立つ元二位の美少女
「わかった。話したいことはこっちにもある」
何の話をしているのかまでは元一位の美少女からはわかりません
元一位の美少女は涙を拭うと、そっと走り去りました
元イケメン少年と元二位の美少女は村外れの波止場で落ち合いました
「俺から話をさせてくれ」
元イケメン少年はそう言うと、元二位の美少女のプライドを傷つけたことを改めて謝りました
そして元二位の美少女のことをビッチだとかサセコなどと言ってはいないことを伝えました
今まで説明できずに申し訳なかったと謝りました
「じゃぁ、なんでヨコピーはあんなことを!?」
「それは俺にもわからない。エイミーと話せて舞い上がってしまったのだと思う。許してやってくれ」
このとおりだと頭を下げました
そしてサオリとは全く話をしていないこと、付き合っていないし、付き合うつもりもないことも話し、もう勘弁してやってほしいと頼みました
「俺は童貞のままで卒業するつもりだ。だから……」
自分のことは思う存分痛めつけて構わないからサオリは許してやってほしいと何度も頭を下げました
「それで君の方の話は?」
「あたしのほうの話?」
エイミーはただ元1位の美少女に元イケメン少年ヒサシを獲られるのが嫌で「話がある」などと言ってしまったのです
「話っていうのは……」
戸惑いながらもエイミーは自分がこんなにもヒサシを好きなことに気づきました
だけどヒサシが元1位の美少女サオリのことが大好きなこともつくづくよくわかりました
「そこまでサオリのことが好きなんだ?」
ヒサシは少し間を置いてからコクリと、しかし強く頷きました
「そっか……」
「おーい、エミリー!」
それは番長の声でした。番長とその仲間の乱暴者達が二人の後ろの茂みから現れたのです
「あんたたち立ち聞きしてたのね!」
「おっとっと、立ち聞きしてたのは俺達じゃないぜ。俺達は通りがかっただけだ」
「立ち聞きしてたのはこいつだよ!」
乱暴者の1人が茂みの奥から引っ張り出したのはサオリでした
「サオリ!」
「ご、ごめん、ヒサシくん、わたし……」
「お前らのことが気になってつけてきたんだぜ」
「このストーカー女!」
乱暴者達はサオリをドンと広場に突き押しました。
みんなサオリに振られた恨み、サオリがヒサシを好きなことが悔しかったのです
ヒサシとサオリが憎かったのです
「お前らがいるからいけねえんだよ!」
「格差は是正だあ!」
乱暴者達はサオリをヒサシにぶつけるように突き押しました。
「きゃっ!」
「やめないか!」
「なにすんだヒサシ、インテリ青瓢箪野郎が!なめやがって!」
乱暴者がヒサシを殴りつけました
番長がヒサシの足をかけて倒そうとしました
しかしヒサシは微動だにしません
日頃は簡単に地面に倒れ込むヒサシが動かないので番長、乱暴者達はめちゃくちゃに殴りつけました
「やめなさいよ、あんたたち!」
「エイミーは黙ってろ、エイミーだってこいつらのことボロカス悪口言ってるじゃないか!」
「そ、それは……」
「エイミーのためを思ってやってるんだよ!」
ヒサシはしかしサオリをかばったまま立ちはだかります
「不思議だ。ちっとも痛くない」
背中に守っているサオリから温かい力を感じます
「そうか、これが」
番長がチカラをいっぱいに込めて殴りつけてくるのをさっとかわすとヒサシの会心の一撃!
番長がもんどり打って倒れ込みます
ヒサシはコブシを握りしめました、チカラが体の奥底から不思議なくらい溢れてきます
その背中にサオリがそっと手を置きます
触れられた場所から熱くて優しい心地よさの、不思議なチカラが流れ込んできます
「これが処女力かーっ!!」
全くヒサシに歯が立たない番長、乱暴者達はある卑劣な手法を思い立ちました
なんと、あろうことかエイミーを人質に取ったのです
「おい、ヒサシ、今からエイミーを海の底に沈めてやる」
「ちょっと待て、エイミーは君の彼女だろう!」
「なにすんのヒデキ!離して!」
そうやって波止場の広場を引き摺って堤防へとつれていきます
「助けて!ヒサシ助けて!」
エイミーが叫びます
「ヒサシ、助けてあげて」
「わかった」
ヒサシが番長に飛びかかった隙をついて乱暴者達がサオリをつかみました
「きゃーっ!」
「なにをする!」
番長はエイミーをヒサシに投げつけるようにぶつけるとサオリを引きずり仲間たちとともに海へと引き摺っていきます
処女力の源を絶とうというのです
「やめて!ヒデキ、やめて!」
エイミーはそう叫ぶと自ら海へと身を投げました
「あっ、エイミー!」
「私が全部悪いの!私がいなくなればいいの!」
「ええい!こうなったら!」
番長はその勢いのままサオリを引きずって海へと投げ落としました
「きゃあああっ!」
「ざまあみたか!全部ヒサシがやったんだ!なぁお前ら!見てたよな!?」
仲間たちは頷きました
「ああ、全部ヒサシがやったことだ。警察でも裁判でもそう言ってやる!それが民主主義だ!」
海ではサオリとエイミーが溺れています
ヒサシは上着を脱ぎ捨てると敢然と海に飛び込みました
そしてサオリを助けると沿岸まで一気に泳ぎきりました
「助かったな」
「エイミーは?」
ヒサシは少し困った顔をして言いました
「知らない」
エイミーはそのまま行方不明になり、数日後に腐乱死体で見つかりました
少年たちは警察や裁判で全てヒサシがやったことだと言いましたが通用しませんでした
しかしサオリの証言がなかったら全てヒサシのせいにされていたかもしれません
ヒサシがサオリを助けてエイミーを助けなかったことをエイミーの親が逆恨みして訴えてきました
不平等だというのです
1%の富裕層が富の99%を所有するのはおかしいなどというのです
しかし処女と非処女なら処女を助けるのが人間として当たり前!ということでお咎めなしでした