魔人襲来
【このイラストで小説書いてみました企画作品】
ナナシの翼 第2話 《魔人襲来》
「ん……あれ、私いつの間に……? 」
夜中の3時……また微妙な時間に起きちゃった。
また暗い居間でテレビも着けたまま寝てたみたい。
あの襲撃から2週間が経った。父さんの件については全く音沙汰無し。実は5日前にまた襲撃があり、学校は暫くの間休校。
そこから私もほとんど家から出ていない、ご飯もあまり食べてないかな。
「父さん……」
居るはずの人が突然いなくなると心細い、時間の流れはいつも以上に遅く感じる。ソファーへ横たわり、置いてあるクッションに顔を埋めた。また涙が溢れてきた……泣き疲れて意識が落ちる、最近はこれの繰り返し。
暫く泣いていると携帯が鳴る。この音はメール……だけど誰からだろう、友達からかな?
「……ッ?!」
見て背筋が凍った。文字化けしているけど、内容は何とか解読できる。
【ヤ※ト※ツケタ。貴女ノ綺※ナ※※※、頂戴?】
「誰っ?! 何処にいるのっ?!」
私が何者かに狙われている、それは理解できた。したくないけどそれしか考えられなかった。
起き上がり周囲を見渡すが誰もいない。再度携帯を見たとき、画面からは手が出ていた、私の顔を掴もうと真っ直ぐ。肌は青白く、指先からは紅く鋭い爪が伸びた人の手が。
「キャッ?! 」
咄嗟に投げ捨てた為触れられずに済んだけど、心臓に悪すぎる。
鼓動がかなり早い、呼吸も荒くなり少し苦しい……。
「ハッ……ハッ……! い、一体何なの?! 」
携帯から伸びた手は何かを探すように動いている、よく見ると画面の前には紅い魔法陣のようなモノがあり、そこから手が出てきているみたい。周囲に目的のモノが無いことを理解したのか、グッタリとしていた。その後すぐに人差し指を天井に向けてクルリと1回転させる、すると紅い魔法陣が広がった。
徐々に手は伸びてゆく、肘が見えたあたりから頭部が見えてきた。
魔法陣から完全に姿を現すと瞳を開け、私を見つめてくる。
『ヤット、ン? ア、アアア、コホンッ。……あぁ、こう話すのね。
やっと見つけた、私の宝石。500年ぶりね、フフフ……』
現れたのは黒のタイトドレスを着た黒髪の女性。あの青白い肌、たぶん魔人だと思う。
人の心をかき乱すような種類の美しい顔立ち……琥珀色に輝く瞳にも妖艶さを感じる。
「だ、誰? なんで私?!」
『あら……貴女何も覚えていないの? じゃぁこの翼を見ても分らないかしら? 』
そう言うと彼女の背中から何か飛び出してくる。
私がよく見えていない事を悟ったのか指をパチンッと鳴らす。
近くにあった灯りが勝手に点くと、その正体が見えた。
所々赤黒く汚れたボロボロな白い翼……何故か私には見覚えがある。
「翼……ッ?! あ、頭が、いた……いっ」
突然襲い掛かる頭が割れそうな痛み……同時に記憶の断片が脳裏を駆け過ぎる。
白い翼の人々との生活。
時には鳥のように空を飛び、時には建物内で剣術の試合を行っていたり等……。
最後には夢で見ていたモノと同じ……無数の蝙蝠の羽が生えた青白い肌の人、魔人と戦う光景。
一瞬の隙を突かれ、抑えつけられたのは私。そして目の前には同じタイトドレスを着た彼女。
『全部はまだの様ね……良いわ、もう一度教えてあげる。
私はラディギーザ、ラディと呼んで頂戴。えっと今の貴方の名前は……【ナナシ】ね』
「なっ……名前を、グッ!? 」
色々と聞きたいがそれどころではない。ラディと名乗った魔人は笑みを浮かべながら静かに近づいていた。彼女は手を使わず私の身体を浮かび上がらせ、自身の正面へ大の字で固定。
嫌でも顔を合わせることになった。
『フフフ……ホント宝石みたい、血のように紅くて素敵』
彼女は私の頬にそっと触れる。指先は氷のように冷たい……振りほどこうにも体が動かない。私がもがく様子を楽しむように見ている。
『怖がらなくても大丈夫よ、綺麗に取ってあげるから……ね? 』
青白い左手がナナシの瞳へと伸びてゆく。
しかし触れる寸前、外から光で照らされた。
カーテンには人影が数人見えた、荒げる声も聞こえてくる。
ガシャーンッ!!
一振りの剣を持った男が窓を突き破ってきた。
空いた穴から眩い光が差し込んでくる。謎の拘束が解け、ナナシは床に落ちた。紺の軍服、背中には金属質な翼を着けた男が前に立っている。ラディは手で光を遮りながらその先を睨みつける。
自身の楽しみを邪魔をされ、凄まじい怒りが眉の辺りを這っていた。
『貴方達……! よくも―――』
「消えろ、魔人ッ! 」
瞬時に間合いを詰め一閃。
私には動きが全く見えなかった……そりゃそうか、私ただの学生だし。
いや、【ただの】は違う。段々思い出してきた。
「イージス各員! 彼女を!」
「「了解! 」」
ちょちょ、今度はすごい勢いで外に引っ張られるんだけど、これって本物の……機械で制御してない【魔法】!? 本で読んだけどホントにあったんだ、ちょっと感激。
『逃がさないッ! 』
うっわぁすごい剣幕、でもなんで私だったんだろ? 瞳が紅い人なんて他にもいそうだけどなぁ。
そう言えば頭痛も治まってるや、ちょっとボーっとするけど。
「お前の相手はこっちだ! 」
蹴破ってきた男の人。一人だけ顔出してるし、多分この部隊のリーダー。相手の見た目が女の人でも容赦なく斬りかかってるや。彼女も素手で防ぐ当たり本物の魔人と言うことを再確認させられた。
あ……血が出てる、特殊な武器なのかな?
『よくも私に傷を……! 』
彼女の身体から紫色の煙が出ている、今なら分かるけどあれは視覚化できるほど濃くなった魔力。
怒りで体内の魔力を制御できてないんだと思う。
段々頭がスッキリしてきた、私、天人の元兵士だったんだ。
当時の名前はまだわからないけど、ラディの事も少し思い出したよ。
「ラディギーザ……そうだ、私から翼を奪った魔人だ」
『……ラディと呼んでと言ったでしょう? はぁ、興が冷めたわ。また次の機会にしましょ』
フルネームで呼んだら溢れる魔力を収めた。
私の方をジッと見つめ、手を向けてくる。 なんか嫌な予感が……
『帰る前にプレゼントをあげるわ、ナナシ』
「いかんっ! 盾を展開して彼女を守るんだ!! 」
目の前に3人……籠手のような防具から縦長の盾を出現させ、壁を作る。
『無駄よ、退きなさい貴方達』
ほんの一瞬、また魔力が視えた気がした。
盾を構えた人たちはフラフラと左右に分かれる。
「なっ?! お前たち何をしている! 」
『貴方も黙りなさい、貴重な2人の時間を邪魔しないで』
「……ハイ…………」
ホントに黙り込んじゃった、目も虚ろになってる……。
相当危険な魔人から目を付けられたみたいだね、私。
『さぁ受け取って』
ラディの手から放たれた魔力の光は一瞬で私を包み込んだ。
最初と同様身体が浮き上がり、自由が利かなくなる。
今度は左目が熱い……何かが入ってきている?!
「あ……がぁっ!? 」
『それは印……似合ってるわ、ナナシ。
今日はこのまま帰ってあげる、またね』
そう告げると彼女の足元に紅い魔法陣が出現し沈んでゆく。
完全に姿が消えるとやっと身体が自由になった。
隊員の人達も我に返り、辺りを見回す。
「ハッ!! 私は一体何を……か、各員状況を!」
「た、隊長! 魔人が消えております! 」
「レーダーにも反応はありません! 」
「防衛対象は無事のようです! 」
ぶ、無事じゃないよ。最後に変な事されて左目が……。
えっと鏡は、たしか姿見置いて……あったあった。
「な、何これ。目に変な紋様が……」
私の瞳には変な紋様が描かれていた、ベースは逆三角。その中央には蝙蝠が羽を広げたような形で前に出ている。 たしかラディは印と言ってたよね?
「また……来るの、魔人が……嘘、でしょ?」
呼吸は荒くなり、次第に視界も歪んでくる。
限界を迎えた私は意識を失った。
目を覚ましたのは次の日。
でも知っている場所ではなかった、そこは一面真っ白な部屋。
床、壁、天井すべて白に統一され、家具は寝ていたパイプベット以外無い。
他にはトイレと洗面所……出口らしき扉が1つ。
「ここは……どこ? 」
いや、ホント何処なの?
※ちょっとした変更点のお知らせ
①第1話目のタイトル
・「日常崩壊 前編」→「日常崩壊」
②魔人の肌の色
・「黒色」→「青色」




