謎の女性
「もう朝かい? おはようさん」
謎の忘れ去られし時代からの発掘品と思われる物体から女性の声が聞こえ、俺達が驚いて固まっていると
「あれ? 真っ暗だ。まだ夜なのかな? じゃあこんばんはか。てか夜だったらもうちょっと寝ようかな。だけど何か変だな。髪の毛が上に垂れている。垂れている? 無重力? いや上下が逆さまなのか。ふむ。とりあえずここからでようかな。あれ? 人の気配がするな。まあ注意してれば大丈夫か。てことで周りにいる皆さん、危ないので少し下がっていてくれよ」
と話したかと思うといきなり魔力で創造られた無数の刃が生えだして謎の忘れ去られし時代からの発掘品と思われる物体がバラバラに崩れ落ちた。
そして見たこともないほど綺麗な白銀の髪に、左目に眼帯をしているとはいえ思わず引き込まれてしまいそうな紫の瞳、そして今まで見てきた誰よりもきめ細やかな白い肌、大きいというわけではなく慎ましく小さいが服の上からでもわかる形の良さに身体とのバランスの良い胸、まるでこの世の美をかき集めて組み立ててみましたと言われても信じられるような美しい女性がそこにいた。
そこで女性は周りを見渡しそこで俺の顔を見ると驚いた顔をし、俺の顔を凝視してきた。俺は俺でこの女性のことを見ていたのでそのまま自ずと見つめ合う。
「えーっと、俺はチヒロ・セキと言います。あなたは? あと俺の顔に何かついてます?」
「いやいや、ごめんよ。少し驚いてしまってね。それで私の名前だけどクリューソス・アイズクルアーンと言う者だ。それでセキ君の顔に何かついているわけではなくて、その瞳に縁があってね、ついつい凝視してしまったよ。」
そう言い、クリューソス・アイズクルアーンさんとやらは眼帯を外す。そうすると今まで眼帯で隠れていた左目から俺と同じ金色の瞳が出てきた。
俺達が驚いていると、クリューソス・アイズクルアーンさんは金色の瞳に魔力を込め、空を見てからそっと左目に眼帯を付け直した。
「悪いね。この瞳はもともと私のものではなく親友からの頂きものなんだ。だからうまく使いこなせていないのか視界を塞いでおかないと非常に疲れるんだよ」
「あーまあ確かにいろいろ見えすぎて疲れますもんね、この瞳は。ところでアイズクルアーンさんは「クリューソス」
「クリューソスでいいよ。そのかわり私もチヒロって呼んでいいかい?」
「わかりました。いいですよ。それではクリューソスさんはこんなところで忘れ去られし時代からの発掘品らしき物の中で何をしていたんですか?」
クリューソスさんに質問すると、顔にはてなマークを浮かべ、忘れ去られし時代からの発掘品だったと思われる残骸に目をやる。
「んー別に私の名前は呼び捨てでもかまわないよ、チヒロ。しかし忘れ去られし時代からの発掘品だっけ? 聞いたことない名称だねえ。それでこれはね、コールドスリープ装置だよ。大気中の魔力を吸収し中を無重力状態にして入っている人を低温状態に保ち続けることで老化することなく同じ状態を持続させる装置だね」
クリューソスさんの説明に俺達は唖然とする。そう、さっぱりわからない。
ふと隣を見るとユリアもわけがわからないよという顔をしていた。反対を見るとユキがとても驚いた顔をしていた。あれ? 今のでわかったの?
「コールド、スリープ装置ですか? 理論だけは聞いたことがありますが、実用化の目途すら立っていない技術のはずですわ」
「ふむ。なるほどなるほど。ここは私が起きていた時代より大分科学力が低い時代みたいだね」
うん。これはめんどくさそうなことになりそうだなあ。さっき瞳でちらっと空を見た感じだと星の位置が私の眠る前からあまり変わってなさそうだから場所はほとんど変わっていないと思うんだよねえ。なのに起きた場所が森って。どれだけ時間だ経ってるんだよ。あと私の屋敷は何処にいったんだよ。屋敷のあった痕跡すらないて。いやまあそんなことより当座のことを考えよう。このままチヒロ達に着いて行くとこの時代では失われたと思われる知識とかを根掘り葉掘り聞かれそうな気がするんだよねえ。チヒロが金色の瞳を持ってなかったら口封じにさくっと殺してから行方をくらましてこの時代の情報収集をするとかでいいんだけど、それは私の行動原理に反するからできないし、ここはもう諦めて大人しく着いて行くしかないかあ。知識について聞かれてもこういうのはあった、けど理論は知らないから再現は出来ない的な感じで誤魔化そう。よし、それでいこう。そしてこの間の思考を約二秒で終わらす私ってすげー。
「うーん、それじゃあこれからどうしようか? チヒロ達に着いて行ったらいいのかな?」
「そうですね。今から俺達の住んでいる街に向かいましょう。そこで俺達の上役の人に話を通してみます。まあ色々と話を聞かれると思うので答えてもらえたら。悪いようにはならないと思いますので。それと今後どうするかという話もそこでしてもらえたら大丈夫だと思います」
「わかったよ。それじゃあ向かうとしようか。チヒロ達の住んでいる街ってやつにさ」