瞳の力
魔物が消滅し魔石があるのを確認してからユキが労いの言葉をかけてくる。
「完全に消滅したようですわね。おねいちゃん、チヒロさん、お疲れ様でしたわ」
するとユリアがトテトテとユキに近づきながら
「ユキちゃんもお疲れ-! 最後の閃、すっごい威力だったね。びっくりしたよ」
「二人ともお疲れ様。うん、確かにあの閃は凄い威力だったね」
と魔物が消滅したことにより発生した魔石を拾い、チヒロも二人の元に向かう。
「二人ともありがとうございます。でもあれはいつも使用している閃に比べ溜めに時間がかかりますし、近距離でしか高威力になりませんの。それに相手の攻撃を避けながら溜めようとすると集中力が続かず難しいので戦闘しながらではなかなか使えませんの。今回は、チヒロさんに魔物を抑えてもらえたので溜める時間が稼げて何とか使えただけですわ」
ユキは謙遜しているが、溜めに時間がかかり近接限定とはいえあの威力は魅力的だ。俺の瞳の能力を使えば今回のように一体だけの魔物であれば攻撃を防ぐのは容易いのでチームとして行動する分には有効な攻撃手段だろう。
「それにしてもチヒロは相変わらず魔物に何もさせなかったねー。その瞳ってほんと便利なんだね」
便利ねえ…確かにこの金色の瞳の能力を使うと魔力を込める加減によるが視界に収まる範囲に限り、通常では知覚できない情報、例えば魔力や風が見えるようになり、異常に動体視力がよくなる。その為、魔力や力のかかり具合や風の動き、体重移動等の情報から相手の行動を先読みすることができるので戦闘では非常に有効ではある。ただ色々な情報を知覚してしまう為、情報過多になり結構しんどかったりするという問題点もあるが。
「まあ今回は魔物が一体だけだったからよかったけどね。璧の同時展開は二つが上限だから相手の数が増えると展開のタイミングがシビアになってしんどいだよね」
軽く雑談しつつ戦闘が終了したというのと迎えに来てほしい旨を伝える為に発煙筒に火をつける。
しばらくすると行きに使用した車がやってきたので三人で乗り込み、偵察隊の人と思われる死体や魔物の情報を報告しつつ街へ向かってもらう途中に、ふと視界に違和感を感じたので車を止めてもらう。
「どしたのチヒロ? 早く帰ろーよー」
「いや何かこのあたりに違和感を感じてね。少し見てみるよ」
車から降りて瞳に魔力を最大限込めて周りを見渡すと微量な魔力が地面に向かって流れている場所があったので車に積んである大型のスコップで掘ってみる。
あまりにも深そうなら報告だけして後は任せようかなと思っていたら予想よりも早くスコップの先が固い部分に触れる。
そこから手で土を除けると明らかに人工物と思われる物体が埋まっていた。
そのまま掘り起こそうかなと思ったが思いのほか横に広く下に深いので周りをスコップで堀ってみる。ちなみに俺は疲れたのでエネイル装束を装着し身体能力が向上しているユリアに掘るのを変わってもらった。チラチラとスカートが揺れて非常に眼福だった。そんなこんなでユリアに頑張ってもらい、土を掘り終わると2メートル程の大きさの物体が現れた。うん。なんだこれ?
「見たことない形をしていますわね。忘れ去られし時代からの発掘品ですの?」
「おそらくそうだろうね。ただ何に使う道具なのかはさっぱりだけどね」
しかし結構大きいけど車に積めるのかな? と思いつつ適当に触ったり持ち上げようとしてみたりすると、何かのスイッチを押してしまったようでピーという電子音の後、未だ土に埋まっている下の部分が開き、女性の声が聞こえてきた。
「もう朝かい? おはようさん」