2話 命のやり取り
戦闘シーンむずぃ。
4/25 修正しています。
内容は変えていません。
丘を出発して気が付いた事がある。
明らかに元の世界の頃よりも体が軽く感じるのだ。
それに、これだけの荷物を背負い、移動しているにも関わらずほとんど疲れていない。
運動は得意な方だったが、それも一般的なレベルの話でだ。
何より驚いたのが、スピードが桁違いに上がっている事だ。
ただ単に脚が速くなっただけでは無く、体のキレが尋常ではないのだ。
「どうやら神様が言っていた通り、全体的な能力の底上と相性で俊敏さが特に伸びたみたいやな。」
木々の間をかなりの速度で擦り抜けて行く。
「まるで、赤い〇星のようやな・・・・3倍のスピードはでてるやろ!」
何に対して3倍なのかわからないが、自分の身体能力が上がった事にテンションがおかしくなっているようだ。やはりアレな人なのだろう。
3時間程移動すると川が流れている開けた所に出た。
「とりあえず休憩するか。」
強化されてるといっても3時間ぶっ通しで移動したので普通に疲れる。
それでも、この3時間の移動で一般人が大体1日かかる距離を移動してきたのだ。元の体では考えられない速度である。
川の近くの岩に剣を立て掛けて腰を下ろし、昼飯?を食べることにした。
食料は保存食のようで、干し肉やクラッカーのようなものだけだったが、5日分と言う事もあり、結構量はあった。
香辛料の効いた塩気のある干し肉はそこそこ美味かったが、クラッカーのようなものはかなりパサついている。まあ、無いよりはマシって感じだった。
「少し物足りへんけど腹八分目っていうしな、何があるか分からんから抑えとかなあかんな。」
何気にフラグを立てた気がしないでもないが・・・・・
まあ、腹を満たし、少し落ち着いた所で地図を開き現在地を確認する。
出発した丘から見て村は北側にあり、東側に山脈があり、山脈は南北に続いている。中央と西側に森が広がっている。丘と村までの間には山脈から2本の川が流れており、1本目は現在いる地点で2本目は村の近い所を流れている。
村は森の入り口付近にあるので、東側の山脈を目印に北に向かえば迷う事はないはず。
ただ、地図は絵で書かれいるので、山脈の名前や地名、村の名前や規模が分からない。
もう5分の1ぐらいは進んでいるし、早ければ2日、ゆっくりしても3日で村までいけるやろうし、村に着いてから色々聞けばいいやろう。
そんな事を考えていると、ふと立て掛けた剣に目がいく。
改めて考えてみると、剣を一度も振っていない事に気がついた。
剣を手に取ってみる。
考えてみれば、武器として刃物を持ったのはこれが始めてである。そもそも平和な日本では武器を持ったことすらなかった。
一般的な日本人が日常的に使う刃物は、包丁やハサミなどだろう。それでも殺傷能力はあるが、元来殺す事が目的では無い物である。
しかし今持っているものは、 ”殺す”と言う事を目的として作られた物であり、今まで触れる事の無かった物である。
少し緊張するが剣を抜いてみる。
刃渡りは60cmくらいだろうか、刀のように反りは無くストレートの両刃。
刀のように切り裂くのでは無く、力に任せて叩き切る事を目的としたものだろう。
それでも刃の部分はよく砥がれており、綺麗に光っている。
鉄製であろうその剣を今の筋力なら片手でも使えるだろう。
けれど手に取った剣は不思議な重みを感じる。
「これで何かの・・・・誰かの命を奪う事になるんか・・・・。」
命を奪うという不安が腕にのしかかる。
自分の命や誰かの命を守るためには仕方が無いと思う。
(・・・だけど・・・・・・)
「俺にできるんやろうか・・・・。」
それでも襲われるのなら戦わなければならないし、生きたいのならば殺すしかない。この世界ではそれが当たり前の事だろう。
「覚悟を・・・・覚悟を決めるしかないか・・・・・・。」
不安を紛らわすように、手に持った剣をしばらく振るうのだった・・・。
・・・・ガサッ!
突然、後ろの草むらから何かが動く音が聞こえる。
ドクン!
心拍数が跳ね上がる。
振り返り、音のした方を向くとそこには・・・・
ウサギがいた。
「なんやウサギか、脅かすな・・・・・・・・・・・ってデカ!んで角!!!」
突然現れたウサギのような生物は普通のウサギの3倍はあり、頭に角が生えているのだ。
声に反応したウサギ?はこちらに気が付いたようだ。
異世界に来て初めて遭遇した動物?は、明らかに敵意をこちらに向けて唸っている。
ウサギ?の方を向き、握っていた剣を正面に構える。
ウサギ?との距離は5メートル程離れている。
(このまま逃げてくれへんかな・・・・)
そんな考えはどうやら甘いようで、ウサギ?は角をこちらに向け突っ込んできた。
図体に似合わずかなり速い。
「おっと!」
右に跳んで避ける。
どうやらスピードではかなりアドバンテージがあるようで軽くかわす事ができた。
勢い余ったウサギ?は岩に激突した。
振り向き、ウサギ?の方に視線を向ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ありえへんな。」
激突した岩がウサギの角によって一部が砕けてしまっていた。
(あかん!まともにもらったらさすがにやばい!とにかく避けな!)
初めての戦闘で、冷静さを欠き、完全に逃げ腰になってしまっている。
ウサギ?は振り返り、再度突っ込んでくる
それを避ける
突っ込んでくる
避ける
突っ込む
避ける
「はあ、はあ・・・・・。」
初めての戦闘で、体力も精神も削られていく
(あかん、このままじゃ殺られる!こっちからも仕掛けな!)
意を決して振り向き際のウサギ?に突っ込む
「ハアァァァァァ!!!死ねしならせウサ公!!!!!!」
自分を奮い立たせる為に叫び、ウサギ?を横薙ぎに斬りつける
ギィィィィンッ!!!!
渾身の一撃は、うさぎ?の角によって防がれてしまう
「クソッ!」
すぐさま飛びのき間合いをとる。
(あかん、冷静にならな!正面からは防がれる。横か後ろかを狙うようにせな!チャンスは・・・・角が正面を向く突っ込んでくる時や!)
両者が向き合い、同時に走り出す!
グシャリッ。
肉を突き刺す音が響く。
そして、剣先から血が滴る。
「グギャァァァァァァァァ・・・・・・・・。」
ウサギ?は最後の叫び声が響き、そして動かなくなった・・・・。
「はぁ、はぁ、・・・おっ、おわったんか・・・・・。」
剣を引き抜き、その場に座り込む。頬からは血が滲んでいる。
ウサギ?の側面に剣を刺そうとした為、突進してくるウサギ?の角をぎりぎりで避け、走ってきた勢いのまま剣を突き出した。
剣はウサギ?の首の横のあたりから胸まで貫通し、心臓を貫いた。
頬の傷は角をぎりぎり避けたので軽くかすったようだ。
「なんとか勝てたみたいやな・・・・。」
初めて小さな虫以外の生き物を殺したのに嫌悪感はあまり感じず、今はただ、初めての命のやり取りを生き抜いた充実感と安心感に包まれていた。
「案外、平気なものやねんな・・・・。」
しばらくその場にへたりこんでいたが、頬の傷が痛み出した。
どうやら興奮状態で痛みが抑えられていたらしく、落ち着いてきて痛み出したようだ。
「まずは、傷の治療やな。」
剣の血を払い、川で体や服に着いた血を洗い流し、袋の中から2つの小瓶を取り出す。
「って、どっちが回復薬やねん。」
落ち着いてきたのか、いつものアレがどんどん出始めた。
二つの小瓶の蓋を取ると、一方は液体で、一方はジェル状だった。
なんとなくジェル状の方が塗り易そうだったので少量手に取り傷に塗ってみる。
すると、徐々に痛みがなくなり、傷がふざがった。
「どうやら当たりみたいやな。」
傷が直り、気持ちも落ち着いたので、村へ向けて出発することにした。
いつまでもここにいるわけにもいかないので、初めての敵に手を合わせ、また歩き始めるのだった。
初の戦闘シーンでした。 かなり苦しんで書いてます・・・・。
ご意見、ご感想、批判、アイデア募集しています。
ちなみに次話は、ヒロインの一人目が登場する予定です。