9話 気分転換の旅
久しぶりの投稿になります。
カイルが地獄の3ヶ月を耐え抜き、盗賊団壊滅の依頼から1週間が経った。
カイルは、盗賊団を壊滅させて村に帰った後の数日は、人を殺した事と昔の事を思い出した事のダブルパンチで結構落ちこんでいた。
しかしながら、マリアやヨーコのフォローもあり、徐々に元気を取り戻していった。
そして、カイルは、3ヶ月の間の依頼と盗賊団壊滅によりバルスの承認によりサードクラスになった。
バルスのイジメとも言えるしごきで能力が上がり、実力的にはファースト並なのだが、まだまだ経験が足りない為に、バルスはサードに留めたようだ。
それでも冒険者になって3ヶ月ちょっとでサードになるの非常に早いペースである。
そんなカイルの現在の能力がこれである。
パワー 50 D
スピード 100 ☆
スタミナ 64 C
マジック 72 B
メンタル 51 D
風属性
鍛えられていなかった体が訓練によって鍛えられ、人を殺したと言う経験によりメンタルがかなり上がっている。
スピードはついに☆になった。能力に関しては100以上はすべて☆として表示されるため、150だろうが200だろうが、100☆となる。
まあ、☆持ちなだけで一般人に比べれば化け物なのだが…。
それにカイルが成長したのは能力だけでは無い。
数値では見えない部分、剣術、体術、魔術などの習得や依頼による経験で、冒険者としても成長したのだ。
そんなカイルにバルスがある提案をした。
それは、武闘大会への出場である。
3週間後にラストニア皇国で開かれる大会に出て、現在の自分の力がどれくらいなのか試してみないかと言う事のようだ。まあ、カイルの気分転換の意味合いも強いようだが。
ギルド長の推薦状があれば出場資格を貰えるようで、ヨーコはこの大会に出場が決定しているようだ。
初めは、渋っていたカイルであったが、
「優勝すれば、結構な賞金が出るぞ。上位入賞だけでもかなり額になるしな。」
その一言で落ちてしまい、出場する事にした。
その時の、バルスの不敵な笑みには気が付かないままに…
大会はラストニアとフリークスの国境に近い都市で開かれ、現在の村から馬車で約2週間の旅になる。
マリアさん達に見送られ、乗り合い馬車に乗って開催都市に向けて出発した。
都市までには1つの大きな街と1つの村を経由して行くことになる。
旅でて6日で初めの村に着き1泊した。
カイルは、初めての馬車の旅でかなり尻が痛いようだったが、ヨーコは慣れているのか平気そうだ。
コツを聞いたところ、
「あんたは踏ん張りすぎなんだよ。もっと力を抜いて馬車の揺れに合わせるんだよ。」
と言われたが、カイルには力んでしまう理由があった。
そうそれは、この1週間毎日ヨーコが馬車に合わせて揺れるのだ…。
つまり…ヨーコのパイ山脈が大地震を起こしているのだ。
そんなバインボイン状態なのだ!
カイルのジョニーが元気ハツラツ?してしまい、前屈みになってどうしても力が入り踏ん張ってしまうのだ。
乗り合い馬車なので、他のお客さんの何人かも前屈みになり、同じように尻を痛そうにしていた。
男ならほぼノーダメージではいられないであろう。
罪なパイ山脈である…。
そんなこんなで、男のロマンを感じる幸せやら痛いやらの馬車の旅も順調に進み、5日でクロッシークと言う大きな街まで来ている。
クロッシークから、開催都市までは4日ほどの距離である。
開催1日前に着けば良いので、2日ほどこの街でゆっくりし、2日前には到着する予定である。
クロッシークは貿易によって発展した街で、様々な物や多くの人が集まっている。
さらに武闘大会が近いので、クロッシークも大いに賑わい、露店なども多く出ている。
到着したのが夜だったので、宿を取りその日はすぐに休み、翌日に2人で露店を巡ることにした。
翌朝、軽く食事を済ました2人は市場に出かけた。
市場には朝から多くの人が行き来しており、多くの露店が出ている。
露店はそれこそ多種多様で、串焼きなどの食べ物を売っているものやら、武具や雑貨、お土産品、宝石や装飾品などなど様々である。
かなり本物か怪しい品もあるそうでヨーコからは、
「ちゃんとした店で買った方が賢いよ。」
と言われたカイルであるが、
「こう言う所にこそ、お宝があるんやで!もちろんノリと雰囲気も大切やしね。」
などと、祭などのハズレくじしかない当て物屋で、大枚叩く奴のような事をサラリと言うのであった。
そんなカイルであったが、一つの露店の前で足が止まる。
ローブを着て、フードで顔が隠れた店主の店で、アクセサリーなどを扱っているようだ。
カイルの目に止まったのは、古ぼけた指輪だった。
見た目は古ぼけてはいるが、輪の部分に文字が刻まれ、紅い宝石が埋め込まれている。
紅い宝石は澄んでいて綺麗であり、光を受け輝いていた。
(紅い石だし、ヨーコの髪色に似てるから似合いそうやな)
「すいません。これいくらですか?」
「そちらの品は金貨10枚になります。」
(だいたい10万円くらいか、高いか安いかわからんけど、なんとか手持ちで買えるな)
「じゃあこれ下さい。」
「そんなアッサリ決めていいのかい?」
「いいんだよ。俺が着ける訳じゃないしな。」
「じゃあ、どうするんだい?」
「もちろん、ヨーコにプレゼントするんだよ。日頃からお世話になってるしな。」
「えっ?あ、あたいにかい!でも、本当にいいのかい?あんたを世話してるのは、恩返しなんだよ?」
「そんなもん、とっくに返してもらってるよ。」
「でも…。」
「いいからいいから着けてみ。」
「そうかい?じゃあ、着けてみるよ。」
そう言って左手の薬指に指輪をはめるヨーコ。
「何故に薬指!嬉しいけど。」
「ん?何かおかしいのかい?合う指がこの指なんだけど…。」
「そっか~、こっちにはそんな習慣ないんか~。」
「何なんだい、習慣って?」
「俺の住んでた所では、結婚する時、左手の薬指に指輪をするねん。」
「け、け、け、結婚って!あたい達にはまだ早いよ!」
テンパって爆弾発言なヨーコ。
「そっか~、まだなんや。じゃあ望みありやな。」
そう言いながらニヤつくカイルに
「もう!知らないよ!」
ドゴッ!
照れ隠しでヨーコの一撃がカイルの背中に入り軽く吹っ飛ぶ。
「ってぇ。ヨーコさん、一般人なら背骨イッてるって。」
「あんたがいけないだよ!自業自得だよ!ったく素直にお礼も言えないじゃないか…」
「今なんて?」
「何でもないよ!このバカイル!」
「???」
そんなこんななラブな展開をゴチった後、ヨーコは嬉しそうに指輪を眺めている。
この衝動買いの指輪が後にヨーコの命を救う事になるのだが…。
そんなこんなで楽しい露店巡りを終え、二人は夕食を食べる為に食堂件酒場のような店に来ている。
「さすがに大会前だけあって混んでるね。」
「そうやな〜、とりあえずカウンターしか空いてな。」
店内は多くの客で溢れ、しかたなく二人はカウンターの席に腰掛けた。
「いらっしゃい!食事か?それとも酒か?」
「食事を頼みます。メニューはお任せでお願いします。」
「はいよ!ちょっと待ってな。」
マスターらしいおっさんはかなり厳ついので出てくる料理が心配だが、以外にもしっかりしたものが出された。味も結構いけるので、二人共満足していたのだが…
「そこの女!なかなかイケてるじゃねいか。そんな餓鬼ほっといて俺と飲めや!」
と、いかにもなナンパ野郎が声をかけてきたのだった。
「ったく、どこにでもこんな奴はいるんだねぇ。」
「そうやな、とりあえず無視やな」
面倒くさいのか、二人共無視を決め込む事にしたのだが、
「オイ!このセカンドランク、爆炎のクロノ・ライナス様を無視するとはいい度胸だな!」
いきなりの説明口調をゴチりながら登場したこの男が、後にカイルと武闘大会で激闘を演じる事になるのだった。
作者のテツワンです。
書こう書こうと思いながら、なかなか書けませんでした。
これからもボチボチですが、よろしくです。
待ってくれていた人がいたなら、すみません。