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SF作品

地に平和を 壮大なやりなおし

掲載日:2026/10/23


私は観察者、46億年程前、此の星、ホモ・サピエンスと自称し文明を築いた生物が地球と名付けた惑星が誕生した時に配置された。


46億年の間に幾多の生物が現れては消えていき興亡盛衰が繰り返される。


それはホモ・サピエンスを自称していた生物も同じ。


260万年前氷河期が始まりチベット高原があの高さまで形成される約10万年程の間に、チベット高原に出現した新種の細菌によって年々高さを増すチベット高原を住処としていた猿人、原人、類人猿の全ての群れが絶滅した。


その細菌は最後の群れを絶滅させたあとに氷河に閉じ込められ、長い眠りにつく。


その細菌がホモ・サピエンスを自称する生物の愚行によって始まった地球温暖化によって、氷河から溶け出て目覚めた。


細菌が溶け出た氷河の水は、チベット高原の氷河を水源とする全ての河川に流れ込み下流に流れる。


そして細菌はまたその凶暴性を剥き出しにして、下流に住み暮らし氷河の水の恵みを受けていた全ての国々、中国、 モンゴル、カザフスタン、ロシア、タジキスタン、アフガニスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、パキスタン、インド、ネパール 、ブータン、バングラデシュ、 ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムのホモ・サピエンスに襲い掛かった。


その後はあらゆる交通機関によって全世界に細菌は広がり、ホモ・サピエンスを自称していた絶滅する直前には100億体を超えていた生物は、瞬く間に絶滅する。


ホモ・サピエンスの中には他の種族との接触を嫌い、南米、ニューギニア、アフリカの奥地で孤立して暮らしていた者たちもいたが、完全な孤立では無かった為に彼らも他のホモ・サピエンスたちより多少遅れはしたが、結局絶滅。


此れでホモ・サピエンスを自称していた生物は滅亡したと思ったのだが生き残りがいた。


その地域を支配していたインドに立ち入り禁止に指定され、自分たちも他者との接触を拒んでいたセンチネル島の住民たちが。


100億体を超えていたホモ・サピエンスは、孤立していたお陰で生き残ったセンチネル島民の100人から200人殆どの数に激減した。


センチネル島民は外の世界のホモ・サピエンスか絶滅した事に気がつかずにそれまでと同じ生活を続けていたが、ホモ・サピエンスの殆どがいなくなってもその愚行の産物である地球温暖化は止まらず海面上昇は続く。


そしてセンチネル島民を除くホモ・サピエンスが絶滅してから100年程経った頃、センチネル島の大部分は海に沈み残っている部分も波に洗われていた。


生きて行く為にセンチネル島民は島を出る。


数人の男女や家族単位で数十隻のカヌーに分乗した彼らは、東に向けて漕ぎ出す。 


島の1番高い木の上から見えていた、センチネル島も属していたアンダマン諸島の本島を目指してだろう。


だが本島もまた海に沈みかけていた。


本島に上陸するのを諦め彼らはそのまま東に向けて漕ぎ続ける。


アンダマン諸島付近まではまとまっていた船団だったが、そこから東を目指した辺りから海流の流れや夜間の航行などによりバラけて行く。


船団がバラけた結果、センチネル島民のカヌーの群れは広範囲に広がり、海面上昇によりマレー半島やスマトラ島の分断された島々に上陸する。


センチネル島民……否、もうセンチネル島の住民では無くなったから便宜上絶滅したホモ・サピエンスは前ホモ・サピエンスと名付け、センチネル島民は後ホモ・サピエンスと名付けさせてもらおう。


上陸した島々でも細菌によって死んだ前ホモ・サピエンスや類人猿の骨が転がっていたが、感染する相手を無くした為に細菌もまた絶滅していた。


名前をつけられる前に感染する相手と共に絶滅した細菌だけで無く、前ホモ・サピエンスが絶滅する前に存在していた全てのヒト特異的病原体もまた同じように絶滅している。


ヒト特異的病原体は絶滅していたが人獣共通感染症の病原菌は生き残っていた。


広い海域の島々に数人から十数人のグループで分散し、狩猟民族として狩りをしながら移動を続けていたお陰で、1つか2つのグループが全滅しても他のグループに感染が拡大する事は無い。


世代を重ねる間に人獣共通感染症や新たに出現した細菌に感染しても、偶々免疫力が強かったり発病するほどの細菌に接触しなかったりした事で、生き残れた者が出て来る。


その生き残れた者が元は同じ集団であっても違うグループの者と出会い、何十回何百回と婚姻を繰り返して行く。


センチネル島で暮らしてた頃は少人数での婚姻が続き、集団でのセンチネル島民は多様性が無い集団になっていたが、数千年以上の間生き残った者同士での婚姻が続いた事で、幾つものグループの中で病原菌に対応できる遺伝子を持つ者たちが増えて行った。


そしてそれは集団での多様性が無かった後ホモ・サピエンスの集団に、遺伝子の多様性をもたらして行く。


島を出てから15000年経った頃には、後ホモ・サピエンスが生息してる地域はマレー半島やスマトラ島の分断された海域の島々だけで無く、中国南部の広い密林地帯にまで広がっていた。


総人口も100から200人程しかいなかったのが、20000人から100000人程に増えている。


後ホモ・サピエンスが故郷の島から出て50000年程経つと、前ホモ・サピエンスの愚行の産物であった地球温暖化がようやく収束し冷え始めた。


海が後退し広い陸地が現れる。


後ホモ・サピエンスの幾つもの100人から200人程の集団が、次々と東西南北に向けて移動して行く。


狩猟を行いながら移動していった後ホモ・サピエンスは全世界に広がり、総人口も200万人から1000万人の間まで増える。


前ホモ・サピエンスと違い麦や米などの突然変異に出会わなかった彼ら後ホモ・サピエンスは、定住する事無く獲物を求めて移動を続けていた。


狩猟民族として生き続けている彼ら後ホモ・サピエンスは、前ホモ・サピエンスが愚行に走る事になった文明が開化しなかったお陰で、前ホモ・サピエンスよりも長く繁栄が続いている。


私は観察者として、これからも彼ら後ホモ・サピエンスの観察を続けるとしよう。







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― 新着の感想 ―
滅亡して終わり、ではなく、その先にセンチネル島民が蔓延っていって……という発想がとても面白いと思いました。 確かにこれだけ移動手段が発達した現代においてはウイルスが広まるのもすぐですよね。 それこそコ…
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