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天使として…  作者: 白夜
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1-8 平原の激戦

うまく書けていたらいいんですが……

-エルダSide-



 平原の真ん中に私は立っている。目の前には何十万人という数の反政府軍がいる。


「隊長は誰ですか?」


 私は魔法で大きくした声で尋ねる。


 すると軍隊の最後尾あたりから同じように声が返ってきた。


「私が隊長のメウガ・バルバラスだ。子供がここで何をしている?」


 私は軍隊全体を睨む。


「あなた達はこの先の街を襲うつもりですか?」


 私としては無駄に人の命は奪いたくない。


「その通りだ。我々には拠点が必要なのだ」


「街の人はどうするのですか?」


 私はいつでも動けるように構える。


「街の住人には悪いが現在の政府に加担する者を許すつもりはない」


「関係ない人達を巻き込むのですか!」


「今までもそうしてきた」


「ふざけるな!」


 私が叫ぶと同時に右手にシャルが現れる。


『マスター…人は殺したくないですか?』


「………」


 確かに私は迷ってる。街の守りたい、でも天使として…管理者としては誰一人として殺したくはない。


『マスター…神様が言ってましたよね。マスターは管理者でありその世界の住人なんですよ。

 何かを守るために何かを犠牲にしなければならない時もあります…だから』


 私はシャルをゆっくり胸に抱く。シャルに一粒の雫が落ちた。


『泣かないでください。マスター…仕方のないことです』


「わかってる…覚悟はできてる」


 この間軍隊はなぜか一歩も動かなかった。


「私はもう迷わない…」


 髪がゆっくりと紫に染まりだした。


「もう泣かない」


 開いた瞳は血のように赤い。


「全力で」


 開いた口からは牙が見える。


「守るべきものを守る!」


 ゆっくりと自分に聞かせるように唱える。浮かぶのは夢で見た自分


『アンチモード、発動』


 黒い翼が現れ、私は飛んだ。










-リリィSide-


 私は走った。少しでも早く愛しい人を救うために。


 先程街への連絡は済んだ。今は街の住人を避難させているはずだ。


 でも私は彼女のそばにいたい。


「…まだ私、返事言ってない!」


 彼女が言ったことを思い出す。


『私と一緒に生きてくれない?この世界が終わる…その時まで…』


 伝えなきゃ、私の思いを!


 だから…少しでも早く彼女のもとへ…










-エルダSide-



 私は空中で魔法を避けながら魔法を唱える。


『大気を廻る風達よ 我が呼び声に応え 敵を滅せよ--サイクロン!!』


 私の目の前に巨大な竜巻が発生する。近くにいる人間は竜巻が起こす鎌鼬でバラバラになるだろう。


「まだ終わらないわよ!『昇華』!!」


 私が新しく魔法に複雑な呪文を追加する。


『わずかな塵も残さず虚無へと消え去れ--テンペスト!』

 呪文の言葉に導かれるように竜巻が分裂し辺り一面の空気を排除する。


「弾けろ!」


 私が叫ぶのと同時に竜巻が作り出した真空の空間が弾け飛び、その衝撃は鋭い刃となって辺りを切り刻む。


 今のでおそらく先兵は全滅だ。


「シャル、行くわよ!!」


『了解です!』


 シャルを顔の横で突きの状態に構える。


「幻影剣-朧月」


 夕日を背にシャルを突き出す。するとシャルの分身がいくつも現れる。


「降り注げ!幻影剣-流星!」


 一斉に放たれたシャルの分身はまるで隕石のように地面にクレーターを作った。


「まだまだ!」


 シャルを振りかぶるように構える。


「シャル!限定解除!」


『了解!』


 シャルが金色に輝く。そこから魔力が溢れてくる。


『「閃光一閃!黄龍槍!!」』


 振り下ろしたシャルから黄金の龍が現れ軍隊の半分を飲み込み大爆発した。










-メウガSide-


「凄まじいな…」


 長年軍人として戦場を見てきたがこのような光景は初めてだった。


 竜巻を起こすあの魔法は風属性最上級魔法だ。更にその次に出たあの魔法は『テンペスト』…失われた古代魔法だ。


 それをあの14歳程の少女が使っている。それだけはない。剣の幻を作り出しそれを雨のように降らせた。あのような魔法は見たことがない。


ドゴオオオン!!


 爆音と共にまばゆい光に一瞬辺りが見えなくなった。


「報告です!新たに敵が再び詳細不明な魔法を発動!我が軍の半数がやられました!」


「…ふむ」


 まさか少女一人に我が軍が壊滅状態にされるとはな。


「魔術師達は一カ所に集め協力して魔法を放て!剣士は相手を包囲して隙を狙え!見た目に惑わされるな!」


「「了解!」」


 おそらく我々は勝てないだろう。しかし退くつもりはない。それが我等の生き様なのだから。










-エルダSide-



「はぁ…はぁ…まさか…あの技を見せても怯まないなんて」


 あれだけの威力の技を見せたら多少は士気を落とせると思っていたけど……


『まさか全然怯まないとは…』


 大技を使ったせいで魔力が足りない。私は無限に魔力があると最初に言ったが実は弱点は存在する。

 確かに魔力が底をつくことはない。しかしそれは周囲の空間から無限に魔力を得られということで、この体に蓄えられる魔力は決まっている。

 それでも最上級魔術師の軽く3倍は蓄えられるが…とにかく、今私にはあまり魔力が残っていないため回復するまであまり魔法は使えない。


 私はシャルを構えると敵の中心に飛び込んだ。


「はあ!」

 着地と同時に目の前の兵士の首を飛ばす。返り血で白のワンピースに赤黒い染みができる。


『マスター!避けてください!』


「………!」


 25メートル先に魔術師が固まって魔法を詠唱している。


 私は反射的に左に跳んだ。


 その瞬間巨大な炎の槍が飛んできて爆発した


「…うあっ!」


 爆風で吹き飛ばされた私は地面を数回転げて仰向けに倒れた。


「……うっ」


 背中を強く地面にぶつけたためにうまく体が動かない。


「うおおおお」


 すると一人の兵士が私の腹目掛けて剣を突き刺した。


ドスッ


「~~~!!」


 私は声にならない叫びをあげながもその兵士を蹴り飛ばした。


「…うっ…げほっ」


 口から大量の血が流れる。すぐに傷を再生させて再び前方を睨む。


 左手に一丁の銃を創造の力で作り出す。真っ白な銃身の長いリボルバータイプの銃だ。これにはあらかじめ魔力が込められた球をセットしてある。


 私はさっきの魔術師の集団に向かって引き金を引く。するとまるで雷のような音と共に紫電が走る。すると着弾地点に空から雷が落ちた。

 魔術師は全員黒焦げになっていた。


「はぁ…はぁ…」


 まだ半分くらいしか魔力が溜まってない。


私は呼吸を整えると再び走り出した。













-SideOut-






 あれから何時間たったのか…


 辺りは暗闇に包まれていた。


 少女は一人の男と向かい合っていた。


「……ふむ」


 男は顔をしかめる


「まさか、お前のような娘に我が軍が全滅とはな…」


「あなたは何故残っていたのですか?逃げようと思えば逃げられたでしょう?」


 少女…エルダは男に問い掛ける。エルダは全身が返り血赤黒く染まっている。それでも傷は全て回復し、真っ赤な瞳には今だにゆるぎない決意が見えるようだった。


「ははは、部下を全てなくしてまで逃げたところで何が出来ようか」


「………」


 目の前の男、メウガは敗北が決定的なこの戦場で今だに威厳をなくしていない様子に見えた。

「一つ問う…お前は何のために戦う?」


 鋭い男の視線を真っ正面から受けてエルダは答える


「私の大切なものを守るため…」


 男は微かに笑うと武器である剣を構えた。


「お前の決意は確かなものだ…それに私は全力で答えよう」


「………」


 お互いに武器を持ったまま動かない。


 二人の間に飛んできてきた落ち葉が突然弾けた瞬間、二人は地面を蹴った。


「はあああ!」


「やあああ!」


 二つの武器がぶつかり合う。満月を背に戦う二人はまるで剣舞を舞っているようだった。


 エルダは光の光弾を3つメウガに飛ばす。メウガはそれを剣で弾き飛ばした。


 エルダは一歩下がると詠唱を開始する。


『汝きらめく……』


「させんぞ!」


 メウガは一瞬で距離を縮めると剣を横に振り抜く。


「……っ!」


 エルダは一歩下がって回避しようとするが遅かった。


「--斬!」


 エルダの体に剣が触れる瞬間、幻のように彼女は消えた。


「何!?」


 そしてメウガの全身から血が吹き出した。


「幻影剣-陽炎」


 エルダはメウガの後ろに立っていた。


「…ぐっ、見事だ」


 その言葉を最後に反政府軍隊長はその場に倒れた。


「……終わった」


 エルダは満月を見上げてその場に立ち尽くしていた。










 エルダは満月をただ眺ていた。


 いつまでそうしていたのかわからない。すると不意に背後に気配を感じたので振り返った。


「…リリィ」


 口が自然と動いた。そこにいたのは自分の愛した愛しい人


「………」


 リリィは何も言わずにエルダを見つめていた。普通なら恐怖を抱くような惨劇の跡よりも目の前に立つ少女に目を奪われた。


 満月を背に漆黒の翼を広げ紫の長い髪、真っ赤な瞳、全身血だらけだがそれさえ一部として取り込んでしまったような彼女をみてリリィはただ“美しい”そして“愛しい”と感じた。


 リリィはゆっくり近づくとゆっくりと、そして優しくエルダを抱きしめた。


 エルダの翼が真っ白に変わり、瞳と髪も元に戻り、そしてリリィに抱きしめられたままエルダはゆっくりと意識を手放した。


「…エルダ……お疲れ様」


 リリィは安らかな寝顔を見せるエルダにそう呟いた。


 月が二人を照らしていた。

白夜「ふう、疲れた~」


エルダ「あなたまだテストが残ってるのに勉強しなくていいの?」


白「大丈夫だよ、ちゃんと勉強してるよ」


エ「本当に~?」


白「ホ、ホントダヨ?」


エ「(……大丈夫なのかな)」


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