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天使として…  作者: 白夜
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◆回想・絶望の果てに


更新遅れてすいませんでした!


‐イリナSide‐



 神器…それは神、または天使のみが作ることのできる強い力を持った武器、または道具の事だ。


 私達が今回受けた依頼は神器を不法に持ち、研究材料としているとある研究所の制圧、そして研究員の逮捕である。


「う~ん…見張りは二人か…」


 私達は現在研究所の近くの丘の上から様子を伺っている。


「特別な武器を持っているわけでもなさそうですし…あっさり入れそうですね」


 私の隣に屈んでいるオーズの言葉に私は頷く。私達にかかればただの一般人は敵ではない。


「じゃあ早速「まちなさい」…シオリ?」


 立ち上がろうとしていた私をシオリが止めた。


「見張りは二人じゃない…五人いる」


「五人?」


 私の目には確かに二人しか姿が見えない。残りの三人は隠れているのだろうか?


「私がかたずけるから待ってて…」


 シオリはそう言うと大きく跳躍、二人の見張りの目の前に着地すると光の魔術を使い見張りの目を眩ませた。


 それと同時にシオリは刀を抜くと峰打ちで二人を気絶させる。そして振り向きながらさらに三回刀を振った。


 刀を鞘に戻し、私達に手招きするのが見えたので私達はシオリの所に駆け寄った。


「…ほら、そこ…少し歪んで見えない?」


 シオリの指差した場所は陽炎のように地面が少し歪んで見えた。


「何これ?」


「たぶん神器を使って姿を隠してるのよ。そこの二人と違ってちゃんとした武装もしてるし…油断してるところを狙うつもりだったみたいね」


「つまり姿を隠してたってこと?」


「そういうこと。私には効かないから大丈夫だけどね」


 天使であるシオリには幻術等が効かない、そのおかげで研究所への潜入は楽だった。


 しかし、研究員達が私達に気づくと神器を使って抵抗してきたので研究所の制圧には時間がかかった。


「はぁ…やっと終わった」


 研究員全てを気絶させたのを確認すると私はため息をついた。


「お疲れ様…大丈夫?」


 シオリが心配そうに話し掛けてきたねで私は笑顔を作って頷いておいた。


「じゃあ…神器を回収して帰るわよ?」


「了解………っ!」


 歩きだそうとした私は右足に痛みを感じて思わず屈み込んだ。


「イリナ、その足…」


 シオリが見る右足の足首あたりは血で赤く染まっていた。


 研究員達の攻撃を避けている時にかすったのだ。普通ならすぐ治るのだが神器であっただけになかなか傷が塞がらない。


「大丈夫、そのうち治るよ」


「…そう」


 シオリは心配そうにここで待つように言ったが私は平気だと言って先に進んだ……しかし、私はこのことを後で後悔する事になる。






「後はこの中に保管されている神器を回収すれば任務達成だね」


 私とシオリはオーズとフィーレに研究員の見張りを任せて神器の保管されている部屋の前に来ていた。


「さぁ、さっさと回収して帰りましょう!」


 そして私達は扉を開けて中に入った。そこには30個ほどの神器が保管されていた。指輪の形をしているもの、剣の形をしているもの、様々である。


「よくこんなに集めたよね。神器自体珍しいのに…」


「そうね…さぁ、早く運びましょ」


 シオリが近くにある神器を回収している横で私も指輪の形をした神器を袋に詰める。


「……ん?」


 ふと、私の視界に不思議な神器があった。腕輪の形をした神器なのだが色が黒い。


 神器の色は決まっていないがたいてい黄色や白、銀といった明るい色をしている。しかし、そこにあった神器は黒一色だった。



…ゾクリ



「……っ!?」


 突然寒気を感じて私は思わず後退りをした。


 黒い神器からまるで呪いのように気持ち悪い気配が漂っている。私の本能が危険だと警報を鳴らしている。


「(逃げなきゃ!“あれ”は危険だ!)」


 私がシオリを呼ぼうとした瞬間


 腕輪が空中に浮かび上がった。



「…なっ!?」


 そう、ひとりでに浮かび上がったのだ。


「イリナ!?」


 腕輪の異常な気配に気づきシオリが駆け寄ってきた。


「シオリ…あ、あれ何?」


「………」


 隣にいるシオリに聞いてみるがシオリは顔をしかめると首を横に振った。シオリにもわからないらしい。


 すると、腕輪から黒い炎が噴き出して空中に集まると黒い塊になる。腕輪は炎を吐き出し終わると床に落ちた。


「(何?あの黒い炎の塊…怖い)」


 空中にある黒い炎を見ていると体が震えるほどの恐怖を感じる。


「イリナ、逃げるよ?」


「う、うん」


 私達が距離をとろうと後ろに下がろうとした時、黒い炎が突然こちらに向かって弾丸のように飛んできた。


 私が回避しようとした時、怪我をした足が痛み動きが止まってしまった。


「危ない!」


 シオリが私を突き飛ばし、黒い炎が彼女の胸を貫いた。


「ぅあああぁぁぁ!!」


 シオリは口から血を吐きながらその場に倒れた。


「シオリ!!」


 黒い炎の玉はゆらゆらと揺れると私に再び向かってきた。


「…っ!この!」


 私は詠唱破棄で水の魔術を放つ。しかし黒い炎に当たるとすぐに蒸発して消えてしまった。


「…くっ!」


 私はありったけの魔力を込めた結界を張る。“ドガッ”という音と同時に黒炎が結界にぶつかる。


「えっ!?」


 しかし、私は驚愕した。黒炎が結界に込めた魔力を吸収しはじめたのだ。同時に私自信からも魔力がなくなっていく。


「(…回復する量より吸われる量の方が多い!)」


 天使の回復量を上回る速度で魔力が吸われていく。このままではまずいと思った瞬間、


「後は任せて!」


 私の後ろからシオリが飛び出した。両手に膨大な魔力が集まっている。


「やあああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 シオリは両手の魔力を全て黒炎にぶつける。するとその魔力も吸い取りはじめる。


「シオリ!ダメ!魔力が減るだけだよ!」


「大丈夫、見てなさい!」


 シオリは更に魔力を重ねる。すると黒炎が急に苦しむかのように暴れだした。


「やっぱり!」


「シオリ、何をしたの?」


「普通は魔力吸い取られるから魔術は使わない方がいいと思うけど…もしかしたら逆に与え続けたらどうなるかと思って…」


 そこで私は気づいた。いくら魔力を吸い取るといっても限界というものがある。もし限界を越える量を吸い取ったらどうなるか…答えは


「弾けなさい!」


 シオリの声と同時に黒炎は爆発するように吹き飛んだ。


 しばらく爆発した辺りを見つめ、安全だとわかると私はその場に座り込んだ。


「はぁ…よかった」


 私が安心して思わず声を出すとシオリが肩に手を置いて顔を覗き込んだ。


「…大丈夫?」


 こうやって私の心配をしてくれるシオリの気遣いが私はとても嬉しかった。


「うん、私は大丈夫。シオリは?」


「私もだいじょ………ぅあっ!?」


 急にシオリが苦しそうに胸を押さえて倒れた。私は突然の出来事に一瞬思考が停止したがすぐ我に帰った。


「シオリ!?どうしたの!?」


「う…あ……っ!」


 シオリは苦しそうに顔を上げると私を見た。


「イリナ…」


 私はシオリの体に触れて直ぐに原因を探った。すると何故かシオリの魔力がみるみる減っていくのがわかった。


「なんで!?あの黒いのは倒したのに!!」

 私が混乱しているとシオリが私の手を握った。


「イリナ…たぶん私は…もうだめかもしれない」


 私は言われた言葉の意味がわからなかった。


「な、何言ってるの…冗談はやめてよシオリ!」


 しかしシオリの目は真剣そのものであり私は思わず俯いた。そして気がついた。シオリの髪が先の方から黒く染まりだしていた。


「…シオリ?」


「たぶん最初に攻撃された時…心臓をやられたんだと思う」


 そう言ってシオリは私の手を自分の胸に移動させた。


 そこから彼女の鼓動は感じなかった


「…さっきから心臓だけ治らないの。魔力は生命活動にも使われる…私は不死だから死にはしないけど、魔力が切れたら…たぶん意識を保てない。魔力が戻るまでずっと…」


 意識を保てない…つまりずっと彼女は眠ったままになることになる。


「やだ…嫌だよシオリ!一人にしないで!」


「…大丈夫、イリナは一人じゃないでしょ?オーズもフィーレもいる…」


「でも…でも私は………っ!」


 私の言葉をシオリは唇に指を当てて止めた。


「大丈夫…私は………て…る……から……」


 その言葉を言い終わると同時に私の唇から彼女の手が離れ…それ以来、シオリは目を覚まさなかった。





 どのくらいたったのか…私が気がついた時、そこは近くの街の宿屋のベッドの上だった。


「(全部…夢だったの?)」


 しかし、その考えは打ち砕かれる。ふと隣のベッドを見るとそこにいたのはいつもの銀髪ではなく黒髪でただ眠り続ける最愛の人だった。


 頭の中が真っ白になる。認めない…認めたくない…もうシオリが起きないなんて…


 今名前を呼べばいつものように起きるのではないかと思えるほど自然な寝顔…


 私はその日、ずっと彼女のそばから離れなかった。私達を運んだのはオーズとフィーレだった。二人が帰り、静かになった部屋で私はひたすらシオリを起こす方法を探して本を読み漁った。


 そして本ばかりを読んで三年がたった頃、ふと違和感に気がついた。身長が伸びていたのだ。


 まさか、と思いナイフで指の先を少し切ってみた。その傷は治らず、私は魔力と翼以外の天使としての力を失っていたことに気がついた。


つまり老いもあれば死ぬことだってある。


…時間がない






 それから更に三年、私はついに永久機関について書かれていた本を見つけた。そこには様々な種族の魔力の“結晶”を集め、それを永久機関として魔力を供給する技術が書かれていた。


 それから私は毎日世界中を飛び回った。全ての種族の魔力の結晶を集めるために…魔力が集まる量は心臓が一番多い。だから私は毎日集め続けた。


 時には油断して返り討ちにあい大怪我をしたこともあったが諦めなかった。時には禁忌である闇の魔術を使ってでも集めた。


 そして更に四年。私は25歳になりシオリが眠りについてから十年がたっていた。


 丸いパズルのような形をした永久機関に空いているピースはあと一つ。



 もうすぐだから待っていて…シオリ




 最後の一つは天使の魔力、それは世界に戦いを挑むようなものだ。




 それでもいい…彼女のためなら、私は世界だって相手にしよう―――




 次回から戦闘に入ります。


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