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天使として…  作者: 白夜
36/49

3-2 産業都市ミラルトス


 いよいよ面白くなってきました!



※誤字訂正しました。


 エルダ達が依頼を受けてから二日後、エルダ、リリィ、朔夜は産業都市ミラルトスに来ていた。


「ここが…」


「産業都市ミラルトスかぁ…」


 エルダとリリィは街のあまりの大きさに驚いていた。


 産業都市というだけあって機械技術が発達しており、多くの店がひしめきあっている。


「ここは産業都市だから人口も多いし必然的に大きくなるのよ」


 朔夜が前を歩きエルダとリリィが後ろに続く。


「朔夜はこの街に来たことがあるの?」


「うん、少し前にね。このナイフを見つけたのもここの武器屋だよ」


 そのまま私達は街の宿屋に向かった。






―エルダSide―


 宿屋に入った私達は宿屋の主に話をして部屋の番号を聞いた。


「624号室…ここだね」


 私が部屋の扉をノックすると中から『どうぞ』と聞こえた。


「失礼するわ」


 私が部屋に入ると窓辺の椅子に座って外を眺めている少女がいた。ゆっくりとこちらを振り返る少女は一言で言うなら可愛らしかった。長い銀髪に金色の瞳。白いゴスロリ服、頭には白いカチューシャ。思わず私達は見とれてしまった。


「はじめまして、エルダさん、リリィさん、朔夜さん」


 少女は椅子から立ち上がると私達に頭を下げる。


「あ、はじめまして」


 私達も慌てて挨拶をする。


「どうぞ座ってください」


 私達は少女の言う通り向かい合う形で椅子に座る。


 不思議な少女だった。見た目は10歳ほどの少女だが纏っている雰囲気が妙に大人びていた。まるで私のように見た目と精神年齢が合わないかのように…


「わざわざこんな所に来てくださりありがとうございます」


 少女はニッコリ微笑む。その笑顔があまりに綺麗なので私は再び見とれてしまった。


「それでは自己紹介しましょうか…」


 少女は真っ直ぐ真剣な顔で私達を見つめると名前を口にした。


「私はシオリ、お願いします。イリナを、私の家族を…止めてください!」


 少女…シオリはそう言って頭を下げた。








―SideOut―




 とある部屋に一人の女性がいた。


「シオリ…」


 黒髪黒目の女性、イリナは水晶に入った少女を見つめる。黒髪のロングヘアーの十四歳ほどの少女は祈るように腕を組み、水晶の中で眠りについていた。


 イリナは近くの机に乗っている丸い球体を見つめる。まるでパズルのようにいくつものかけらが組み合わさり、一つの球体をかたどっている。しかし中心のかけらだけはまだはまっていなかった。


「もう少し…もう少しよ。待っててね」


 イリナはゆっくりと部屋を出て行った。








―エルダSide―


「家族…?」


 私の言葉にシオリはゆっくりと頷いた。


「私の家族…血はつながってませんが私とイリナは姉妹のように毎日楽しく暮らしていました。しかし、ある事件が起こってから彼女は変わりました」


 シオリは俯きながら肩を震わせる。


「イリナはあることをするために世界中の種族を狩り、その心臓を集めたんです」


「…なっ!!」


 私は思わず声を出すほど驚いた。つまりイリナという女性は全ての種族の生き物を一匹、または一人を殺して回ったことになる。


「…なぜ心臓を集めるの?」


 私の隣に座っている朔夜が質問をすると、シオリは顔をあげた。


「…生物は生まれながらに魔力を持ちます。その魔力は体のどこに蓄えられるかわかりますか?」


 私は答えがわかり、自分の胸の中心をおさえる。


「…心臓?」


 シオリは頷く。


「正解です。イリナは全ての種族の心臓を集めてとあるものを作ろうとしています」


「…とあるもの?」


 リリィの言葉にシオリはゆっくり息を吸うと


「生命の創造…彼女は死んでしまったある人物を生き返らせようとしているんです」







―SideOut―



 宿を出た三人をシオリはまどから眺める。


「(彼女ならきっと…)」


 シオリは祈るように両手を胸の前で組む。するとシオリの背中から一瞬だけ純白の翼が現れ、次の瞬間


 そこに彼女の姿はなく、白い羽が一つ床に落ちているだけだった。






 エルダ達は街の外れにある古い工場跡に来ていた。


「ここにイリナがいるはずなんだけど…」


 しかし工場は使われなくなってからだいぶたっており、ぼろぼろになっていた。


「どこかに隠し通路でもあるのかしら?」


 朔夜はロッカーや本棚をどかしてみる。エルダとリリィも同じように隅々まで探してまわる。


「仕方ないわね、敵に気づかれるかもしれないけど魔力で探すわ」


 そう言うとエルダは工場跡全体に魔力を流す。


「見つけた!そこの壁、隠し通路があるわ!」


 朔夜が壁を切り刻むと地下に行く階段が現れる。


「よし、行くわよ……」


「ほう、これはこれは…わざわざそちらから出向いてもらえるとはな」


「…っ!?」


 三人が振り返ると空間が歪み中からオーズが現れた。


「しかし、些か邪魔な者が二人ほどいるな…悪いがこの先はエルダとやら一人で進んでもらいたいのだが?」


 エルダが咄嗟に構えるが朔夜が片手が制した。


「エルダ、先に行ってて。ここは私が何とかするから」


「朔夜、でも…」


「大丈夫よ、あの時の仕返しもしたいし」


 それでも前に出ようとするエルダをリリィが止める。


「行こう、エルダ」


「リリィ…」


「朔夜は大丈夫。朔夜の強さは私がよく知ってる…今は先を急ぎましょ?」


 リリィの言葉にエルダは頷き階段を降りていく。朔夜はそれを確認した後、オーズに向き直る。


「ほう、あの傷で生きていたとはな」


 オーズは腕を組んで朔夜を見る。


「生憎、私は人間じゃないのよ」


 朔夜はそう言うとナイフを逆手に構える。


「成る程、少々派手な戦いになりそうだな」


 オーズの言葉と同時に急に周りの温度が下がり始める。そしてオーズの右手に氷の剣が現れる。


「我は主イリナを守る氷の守護者、オーズ。主のためにいざ参る!」


 二人は同時に走り出し、真正直からぶつかりあった。










 階段を降りるエルダとリリィは突然広い空間に出た。


「地下にこんな空間があったなんて…」


 そこは半径100mはある広場のような場所だった。


「エルダ、あれ!」


 広場の隅に更に下に降りる階段があった。


「行くわよ、リリィ」


「うん……っ!危ない!!」


 リリィは咄嗟にエルダの手を掴み自分の後ろに引っ張る。するとエルダがいた場所に突然地面から鋭い木の枝が現れた。


「ありがとう、リリィ」


「うん、もう少し遅かったら串刺しだったね」


 すると、空間が歪み中から肩まである緑の髪を揺らしながら一人の女性が現れた。


「…あたな達をこのまま行かせるのは危険」


 その女性が無表情にそう言うと周りに木の枝や蔓が伸び始める。


「…だから、気絶させてから連れていく」


 リリィがエルダを庇うように構えると炎が舞い上がる。


「エルダ、先に行ってて。ここは私が抑える」


「だめよリリィ!」


 エルダがリリィの肩を掴むがリリィは前を向いたまま動かない。


「大丈夫、エルダは私が守るよ。私だってやればできるんだから」


「でも…」


 そこでリリィは振り返ると微笑んでエルダ手を握る。


「私を信じて、エルダ」


 エルダはリリィの緑の瞳に強い決意の色が浮かんでいるのを感じて無言で頷いた。


 そして階段へと走り出したエルダに大量の蔓が向かうがリリィが作り出す炎の壁に阻まれる。


「あなたの相手は私だよ!」


「……」


 リリィは両手に炎を集めると、いつでも発射できる態勢にする。


「私には守りたい人がいる。彼女を傷つけるなら私は容赦しない!」


 リリィの言葉に緑髪の女性の顔がわずかに微笑みに変わる。


「…私は木の守護者、フィーレ。主を守るため、お前を倒す」


 そして大量の蔓と炎の塊がぶつかり合った。







 エルダはひたすら階段を下に降りていた。


「(ここ、結界がはってある…でもどんなものかわからない。オリジナルなのかな…?)」


 そしてついに最下層につくと古いドアがあったのでゆっくりとそれを開く。


「…いらっしゃい、エルダさん」


 部屋の中はそこそこ広い空間で、部屋の中央に黒髪黒目の20代半ばの女性が立っていた。


「貴女がイリナさん?」


「…そうよ」


 イリナはエルダを見ながら僅かに顔を曇らせる。


「私の名前を誰に聞いたの?…それに、何故この場所がわかったのかしら?」


「シオリに聞きました。貴女を止めてほしいと」


「…っ!?」


 イリナが驚いた顔をするのでエルダは僅かに首をかしげる。


「…有り得ない」


「…え?」


 イリナの呟きにエルダは思わず声を出してしまった。


「だって、シオリは……10年前に死んでいるもの」


「!?」


 イリナの言葉にエルダは驚愕した。







 高台から銀髪の少女が金色の瞳を細め、悲しそうに工場跡を見下ろしていた。


「…イリナ」


 彼女はそう呟くと、まるで始めからそこにいなかったようにその姿を消した。



 次回は回想になります。



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