3-1指定依頼
最近投稿が遅くなりがちですが頑張ります!
朔夜とリリィの戦いが終わり謎の襲撃者が来た日から三日がたっていた。そしてエルダは朝日の眩しさに目を覚ました。
「…ん、朝かぁ」
上半身を起こそうとして両腕が動かないことに気がついたエルダが目を向けると右腕にリリィが、左腕に朔夜がしがみついていた。
「…はぁ」
エルダは溜息をはいてどうやってこの二人を引き離そうか考えていると朔夜が突然エルダを引っ張ったので再びベッドに仰向けで寝る態勢になる。
「う~ん…エルダ」
何やら幸せそうに寝言を言う朔夜が可愛いくて思わず笑みをこぼすエルダだったが次の瞬間にはその感情は一変した。
「う~ん…エルダ…本当に……いいの?…じゃあ…いただきま~す」
カプッ
「……え?」
朔夜がエルダの首筋に噛み付いたのだ。そのままエルダの血を吸い始める。
「…さ、朔夜?…あ…ま、待って…」
以前友達から神経が集まる部分は噛まれると気持ちがいいらしいと聞いたことがある…と頭の中で思い出したが正直ここまでとは思ってなかったらしい。
「あ…ふ……ふぁ…」
なんとか朔夜をどかそうとするが両腕を抑えられているので抵抗できない。結局、しばらくの間そのまま吸血され続けたままでいると朔夜が目を覚ました。
「ん~…あれ?おはようエルダ」
まだ眠いのか目を擦っている朔夜はなかなか可愛い。だがその口元から真っ赤な血が滴り落ちている。なんともシュールな光景である。
「はぁ…はぁ…やっと起きたのね」
エルダからしてみれば朝っぱらから疲れてしまったので何とも言えない気持ちになっていた。
「あれ?何だか甘い血の味がする…それに何だか体が軽いし…なんでだろ?」
「………」
甘いという単語を聞いたエルダは若干顔を赤くしたがすぐに朝食の準備を始める。ちなみに朔夜の体が軽いのは天使であるエルダの血を吸ったからだ。
「あ、私も手伝うよ」
朔夜もエルダの隣に立って料理の手伝いをする。
数分後には朝食を作り上げてリリィを起こす。
「あれ?…私エルダと幸せな家庭を築いたはずなんだけど…」
寝ぼけているリリィにデコピンをするエルダ。これは以前からなのでエルダも特に注意はしない。もはや諦めているのだ。
「そういえば、今日から朔夜も学校に通うのよね?」
朝食を食べながらエルダが朔夜に顔を向ける。
「ん?ああ、そうよ。今日から私もエルダ達と同じ学園の生徒だね」
嬉しそうに話す朔夜を見てエルダも微笑む。
「エルダと私のクラスに入れたらいいね」
リリィがパンにかぶりつきながら笑う。
「こらリリィ、喋るか食べるかどちらかにしなさいよ…」
エルダの注意を聞いて恥ずかしそうに顔を赤らめるリリィを見て朔夜は思わず笑ってしまった。
それから食器を洗い洗濯物を干すと三人は空を飛びながら学園を目指す。朔夜も蝙蝠のような羽を出して飛んでいる。
「へぇ~、朔夜は『真祖』の吸血鬼なんだ~」
「うん、だから日光も平気だし血を吸わなくてもいいの」
「…でもあなた今朝寝ぼけて私の首筋に噛み付いて血を吸ってたわよ?」
「ああ、だから体が軽いんだね。なんでかな~って思ってたのよ」
三人で談笑しながら飛んでいると学園の建物が見えてきた。
「よし、じゃあ降りましょう?」
三人は地上に降りると校門をくぐり生徒昇降口から中に入る。ちなみにこの時三人はほぼ全ての生徒の注目をあびていた。
「さてと…」
エルダとリリィは職員室に行く朔夜と別れて自分達の教室に入っていた。
「………」
エルダが机の中に手を入れると中からは大量の封筒が出てきた。溜息をつきながら封筒を確認していくエルダ。封筒はシンプルなものから綺麗なものまで様々だった。ここまで言えばわかるだろうがラブレターである。しかもエルダは男女両方から人気がある。
「あ、この人昨日も入れてたなぁ。この人は初めてか…」
エルダはもらったラブレターを全てチェックしている。なぜかというとたまにラブレターに混ざってファンレターや連絡の手紙が混ざっているからだ。
「…『応援してます』かぁ、なんだか照れるなぁ…『結婚してください』?いきなり話が飛びすぎでしょ…」
こんな感じで最近は朝から忙しい日々が続いているが別に悪い気はしないエルダであった。
「おはよう、これはまた大量ね…」
エルダが手紙を読んでいるとシャーリーがやってきた。
「まぁね、さすがに私も疲れてきたわ…シャーリー手伝ってよ~」
「頑張ってね~」
「酷い!せめて理由くらい言ってから離れてよ~!」
しばらくして朝のHRが始まり担任がやってくる。
「今日は転校生が来ている。皆仲良くするんだぞ」
こうして朔夜がエルダ達のクラスにやってきた。しかし朔夜はもはや勉強などしなくても十分な知識は身につけている。それでも学校に通うのには理由が二つある。
一つは単純に楽しそうだから。もう一つはオーズの襲撃を警戒してなるべく離れないようにしているのだ。今のところはまだ何もしてきていないがいつ再び襲ってくるかわからないため警戒は崩さない。
そして放課後。エルダ達はギルドの前にいた。最近依頼をこなしていないため生活費を稼ごうという考えたのだ。
「さて、ちょうどいい依頼はないかなぁ」
リリィがやる気に満ちた顔で中に入っていたのでエルダと朔夜も後に続く。
「こんにちは」
ギルドに入りカウンターの受付をしている女性に話し掛ける。
「あ、お久しぶりですね!」
受付の女性とは何度も依頼をこなすうちに仲良くなっていた。
「依頼を受けられますか?」
「うん、お願いします」
「それではしばらくお待ちください」
お互いに笑顔で話を進める。彼女が依頼の確認をしている間、朔夜はギルドの中を隅々まで眺めていた。
「朔夜、どうしたの?」
朔夜がずっとキョロキョロしているのでエルダが尋ねる。
「うん、ここのギルドはなかなかいい所だな~って。大体のギルドって結構喧嘩があってたりするんだけどね」
「そうだね、この町のギルドで問題になるようなことは起こってないね」
そんなかんじでしばらく待っていると先程の女性が戻ってきた。
「お待たせしました。エルダ様に指定依頼がありますよ?」
「私に?」
指定依頼とは依頼を受ける人を依頼主が指名している場合のことをいう。
「依頼主はどんな人?」
「それが…10歳くらいの少女でした」
「少女?」
「はい、エルダ様のような長い銀髪の少女でした」
エルダは依頼用紙を覗きこむ
ランク
・A
依頼内容
・とある人物の行っている研究の阻止。
報酬
・50万G(Gはギルのこと、1G=1円と同じ)
場所
・産業都市ミラルトスの宿屋にて詳しく説明。
指定人数
・なし
任意指定
・エルダ・シャールイン
依頼の確認を終えたエルダは考えるように腕を組む。Aランクの依頼を10歳の少女が頼むのはおかしいと思ったからだ。
「産業都市ミラルトスかぁ…たしかここから南にある周りを山に囲まれた街だったよね?」
「ええ、産業都市というだけあってとても大きな街よ」
後ろの二人の声を聞きながらエルダは何やら一騒動ありそうな予感を感じていた。