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天使として…  作者: 白夜
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2-11朔夜の正体


 講義が始まり、部活も始まり…疲れがたまります。



 朔夜を貫く剣を見た瞬間、


「朔夜!!」


 エルダは咄嗟にシャルを取り出して朔夜の背後の人影に切りかかった。リリィはまだ何が起きたのかわからないらしくて、呆然としている。


「………」


 朔夜を刺した青い髪の男は剣を引き抜くとすぐにバックステップで距離をとる。


「あなたは誰!?何で朔夜を!?」


 青髪の男は目を細めてエルダを見ている。そしておもむろに口をひらいた。


「…我が名はオーズ。主の命によりお前を探していた」


 エルダはさらにオーズを睨む。


「なら…なら何で朔夜を刺した!狙いは私なんでしょ!?」


 オーズは無表情のままエルダを見る。


「いくら俺でもお前相手ではやはり不利なのでな。人質をとろうとしたのだがその女からとてつもない気配がした。だから先に始末したのだ」


 エルダはシャルを握る手に力を込める。


「やれやれ、お前とは戦わないと言っているだろう」


 オーズはそう言うとリリィの方へと移動する。


「…しまった!!」


 リリィはオーズを挟んで道の反対側にいる。しかも状況をのみこめずに呆然としているため構えてもいない。人質にされてしまえば間違いなく手が出せなくなる。


「(だめ!間に合わない!)」


 エルダがそう思った時にはすでにオーズの腕がリリィに向かって伸びていた。


 しかし…


「《アイシクル》」


 突然巨大な氷塊が飛んできてオーズを直撃した。


「…ぐあ!」


 そのままオーズは吹き飛ばされて地面で三回ほどバウンドした後ようやく止まった。


「…まったく、帰りが遅いから様子を見に来たのですが…これは一体何事ですの?」


 エルダが声がした方へ振り向くと、そこには


「…フィアナ?」


 薄い水色の服に学園のローブを纏ったフィアナが立っていた。


「フィアナ!?あなたどうして…」


 エルダの言葉にフィアナは小さく溜息をつくとエルダを指差し息を吸い込みそれを吐き出すかのように喋りだした。


「あなた達が心配だからに決まっているでしょう!?私やシャーリーがどれだけ心配したかわかりますか!?しかもなかなか帰ってこないから段々落ち着かなくなってわざわざ様子を見に来たら…このような事になっていた、というわけですわ」


 エルダが呆気にとられている間にフィアナは荒くなった息を整えてオーズの方へ視線を向ける。


「あの方が誰かは存じ上げませんが…敵であると判断してよろしかったですね?」


 フィアナの言葉に我に返ったエルダは頷く。


「ふむ、なかなか効いたぞ」


 そう言いながらオーズはゆっくりと立ち上がった。エルダとフィアナが構えるとオーズは目を閉じて溜息をはいた。


「…今回はこちらが不利のようだ。また会おう」


 そう言ってオーズは林の中へと消えていった。


「…退いたようですわ」

 エルダとフィアナは構えを解くと朔夜に駆け寄る。朔夜の周りには血の海が広がっていた。


「…心臓をやられてるわ」


 エルダの呟きを聞いたフィアナは祈るように手を胸の前で組む。するとリリィが背後に立つ気配かしたので振り返ると、リリィは涙を流していた。


「また…新しい家族が増えると…思ったのに…」


 俯くリリィをエルダは優しく抱きしめ、フィアナがそんな二人を静かに見守っていると


「…あ~もう、酷い目にあったわ」


 三人が驚いて振り返ると、そこには口元の血を拭い、胸の傷を抑えながら立ち上がる朔夜の姿があった。


「…え?」


「………」


「……嘘」


 三人が信じられないという顔で立っていると朔夜は服に着いた土をはらう。


「あの青髪…今度あったら許さないんだから。まさか殺されるとは思わなかったなぁ」


 朔夜は何事もなかったかのように平然としていた。服にはまだ血の跡があるが胸の傷はもうなかった。


「さ、朔夜…あなたまさか…」


 朔夜は気まずそうに苦笑いをすると


「あはは…そう、私吸血鬼なんだ」


 エルダは溜息をはき、リリィは朔夜が生きていたことに安心し、フィアナは唖然としていた。


「まぁ、なんにせよこれからよろしくね♪」


 朔夜の笑顔にもはやどうでもいいか。と、考えることを放棄したエルダであった。


「…あ」


 すると朔夜が胸を抑えてうずくまった。それを見たリリィが慌てて駆け寄る。


「朔夜!どうしたの?まさか、まだ完全に治ってないの!?」


「………」


 朔夜が顔をあげると瞳がとろんとしている。リリィが首を傾げると朔夜が突然リリィに抱き着いた。


「え?朔夜?どうし……」


「いただきま~す♪」


カプッ


「…あ」


 朔夜はそのままリリィの首筋に噛み付き血を飲み始めた。


「あれ?…こんな展開前にもなかったっけ?」


 この時、エルダが気まずそうに視線を反らしていたのは言うまでもない。


「…ごちそうさま。リリィの血は美味しいね♪」


 前回と同じことを言われて赤面するリリィ、エルダは確かに、と呟きながら何度も頷く。


 ちなみに家に帰った後、エルダも朔夜から味見という理由で血を吸われたのだが、これはまた別の話である。



 こうして、朔夜を新たな仲間として新しい日常が始まるのだった。




 朔夜のモデルはメルブラのアルクェイドと両儀式だったりします。


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