2-9 対決前夜
今回は短いです。
朔夜が帰った後、エルダ達はエルダの家に集まり会議を開いていた。
「それで?エルダは朔夜とどんな関係なの?」
一番最初に口を開いたのはシャーリーだった。
「彼女は…前世の私の幼なじみよ」
「…前世だと?」
前世という単語にルイスが反応した。
「ええ…私は一度死んで、前世の記憶を持ったままこの世界に来たの」
「それでは、あの方が言っていた“蒼真”とは…」
「ええ、フィアナの考えてる通り。私の前世の名前よ」
エルダの言葉に一人を除いて全員が納得したような顔をする。
「…リリィ?」
納得していない一人…リリィは拗ねたような顔をしながら机に突っ伏していた。
「…朔夜が私の恋人だったのが嫌だった?」
リリィの肩がピクリと反応する。
「ねえ、リリィ…朔夜が恋人だったのは前世の話よ。今は関係ないわ」
リリィは少し顔を上げて上目遣いでエルダを見る。エルダはリリィの頭を撫でながら微笑む。
「今はリリィが私の恋人だから…取られないように頑張ってね」
リリィは暫く目を閉じると深呼吸して再び目を開く。そこには強い決意のがあるのがわかる。
「うん…頑張るよ」
リリィの言葉にエルダは笑顔を返す。
「…だから」
「…?」
「エルダ、キスして」
リリィの言葉に一瞬ポカンとしたエルダだったがすぐに顔を真っ赤にした。
「な、ななな何で!?」
「私が頑張るために!エルダがキスしてくれたら私頑張る!」
エルダは他の皆を見てさらに顔を真っ赤にしたがリリィの眼差しから逃げられないことを悟り仕方なく諦めることにした。
「ち、ちょっとだけよ?」
「うん!」
エルダはリリィに唇を重ねる。そして離そうとした瞬間、リリィがエルダの後頭部を掴んだ。
「!!?」
リリィはエルダを離さないようにしっかりと抱き着きそのまま舌を入れてきた。
「…ん…くちゅ…あ…ぴちゃ…」
しばらくそのままキスをし続けてやっと解放されたエルダは足に力が入らずにその場にへなへなと座りこんだ。
「はぁ…はぁ…リリィ、いきなり何を…」
「ふふ…ごちそうさま」
エルダは顔を真っ赤にしながら顔を背けた。
「…あ、あの」
エルダが声の方へ顔を向けると他の四人が顔を赤くしながら、しかし目を逸らさずにエルダとリリィを見ていた。
「……はぅ////」
皆に見られていたことがわかり、エルダは恥ずかしさのあまりそのまま意識を手放した。
真っ暗な空間で黒髪の女性は水晶を眺めていた。
「やはり私が直接出向かなければ始まりませんか…」
そう言うと彼女は立ち上がり何もない空間に手をかざす。すると魔法陣が二つ現れるてそれぞれの中から一人ずつ人影が現れた。
「久しいな、主よ」
片方の影が彼女に話しかける。
「ええ、そうね。久しぶり、オーズ」
オーズと呼ばれた男は青いショートヘアーで同じく青い瞳をしていた。
「それで?何故我々を呼んだのだ?」
オーズの隣にいた緑の髪と瞳をした女性が不機嫌そうに話す。
「おい、フィーレ!主になんてことを言うのだ!」
オーズの言葉を黒髪の女性は手で制した。
「私はもうあなた達の主ではないわ。今日は一人の人間として頼みがあるの」
その言葉にオーズとフィーレは微かに眉をしかめる。
「主、まさか…」
オーズの言葉に彼女は頷く。
「ええ、あの子を…生き返らせる方法がわかったの」
そう言うと彼女は奥の部屋を見つめる。
「私は例の魔法のせいでここから直接は出られない。だから私のかわりにある人物を連れて来てほしいのよ」
彼女は水晶にその人物を映し出した。銀髪でスカイブルーの瞳の少女。
「名前はエルダ。現在の管理者よ」
「…あの子に似てますね」
オーズがぽつりと呟くとフィーレが俯く。拳を握りしめて何かに堪えるように震えていた。
「この子を使えばあの子は…シオリは蘇るかもしれない。だから…連れてきて。どんな手段を使ってもいいわ」
「了解」
「……」
そう言って二人は姿を消した。
その後、彼女は奥の部屋に入り部屋の中央を目を向ける。
そこには巨大な水晶の塊があった。鎖で何十にも縛られており、まるで誰も触らせないとでもいうように。
「シオリ…」
彼女は水晶に触れる。水晶の中には少女が横になっていた。目を閉じてまるで普通に眠っているかのように。14歳くらいで長い黒髪、黒いワンピース姿だった。
「あなたがいれば私は…」
目を細めながら彼女はしばらく水晶の中の少女を見つめていた。
次回、ついに朔夜とリリィが激突します。そして…