2-8 “朔夜”
あれ?どうしてこうなった?何だか無理な展開に…(汗)
放課後、エルダ達は教室でいつものようにおしゃべりの時間を堪能していた。
「それにしても軍隊かぁ…たった二人を見つけるために軍隊送るなんて何考えてるのかしら…」
シャーリーの言葉を聞いてエルダは苦笑いをした。
「たぶんその二人が凄く強いんじゃないの?」
リリィがエルダと同じように苦笑いをしながら言う。
それからしばらくして皆が帰り支度を始めた時だった。
「……っ!」
突然エルダは胸の奥をえぐられるような痛みが襲った。
「エルダ?」
「エルダ、どうかしたのか?」
エルダは気がついた。とても大きな力が近づいてくる。そして、あるはずがない気配も。
「……来る…彼女が……朔夜が…来る!」
「…サクヤ?」
エルダの呟いた名前にリリィが微かに顔をしかめる。
「ねぇ…エルダ、サクヤって……」
リリィがエルダに尋ねようとした瞬間。
「……!!皆ふせて!!」
エルダの叫び声が響き、そして、窓側の壁全てが吹き飛んだ。
―朔夜Side―
私はひたすら街道を走っていた。人にぶつかろうが関係ない。私は彼に会いたい。
街の中央広場にたどり着き、そこから見える大きな建物を見る。おそらく学校だろう。その学校らしき建物の二階のとある部屋から彼の気配を感じた。
「み~つけた♪」
私は魔法で空中に飛び上がり彼の気配のする部屋に向かって飛び込んだ。魔法の力を使ったから一緒に壁が全て吹き飛んだけどどうでもいい。
「久しぶりだね……蒼真」
私は彼の名前を呼んだ。
―エルダSide―
私は咄嗟に皆の前に障壁を展開して吹き飛んできた壁の残骸を防いだ。
「久しぶりだね……蒼真」
私は真っ直ぐ外から入ってきた人物を見る。足元まである漆黒の黒髪をなびかせて立つ少女がいた。右目には眼帯をしており左目は髪と同じ漆黒だった。
「……朔夜」
「……あら?あなたは誰かしら?私は蒼真っていう男の子を探してるんだけど」
朔夜は教室の中をキョロキョロと見渡す。
「…なんであなたがここにいるの?」
私はそんな彼女のことは気にせずに質問する。
「私の愛しい人の気配を感じてね~」
「……そうじゃないわ。あなた…死んだはずでしょ?」
朔夜は少し驚いた顔をした。
「…私を知ってるの?」
私は朔夜を見つめたまま頷く。
「よく知ってる…いや、覚えてる。だってあなたは…私の目の前で自ら命を絶ったんだから」
朔夜が今度は本気で驚いていた。朔夜はこんなにも感情が豊かだっただろうか……
「あ、あなた……まさか…蒼真なの?」
私は少し目を細めながら朔夜を見た。
「ええ…今はエルダって名前だけど」
朔夜はしばらく呆然としていた。私を異常なまでに愛していた少女。その愛しい少年が少女になっていたのだから無理もない。いっそこのまま二度と会わなければとも思う。でないと昔を思い出す。
「……朔夜」
すると、突然朔夜が口を開いた。
「……か」
「…か?」
「可愛い~!!」
「……なっ!?」
朔夜は私に抱き着いて頬ずりをはじめた。朔夜ってこんな性格だっただろうか。
「蒼真~。あ、今はエルダか。エルダってすっごく可愛くなったね~」
朔夜の表情から以前のような恐怖は感じない。
「え、えっと…朔夜?何だか性格変わってない?」
「そんなことないわよ?私はこれが普通だし…」
すると今までの展開についてこれなくて呆然としていたリリィ達がようやく復活した。
「わ、私のエルダに何するのよ!離れなさい!」
リリィの言葉に朔夜は首を傾げる。少し可愛らしいと思ってしまったのは黙っておこう。さっきまでの緊張感は綺麗になくなっていた。
「私は朔夜、この子と前世で結ばれていた恋人よ。あなたは?」
ちょっと待った。私は恋人になったおぼえはないわよ?
「私はリリィ、エルダの恋人よ!早くエルダを離しなさい!」
朔夜は私とリリィを交互に見た後、瞳を輝かせた。
「なんだ!そうだったの!じゃあ私もエルダの新しい恋人になる!」
「はあ!?」
私は思わず間抜けな声を出してしまった。リリィは絶句している。
「…でも、朔夜…あなたまた誰かを傷つけるんじゃ…」
朔夜は、はい?と首を傾げた。
「なんのこと?」
「忘れたの!?あなた、私と仲が良かった奈美を殺したじゃないの!」
私が涙を流しながら言うと、朔夜は思い出したように手を叩いた。
「ああ、あの事か」
私は段々と怒りが湧いてくるのを感じていた。そんな一言で済ませるほど簡単な事ではないはずだ。
「彼女、死んでないわよ?」
「………え?」
私は言葉の意味を理解できずに混乱した。本当はしんでない?ならあの光景は?あの大量の血は?一体なんだったのだろう。
「あの日はあなたを驚かせようと二人でドッキリを仕掛けたのよ」
「…なっ!ドッキリ!?」
「あの日、何月何日か覚えてる?」
忘れもしないあの日は四月一日で………まさか。
「……エイプリルフール?」
「そう、だから二人であんなお芝居をしたのだけれど…予想以上にショックだったみたいね」
そうだ、あれから私は朔夜から全力で逃げ出した。
「あれはドッキリなんてレベルじゃないわよ!あれから夢に出てくるのよ!?私がどれだけ怖かったかわかる!?」
私は友達が生きていた嬉しさと朔夜への怒りから涙目になっていた。
「…でもあなたの目の前で死んだのは本当よ?」
あの後、私を追い掛けてきた朔夜は
『あなたが愛してくれないなら…』
と言ってナイフを自分の胸に突き刺したのだ。
「実はナイフは偽物だったんだけど…心臓麻痺が同じ時に起きてね…」
「じゃあ…自殺ではなかったの?」
「…ええ」
私は全身から力が抜けてその場に座りこんだ。
「エルダ、大丈夫?」
リリィが慌てて体を支えてくれた。
「私は死んじゃったから知らないけど…あれから奈美には会わなかったの?」
「…うん、あれからしばらく知り合いの家で引きこもって…たまたま外に出た時に事故に遭って死んだから…」
「あらら、そうだったんだ…奈美は大丈夫かなぁ」
朔夜の心配そうな顔を見て私は重い呪縛から解放された気分になっていた。朔夜は何もしていなかったのだと知ったためか逆に安心していた。実際の真実はなんとも言えないような内容だが…
「さて、私はそろそろ帰ろうかな。仕事もあるし」
「朔夜ってどんな仕事してるの?」
私の問い掛けに朔夜は苦笑いをしながら答えた。
「何でも屋…かな。ちなみに今は依頼の途中」
「どんな依頼?」
朔夜はニヤリとわらって私とリリィを指差した。
「あなた達を捕まえること♪」
「…マジで?」
「うん、マジで」
私は朝シャーリーから聞いた情報から朔夜が軍隊に雇われたのだということが想像できたので、なんという運命なのだ…と溜息をついた。
「そうだ、明日私と勝負しようよ!私が勝ったら私もエルダの恋人として認めてくれる?」
「なんですって!?」
朔夜の言葉にリリィが真っ先に反応した。
「そんなこと私が認めないわよ!朔夜!私と勝負しなさい!私に勝たない限りエルダには指一本触れさせないわ!」
「あら、面白いじゃないの…後悔してもしらないわよ?」
「あなたこそ、あっさり負けないように精々気をつけることね!」
「「ウフフフフフ…」」
私は睨み合いながら黒い笑顔をつくる二人を見ながら溜息をつくしかなかった。
ヤンデレが怖くなったので無理矢理起動修正しました。
おかげでちょっと設定がおかしいですが気にしないでください。朔夜はいい子です。ヤンデレではありません!