2-6 自重?何それ?美味しいの?
白「これが自重することを放棄した俺達の…全力全開!!」
フィアナ「さあ!始めるざます!」
エルダ「いくでがんす☆」
リリィ「ふんが~!」
夜「まともに始めなさいよ!!」
天「いいじゃないか!ただだし!」
白「うお!いつの間に!?」
教室のとある机の周りにいつものメンバーが集まっていた。そのメンバーに囲まれた少女…フィアナは視線を明後日の方向に向けながら冷や汗をかいていた。
よりにもよって自分の作り出した物体で事件が起こったのだから…しかも被害者はあのエルダである。彼女なら笑って許してくれそうな気もするが、現在そのエルダは記憶障害により一時的な記憶喪失でありエルダからのフォローは期待できない。
さらに厄介なのはエルダのパートナーであり恋人のリリィである。エルダに何かあれば真っ先に駆け付ける程にエルダ一筋な彼女は現在かなりご立腹である。
「…………」
先程からフィアナを睨んだままの彼女から必死に目を逸らすフィアナにいつもの強気な印象は感じられない。
「ねえ、フィアナ…あなた自分の料理がどれだけ危険かわかってたんでしょ?何でエルダに食べさせたの?おかげで私達だいぶ大変な目にあったんだけどな~」
リリィの言葉にエルダは昨日の事を思い出して苦笑いを浮かべている。ついでに少し顔も赤い。
「え、えっと…私はただ誰かに食べて欲しかっただけですわ」
フィアナの意見がわからないわけではない。自分を認めてほしいと思うことは悪い事ではないが…今回は相手が悪かっただけである。
「さあ~ってと☆フィアナ…ちょっと顔かしなさい☆」
リリィはどうしてもフィアナにお仕置きをしたいらしい。リリィはたまにSなのかMなのかよくわからない
「(…今のリリィは何をするかわかりませんわ)」
フィアナはリリィをじっと見つめて様子を見る。
「…クスッ」
「……っ!?」
次の瞬間フィアナは走り出していた。それはもうオリンピックに出たら金メダルもののスピードだった。
「クスクス…逃がさないわよ?」
そう言うとリリィは黒い笑顔のままゆっくりと教室から出ていった。
「…あのままじゃフィアナが何されるかわからないわね…」
仕方ないので他のメンバーもフィアナを守るために動き出した。
―エルダSide―
「あらら…フィアナさん本気で逃げてるみたいだね」
私の目の前には大きなシャッターが降りていて廊下を塞いでいた。
『おそらくフィアナが時間稼ぎに警報装置を起動させたのでしょう』
シャルの言葉に苦笑いしつつ私はシャッターに触れる。…なかなか頑丈そうね……
『マスター、ここは一つ~~~~~なんてどうです?』
「うん、やってみる!」
シャルからの提案を聞いて私は右手の拳を握りしめる。…いくわよ!
「二〇の極み☆アアアアァァァ!!」
ズガアアアァァァン!!
「わお!凄い!本当にできた~!」
『……まさか本当に成功するなんて』
私達は壊したシャッターを通り抜けてフィアナさんを探すのを再開しようとしたけど…
「またシャッター!?一体いくつあるのよ!!」
これじゃフィアナさんを助ける前に私達が力尽きそうね…
『マスター、しょうがないですよ彼女も必死なんです』
うん、わかってるよ…仕方ない、ここは一気にいきますか!
「シャル!いくよ!全力全開!」
「『スターラ〇トブレイカー!!』」
ドオオオォォォン!!
『マスター!シャッターあと二つです!』
「必中必殺!クリティカルブレード!」
ドガアアァァァン!!
『最後です!』
「微塵に砕けろ!ジェノサ〇ドブレイバー!!」
ドッカアアァァン!!
今の私なら何でも出来そうな気がするわ……
『マスター…本当に記憶ないんですか?もう戻ってるんじゃ…』
「いや…まだみたいだけど」
私はやり過ぎたなと思いながらもフィアナを探すのを再開した。
―フィアナSide―
私は今学校の裏側にある倉庫にもたれかかりながら息を整えていた。
「はあ…はあ…とりあえず…大丈夫かしら?」
私は額の汗を拭って辺りを見回す。今下手に動くのは危険だ。あのリリィに捕まったら大変なことになる。…しかし私は油断していた。リリィも天使の眷属になっていることに。
「…ふふ、やぁっとみ・つ・け・たぁ♪」
「!!!」
突然声が聞こえたので私は辺りを見渡すが誰もいない。
「こっちだよ~」
私はゆっくりと顔を上げた。そう、声は空から聞こえたのだ。
「…うふふふ♪」
そこには翼を広げて浮かぶ天使と言う名の悪魔がいた。
「リ、リリィ…その、謝るから許してくださいませんか?」
「うん、それ無理♪」
フィアナは懐からナイフを取り出した。
「だって、私は本当にあなたに死んでほしいんだもの♪」
「い、意味がわからないですし、笑えないですわ!」
「…クスクス☆じゃ、死になさい♪」
私は咄嗟に近くの開いている窓から校舎の中に飛び込んだ。そのまま廊下を全力で走る。
「(走れ!走るのよ私!心臓が破れるくらいまで!)」
私は最早リリィから逃げることだけを考えていた。
―エルダSide―
「裂衝蒼〇塵!!」
ズバアァ!!
私は再びシャッターに道を塞がれそれを破壊していた。
「…もう、いや」
何で私がこんなことをしなければならないのだろうか。私は若干涙目になりながら廊下を進んでいた。
『マスター、あれでここは最後です』
私は今までの不満を爆発させる勢いでシャッターに向かって走った。
「秘奥義・重〇甲破り!」
ドオオォォォン!!
私は何をしてるんだろう…。そう思いながら廊下の角を曲がろうとした瞬間私は目の前にフィアナが走りこんできた。
「「…あ」」
ゴンッ!!
私とフィアナは盛大に額をぶつけてしまった。そして私は頭の中で何かがはまる音がした気がした。
「~~~!!」
「だ、大丈夫!?フィアナ!?」
私は倒れているフィアナに駆け寄ると回復魔術を使った。
「あ、ありがとうエルダ…」
「一体どう……した…の……」
私はフィアナが走ってきた方の廊下を見て言葉を無くした。はっきり言うと目茶苦茶だった。壁は剥がれ、窓は粉々、天井には穴が開いている。
「フィアナ、これは誰がやったの?」
「あ、リリィですわ」
あの子ったらまた暴走したのね。私のためにだから嬉しいけど…これはやり過ぎだわ。
「あ~!エルちゃんだ~!♪」
噂をすればなんとやら…リリィが近づいてくるのがわかる。フィアナがガクガクと震えだした。
そしてフィアナが私の肩に手を置いた。
「待っててね!今すぐフィアナにお仕置きしてまた甘い二人だけの時間を…」
ガシッ!
「…エルちゃん?」
「ねぇ、リリィ…ここまでやらなきゃいけないことなの?」
私はリリィの手を掴んでゆっくりと振り返った。
「…あれ?エルちゃん?瞳の色が…」
「…ただいま、リリィ」
ええ、完璧に戻りましたよ。たぶん瞳の色も元に戻っているだれう。
「それじゃ…リリィ、学校を壊したから『お☆は☆な☆し』しましょうね♪」
一瞬顔をで真っ青にしたリリィに私はゆっくり右手をむける。
「…クロ〇ファイアー……シュート!」
ドガアアアァァァン!!
それから校舎の修繕のために学校はしばらく休校となったが、騒ぎの原因である私とリリィとフィアナは毎日手伝わされたのは言うまでもない。
白「あははは、やっちゃったぜ♪」
夜「やり過ぎたかしら?」
白「俺は最早止まらんぜ!!」
夜「止まりなさい!!バニッシュ、デス!!(一撃必殺)」
白「ぎゃああああ!!」