2-5 忍び寄る魔の手?
今回はちょっとしんみりした感じです。
リリィと記憶が戻らないままのエルダは湖の側にある家に帰ってきた。
「う~ん…4時間目の途中から早退したから今はだいたい昼休みの時間よね」
リリィはドアを開けながらそう言うとエルダの方に向き直る。
「ねぇ、エルちゃん!お昼は何が食べたい?」
リリィの問い掛けにしばらく考えたエルダは可愛らしく首を傾げる。
「…何でもいいです」
「それが一番困るのよね…」
リリィがそう言うとエルダはクスクスと笑いだした。
「ああ!エルちゃん酷い!せっかく真面目に考えてるのに~!」
「ごめんなさい、なんだか可笑しくて」
そして二人でしばらく笑い合った。
結局、昼食は簡単なものですませた二人は湖の淵に座り、リリィが自分達のことをエルダに説明した。
「―――というわけ。わかった?」
「はい…でも驚きです。私が天使だなんて…」
リリィは微笑むとエルダの頭を撫でる。
「…ふぇ?い、いきなり何を…/////」
「大丈夫よ、すぐに全部思い出わ。それに、私とシャルもいるし…ね?」
エルダはリリィを見つめながら笑顔で頷いた。
「あの…そういえばシャルって誰のことですか?」
「シャルならあなたのすぐ隣にいるわよ?」
エルダが反対の方を見ると一本の剣が置いてあった。さっきリリィが一緒に持ってきたのだ。
『マスター、私を忘れてもらったら困りますよ…』
「…へ?……えええぇぇぇ!?け、剣が喋った~!?」
その後シャルのことを説明しているとすっかり夕方になってしまい、二人は夕食を食べるとテーブルを挟んで向かい合う形で座った。
「…保健室では混乱してて理解してなかったですけど、そのフィアナさんの料理を食べたのが原因で私はこうなったんですね?」
「ええ、フィアナには明日お仕置きするとして、今日はもう寝ましょうか」
二人は今日のことを振り返りながら明日の予定を確認していた。エルダは明日も普通に学校に登校するつもりらしく、リリィはそれをサポートすることにした。
「…喉が渇いたから水が飲みたいですね」
「あ、じゃあ私がくんでくるよ」
「ありがとう、リリィさん」
まだ名前から“さん”が抜けないことを少し寂しく感じながらもリリィは台所に入った。
「(やっぱり調子狂うなぁ…)」
リリィは水の入ったコップを見つめながら溜息をついた。いつもならエルダにちょっかいを出して怒られたり反応を見て楽しむのがリリィの楽しみなのだ。
しかし、エルダは現在記憶が曖昧ではっきりとしていない。わかっていてもリリィにとっては精神的に辛い。
「……私はどうしたらいいのかな、エルダ…」
リリィは一人台所で呟いた。
―エルダSide―
リリィさんが台所に行くのを見ながら私は心の奥にすっきりしない気持ちを抱えていた。
「…ねぇ、シャル」
『なんですか?マスター』
私はシャルに相談しようと話しかけた。
「リリィさんってなんだか無理してる気がするの…」
『………』
シャルは何も言わない。でも私は構わず続ける。
「私に優しくしてくれてるのはわかるけど…何かを我慢してるっていうか…堪えてるように感じるの。シャルはなんでかかわかる?」
シャルはしばらく黙っていたけど答えてくれた。
『リリィはいつものようにあなたと触れ合えないから不安なんですよ…』
「いつものように触れ合えない…」
『はい、以前からリリィはマスターと恋人だということは聞いてますよね?』
「…うん」
『リリィはいつもあマスターにべったりでした。そしてマスターも嫌な顔をしてましたがおそらく心の中ではそう思ってはいなかったと私は思いますよ?』
そう言ってシャルは黙ってしまった。私がリリィさんの行動に違和感を覚えるのはそのせいなのかな…わからない。
――私はリリィが好きだよ――
「……!」
何?今の…私の声だけど…私じゃないみたい…
――あなたはリリィのことが好き?――
うん、私はリリィが好きだ。一緒にいたら何故か安心できて…温かい気持ちになる。
――リリィは優しいから…あなたを不安にさせないようにしてるのよ――
私のために?
――そう、あなたのために。自分の気持ちだけであなたを傷つけないように――
じゃあ私はどうしてあげたらいいのかな…
――そんなの簡単だよ――
私は彼女…もう一人の私の言葉を聞いて思わず微笑んだ。…なんだ、簡単じゃないか…
――頑張ってね、エルちゃん♪――
うん、ありがとう。……エルダ。ちゃんと言うよ…今の自分の気持ちと、そして……彼女の名前を…
―SideOut―
―リリィSide―
私が台所から出て、テーブルに戻るとエルダが笑ってこっちを見ていた。
「どうしたの?エルちゃん、そんなにニヤニヤして」
「ふふ、何でもないよ…」
私が首を傾げているとエルダは私の手を握ってきた。私が少し驚いていると、エルダは顔を少し赤くして立ち上がる。そして私のてを引いてベットまで歩くとベットに座った。
「…エルちゃん、どうした……っ!!」
私が言葉を言い終わるまえにエルダは私の唇を自分の唇で塞いだ。
「……ん…くちゅ……ふっ……」
「……くちゅ……んぁ……ん……」
数十秒のゆっくりとしたキスをした後、唇を離す。透明な糸が二人の間にかかっていた。
「…エルちゃん?いきなりどうしたの?」
するとエルダ私に抱き着いてきた。顔は隠れて見えないがたぶん真っ赤になっているだろう。
「…昼間からずっと我慢してたんでしょ?」
「……え?」
私はエルダの言葉にドキッとした。
「ごめんね、心配かけちゃって。私は……リリィのことが好きだよ」
「……!」
エルダが私の名前を言った瞬間、私は視界が滲むのがわかった。さっきまで“さん”をつけて呼ばれていたから…なんだかエルダが遠くに行ってしまったみたいで怖かった。
「…リリィ?」
エルダは私が泣いているのに気がついて不安そうな顔をしていた。だから私は思いっきりエルダを抱きしめた。
「私も…エルダが大好きだよ」
私達はそのままもう一度唇を重ねた。
―SideOut―
二人は抱き合いながらお互いの顔を見つめていた。
「……ねぇ、エルダ」
「…何?リリィ」
リリィは赤くなった顔でエルダを見ていた。
「私…我慢しなくてもいいのかな…」
エルダは顔を赤くしながら静かに頷いた。
リリィの手がゆっくりとエルダの胸の二つの膨らみに触れる。エルダはビクッと体を震わせたが、すぐに力を抜いてリリィに体を預けた。
「エルダ…可愛いよ…」
リリィの手が服の中に入りこみ、ゆっくりと二つの膨らみに指を埋める。
「…あ…ん…リリィ…ああ!」
エルダは喘ぎ声をあげながらリリィの名前を呼ぶ。それだけでリリィの理性はあっさりと崩れた。
片方の手がゆっくりと下へと移動する。そしてそのまま……
~自主規制です~
―リリィSide―
あれからエルダは何度か絶頂を迎えた後そのまま眠ってしまった。私はエルダの寝顔を見ながらしばらくそのまま動かなかった。
エルダは私との記憶が無くても私を好きだと言ってくれた。それだけで私は一気に心のもやが晴れた気分になった。
「…私はいつまでもエルダの側にいるよ…ずっと、一緒だからね」
そう呟いて私は“明日もエルダと笑い合えますように”と願ながら深い眠りに落ちていった。
次回ははっちゃけます。自重なんてしませんよ?ふふふ♪