1―1 遭遇
どうも!白夜です!
じゃんじゃん行きますよ~!
真っ白な扉を抜けるとそこは森のなかだった。
「さて、まずは町か村を探さなきゃ」
俺は意気揚々と歩きだそうとしてすぐに立ち止まった。
「そうだ、せっかく天使になったんだから空くらい飛べるんじゃないかな…」
俺は背中の大きな翼を見て呟いた。
身体を包めるほど大きい翼なのだ。きっと飛べる………はずだ。
『マスター、安心してください。ちゃんと飛べますよ』
頭の中にシャルの声が響いた。
ちなみにシャルは必要な時以外は収納空間のような場所に保管されていて会話くらいはできるようにしてある。
「そうか、ならやってみるかな!」
俺はいきよいよく翼をはためかせて空に舞い上がった。
少しぎこちないがちゃんと飛べている。おそらくそのうち慣れるだろう。
「空を飛ぶのは気持ちいいなぁ」
自然と笑顔になった。人間なら一度は空を飛びたいと思うはずだ。俺は今それを経験している。凄く楽しい。
「……ん?」
森の中心らしき部分に湖があるのに気がついた。
「ちょうどいい、気温も高いし、ちょっと水浴びでもしようかな」
俺は湖に降り立った。
「…ふぅ」
湖の淵の木陰に座って足を水につけた。ひんやりしていて気持ちがいい。
俺はついでにそのまま魔法の練習をすることにした。
手の平に火の玉を作ったり、水の塊を作ってみたり、と色々やっているともう日が暮れてきた。
「ん?もう日が暮れきたな、でももう少しだけ……」
俺は湖の水面に立った。爪先に水の魔法で作った膜をはって、まるで踊るように水面を滑った。
「うん、かなり慣れてきたな」
俺はなんだか楽しくてそのまま遊び続けた。
-???Side-
私達は森の中を歩いていた。森に入るのはいつものこと。
私の名前はリリィ・クレセイン、母さんに似たセミロングの黒髪に緑の瞳をしてる。
私達は近くの街の学校に通う学生であり、夜中は外出禁止なのだがこっそりと寮を抜けだしてきたのだ。
「なぁ、リリィ、今日はどこに行くんだ?」
今話し掛けてきたのは幼なじみのサイマス・ハルバルト。私の数少ない親友だ。ちなみにあだ名は“サイ”である。
「湖よ。今日は満月だからたぶんとても綺麗で神秘的だと思うわ」
私達はこの森の真ん中にある湖に向かっている。
暇な時はあそこでよく魔法の特訓をしている。ほとんど誰も来ないから静かで落ち着ける場所だった。
「さぁ、到着………あれ?…誰かいる」
湖の方に人影が見えた。私はサイに視線を送ると彼は静かに頷いた。
静かに木の陰から湖を覗いてみる。
その瞬間、私達は信じられないものを見てしまった。
「……天使?」
私は思わず呟いた。湖の水面を滑るようにして踊っていた少女はまさに天使だった。
ワンピース姿で腰まである銀色の髪をなびかせ、瞳は蒼くて大きく、くりくりとしていた。歳は13~15歳位だろう。まさに美少女だった。
そしてその少女の背中には真っ白な翼があった。
月の光をバックにして踊るその姿は一つの芸術品のようだった。
-蒼真Side-
『マスター、これからは男口調をやめてください』
「なんでだ?普段は男の姿で過ごすんだから問題ないだろ?」
水面で華麗にターンをきめて俺はシャルと話していた。
『マスターの高くて甘い感じの声に男口調が合ってません。元の姿の時くらいはちゃんと喋ってくださいよ』
まぁ、俺は一応女になったわけだからな。仕方ない。
「わかったわよ……これでいい?」
何だか言ってて恥ずかしくなってきたぞ(////)
『はい!バッチリですよ!』
まったく、仕方ないなと心の中でぼやいていると近くに人の気配がした。数は二人……子供のようだ。
俺は立ち止まると林の方を見て声をかけた。
「……あんまり人にじろじろ見られるのは好きじゃないんだけどなぁ」
すると林の中から二人の人間が出てきた。
一人はセミロングぐらいの黒髪に緑の瞳をした女の子。歳は17歳ぐらいだろう。身長は今の自分よりも少し高い。整った顔立ちで少し大人っぽい印象を受ける。
もう一人は茶髪のショートヘアーの男の子だ歳は17歳ぐらいで紅い瞳が印象的だ。身長は170cmくらいだ。
二人とも黒いローブを身につけており、ローブには綺麗な紋章が刺繍されているところをみるとおそらく学生だろう。
「お……私に何か用ですか?」
危うく“俺”と言いかけて言い直した。
「え?……いや、その…」
突然話し掛けられて驚いたのか若干緊張しているようだ。
「……ふふ」
俺はその様子が可笑しくてつい笑ってしまった。
そのまま水面を滑って二人の近くに行くと。
「大丈夫よ、何もしないから」
と言った。二人は一度顔を見合わせて再び俺に向き直ると少女が恐る恐る口を開いた。
「あ、あの…それは…本物なの?」
そう言って俺の翼を指差した。
「ああ、これ?本物だよ。…ほら」
そう言って浮かんでみせた。
「す、凄い!」
少女は目をキラキラさせて俺を見ていた。少年はただ唖然としているだけだ。
「あなた達はこんな夜中に何でここに?」
俺は少女にそう尋ねた。
「え?えっと、この湖にはよくこっそり来てるの。今日も月が綺麗だったから…ここで眺めようかと思って…そしたら」
「私がいたわけね」
少女は頷く。しばらく時間を忘れて話しをした。この森のこと、彼女達の街のこと、聞いていて楽しかった。
すると隣の少年が時計を見て慌てて声をかけてきた。
「おい!やばいぞ!もうすぐ寮の就寝時間だ!早く帰らないと玄関に鍵がかかるぞ」
やはり二人は学生のようだ。隣の少女も慌てている。
「ええ~!?もうそんな時間なの!?このままじゃ間に合わないよ~」
二人の顔は真っ青だ。おそらく門限までに帰らないと寮に入れないらしい。
「あと10分しかないよ!どうしよう!」
二人は急いで帰ろうとしたが俺は二人を呼び止めた。
「ちょっと待って。私がなんとかしてあげる」
二人は首を傾げた。俺は二人の手を取ると翼を広げた。
「え!?まさか…」
少女に軽く微笑むと俺は二人を連れて空に舞い上がった。
「きゃああああ~」
「うわああああ~」
二人は驚きの声をあげているが俺は構わず街の方向を確認する。少し離れた所に明かりが見えた。おそらくあそこだろう。
「いくわよ。空なんて飛んだことないと思うけど慣れれば大丈夫よ」
そう言って俺は街へ向かって急いだ。
なんとか門限に間に合った。少女は俺に「また会いましょう」と言って二人で走っていった。俺は手を振って後ろ姿を見送ると再び湖に帰ってきた。
『さすがマスターですね』
ずっと大人しかったシャルが話し掛けてきた。
「ん?……うん、なんか困った人は助けたくなるからね」
俺は少し笑うとその場に座った。さて、これからどうしようかな…
『マスター、ものは相談ですが、彼等は学生でしたよね』
「ん?…ええ、そうね」
『なら、彼らの学校に入りませんか?学校なら魔法や世界のことも学べますよ?』
成る程、それもいいかもしれない。そもそも俺は捨て子だったから学校に行ったことがない。だから学校に行ってみたいという気持ちもある。
「そうだな、明日あの街へ行って学校に入学できるか聞いてみよう」
俺は学校生活を待ち遠しく思いながら眠りについた。
…そういえば二人の名前を聞くの忘れてたな。
テスト期間なのでなかなか書けません。(^_^;)