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天使として…  作者: 白夜
17/49

過去編1-5 …さよなら

キャラクタープロフィール(過去編ラスト)


シグナス・ガルテングス


25歳(見た目は15歳)

種族 魔族

身長 155cm

体重 45kg


 白髪のショートヘアーで紫色の瞳をした魔族の少年。幼いころから誰にも受け入れてもらえずに孤独な生活をしていた。あるときついに世界に復讐しようと殺した魔族の死体を使い軍隊を結成。世界に戦争をしかける。結果、シャルに人の温もりと生きる喜びを教えてもらい戦争が終わった後はシャルとラグナとの三人生活をしている。


『魔族について』


 魔族は人間よりも長生きで、シグナスも見た目は15歳だが実際は25歳前後、魔族はある程度成長するとそれからはあまり見た目は変化しない。平均寿命は1000歳前後と言われている。



 青空の下でシャルは別荘の自分達のへやの窓辺に座り本を読んでいた。


「おい!それは俺の獲物だぞ!」


「残念でした!早い者勝ちだよ!」


 ふと聞こえた声にシャルは顔を上げる。目の前には海が広がり砂浜を二人の男が走り回っている。


「こらシグナス!まちやがれ!」


「ほらほら、こっちだよ!」


 二人の男、ラグナとシグナスを見ながらシャルは微笑む。


 あの戦争が終わって3週間がたった。

 シグナスはシャルとラグナが嘘の報告書を出して戦争に反対して捕まっていた少年兵ということにして今はシャルとラグナが面倒を見ている。


 シャルとラグナは戦争が終わり普通の生活に戻ると一緒に暮らし始めた。シグナスとは最初はぎこちなかったが次第に打ち解けいまではすっかり家族の一員である。


「おーい、アイナも泳がないか~?」


 ラグナが手を振るのでシャルも振り返す。今3人は疲れを癒すことを目的に海に遊びに来ていた。ラグナとシグナスには本名を教え、もはや男装の必要もないので今のシャルはフリルのついた薄い水色のワンピースという女性らしい姿をしている。


「……平和ですね」


 シャルはそう呟くと立ち上がり外に出ようとする。すると突然目眩がしてその場に座り込んでしまった。さらに胸が締め付けられるように苦しい。


「……うっ!……はぁ……はぁ…」


 息を整えてシャルは立ち上がる。


「……もう、時間がないのですね」


 シャルは自分の手の平を見つめながら呟いた。あの日、シャルが使った“限界突破(リミットブレイク)”はシャルの体に深刻なダメージを残していた。ラグナとシグナスにはばれないように隠してきたが最近は頻繁に目眩や胸を締め付けられるような痛みが襲ってくる。


「………」


 シャルは立ち上がり外に出る。ドアの向こうに出ていく彼女の後ろ姿は日の光を浴びて優雅で、美しく、そして儚い幻のようだった。










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-



 その日の夜、シャルは一人砂浜を歩いていた。羽のあしらわれた銀色のネグリジェを着て波打際まで歩いた。長い金髪が風に揺れる。


「……もう少し一緒にいたかったですね」


 ぽつりと呟くとシャルは空を見上げる。月が辺りを明るく照らしている。


「……眠れないのか?」


 不意に後から声をかけられてシャルはビクリと肩を震わせて振り返る。


「…ラグナ」


 そこにはいつもの黒いコート姿のラグナがいた。


「…シグナスはともかく俺はごまかせないぞ?」


 真剣な顔のラグナにシャルは肩を竦める。


「ラグナにはかないませんね…」


 シャルは再び海を眺める。ラグナも横に並んで立った。


「…体の調子はどうなんだ」


「…もう限界です。無理矢理に存在を作り変えたのでいつ消えてもおかしくないです」


 ラグナの方を向いてシャルは困ったように笑った。


「……何か方法はないのか?お前が消えなくてもいいような……」


 シャルは人差し指でラグナの口をふさぐと首を横に振る。


「……いいんです。私はこうして幸せな時間を過ごせました。これ以上は我が儘というものです」


 ラグナは拳を強く握ると悔しそうに俯いた。


「…さて、もう時間がありませんね…悪いですが…シグナス を呼んできて………ぐっ!」


 突然の目眩と胸の痛みにシャルがふらつきラグナが慌ててそれを支える。


「……アイナ!」


 ラグナがシャルの本名を呼ぶとシャルは嬉しそうに目を細めた。


「……大丈夫です。それよりシグナスを呼んできてください…あまり時間がありません」


「…待ってろ!すぐに呼んでくる!」


 そう言うとラグナは別荘に走って行った。シャルは空に浮かぶ月を見上げて呟く。


「……なかなかいい人生でしたね」



 すぐにラグナとシグナスが駆け付ける。


「……シャル」


 シグナスがシャルのそばにしゃがみ込むと不安げな顔を見せる。


「……大丈夫、あなたのせいじゃありませんよ」


 シャルは微笑むとゆっくりと立ち上がる。するとシャルの足元から光の粒子が舞いはじめる。


「………っ!」

「…………!」


 二人は驚愕すると同時に大切な人がいなくなるという恐怖に襲われた。


「……ダメだ!」


 シグナスがシャルの腕を掴む。


「……まだ、僕はあんたから教えてもらいたいんだ!人の素晴らしさを!生きる喜びを!」


 シャルは微笑みながらシグナスの頭を撫でる。すでに足元だけでなく全身から光の粒子が舞いはじめる。


「私はきっかけを作ったに過ぎませんよ…これからは自分で生きるんです…まだラグナもいます。ラグナと一緒に生きてください…」


 シグナスが涙に濡れた顔をあげてシャルを見る。シャルはシグナスを抱きしめる、時間はほんの数秒だった。お互いに無言で離れる。


「…アイナ」


 ラグナが名前を口にする。実はシャルを本名で呼んでいるのはラグナだけであり、シャルはそれが嬉しかった。


「…ラグナ、後は任せましたよ?シグナスのこと、ちゃんと支えてあげてくださいね?」


「…ああ!」


 ラグナの返事に合わせて光の粒子が強く光る。


「…アイナ!」


 ラグナはシャルを抱きしめた。シャルもラグナの背中に手を回す。


「…私はいつでもあなたのそばにいますよ…いつまでも」


「…ああ」


 ゆっくりと唇を合わせる。数秒の時間が何時間にも感じた。ゆっくりと唇を離してシャルは微笑む。そして名残惜しそうに二人は離れるとシャルは並んで立つ二人を見つめる。


「ラグナ…愛してる」


 ラグナはゆっくり頷く。


「シグナス…強くしっかり生きてくださいね」


 シグナスも頷く。


 シャルの姿は光の粒子に包まれ見えなくなっていく。


「……さよなら」



 その言葉を最後にアイナ=シャールインという一人の女性が世界から消えた。










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-



『それからのことは覚えてません。気がついたら神様に拾われ、体がないのでこうして剣としてマスターと共にあるわけです』


 シャルが話を終えると、エリスもリリィも泣いていた。


「……シャル、辛かったでしょ?」


 エルダの問いにシャルはしばらく黙ったあと優しく答える。


『…確かに辛かったですよ?でも私はまたこの世界に来て、確かにここに存在しているんですよ…一度死んだ人間には大きすぎる幸せです…そうは思いませんか?』


 シャルの答えにエルダとリリィは頷いた。





 それからしばらくしてエルダとリリィが眠ったころ、壁に立てかけてあったシャルから光の粒子が舞い上がり、湖のふちに集まると人の形を作り出した。


 長い金髪を風にゆらしスカイブルーの瞳を細めてシャルは夜空に浮かぶ月を見上げる。


『…ラグナ、シグナス、私は…今、幸せですよ』


 夜空に向かって話すシャルの姿は月明かりに照らされた景色の中でも一際輝いて見えた。









 過去編 完









 やっと過去編が終わりました。次回からまた現代に戻ります。


 ちなみに前書きのプロフィールを見た方でさっしのいい方はフラグが立っているのに気がつくと思います。まぁ、実現するかは未定ですが。





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