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天使として…  作者: 白夜
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過去編1-2 人形使い

 合宿が終わりました!これでしばらく執筆に専念できます!




 砦の長い廊下をラグナとシャルは走っていた。時々魔族の兵士が現れるが所詮は下っ端程度。二人にとっては倒すのはたやすい。


 現在砦の正面入口で囮の部隊が戦闘中であり砦の戦力は全て入口に集中している。つまり、現在シャル達がいる砦の内部にはほとんど兵士が残っていない。たまに見張りと出会うが相手がこちらに気付く前に全て切り捨てられている。


「…隊長」


 シャルがラグナに横目で話しかける。


「二人きりの時は呼び捨てでいいって言っただろ?」


 ラグナは微笑みを浮かべながらシャルを見る。


「…そうでしたね。じゃあ…ラグナ、気づいてますか?」


 シャルが今度は真剣な顔で尋ねる。


「ああ、さっきから戦ってる魔族達…最初から死んでるな」


「…ええ」


 そう、さっきから戦っている魔族達はまるで感情が無く、切り付けても断末魔さえあげない。さらに、普通なら死んでいるはずの傷を負わせても構わず向かってくるため、ラグナの使う炎の魔術で完全に灰にしてしまわなければならないのだ。


「…何か嫌な予感がします」


「…これは死者を操る能力なのか?」


 廊下に現れる魔族の兵士を次々に灰に変えていく。


「……?」


 すると、シャルはラグナの炎に焼かれる兵士の体に光る糸のような物が繋がっていることに気づいた。


「(…あれは何だ?)」


 シャルは疑問に思いながらも今はラグナの援護に集中することにした。


「…シャル、あれだ!」


 前方に赤い色をしたドアがある。おそらくあれが砦の最深部なのだろう。


 二人は警戒を崩さずに扉を開ける。薄暗い部屋はそれなりに広く、中央には飾りのついた豪華な椅子が置いてあった。そして、その椅子には一人の少年が座っていた。


「やあ、いらっしゃい」


 少年はにこやかに二人に挨拶をする。見た目は15歳ほどの少年だが魔族は普通の人間よりも老化が遅いためおそらくは25歳前後だろう。


「お前がここのリーダーか?」


 ラグナが険しい表情で尋ねる。少年は静かに首を振る。


「僕はここのリーダーではありません」


 その答えにシャルとラグナは眉をひそめる。


「…それでは、あなたはここで何をしているのですか?」


 シャルが尋ねた瞬間少年の笑顔の“質”が変わった。


「……っ!」

「………!」


 少年からは今までに感じたことがないくらいの殺気が伝わってくる。シャルの頬を冷や汗が流れる。


「僕がここにいる理由かい?……そろそろ調子にのってるそちらの戦力を削りにきたのさ」


 シャルは横目でラグナを見る。するとラグナも険しい表情をしていた。


「君達は連合軍の中でも特に強いらしいね…だから君達を殺したら連合軍の奴らはどう思うかなぁ……」


 少年がゆっくりと立ち上がる。白いショートヘアーの髪に紫色の瞳。顔立ちも良く美少年ではあるが恐ろしいほどの殺気を放ちながら立つ姿は死神のようだった。


「さぁ、君達はどんな踊りを見せてくれるかな?」


 少年がゆっくりと手を上げる。するとどこにいたのか大勢の兵士に二人は囲まれた。


「……!?気配はなかったのに」


 ざっと見回しただけでも30人はいるだろうか。ラグナとシャルは背中を合わせて警戒する。


「気配がないのは当然だよ…なぜなら、彼らはもう死んでるんだからね」


「……なに!?」


 少年が指を動かすと一斉に兵士達が二人に襲い掛かった。ラグナは先程と同じように炎の魔術で確実に兵士を灰にしていく。シャルは近づくものから次々と切り捨てていき、転ばせる。さすがに腕や足を切断すれば兵士は戦えない。


「シャル!おそらくこいつらは操られているだけだ!あの少年を狙え!」


 シャルは頷くと持ち前のスピードで兵士の間をかい潜り少年へと走った。基本的に何かを操るタイプの戦闘をする者は接近戦に弱い。


「(おそらく周りの兵士よりも力は強くないはず…)」


 突然目の前に走り込んできたシャルを見て少年は少し驚いた表情をした。


「……もらった!」


 シャルが素早く剣を振り下ろす。しかしシャルの剣は少年には届かず途中で停止する。


「……なに!?」


 シャルの言葉に少年はニヤリと笑う。シャルの剣を受けとめたのはいくつも束ねられた糸だった。


「自己紹介がまだだったね。僕はシグナス・ガルテングス、またの名を“人形使い”そして、魔族軍の総司令官でもある」


 シャルは驚く。まさか目の前にいる少年が敵の総大将だとは思ってもいなかったからだ。


「…それと」


 少年がシャルに向かって手の平を向ける。


「……ぐっ!?」


 次の瞬間シャルは何かに引っ張られるように後方の壁まで吹き飛ばされた。


「…人形よりも操っている本人が弱いなんて誰が言ったんだろうね?…言っておくけどそれは間違いだよ」


 シグナスはまるで見下すように二人を見た。


「シャル!大丈夫か!?」


 目の前の敵を蹴散らしたラグナがシャルの側に駆け寄る。


「大丈夫です。しかし気をつけてください。彼は糸を使います」


 シャルの言葉にラグナは頷く。


「やっぱりただの兵士達じゃ相手にならないみたいだね。仕方ないから…僕が直接相手してあげるよ」


 シグナスが両手を上げるのを見て二人も戦闘態勢に入る。


「さぁ、開幕だ」


 シグナスは優雅にお辞儀をすると二人に向かって跳んだ。







 次で過去編は大詰めを迎える予定です。

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