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天使として…  作者: 白夜
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過去編1-1 聖魔戦争

白夜「しばらくエルダ達はお休みです」


リリィ「エルダ~イチャイチャしようよ~!!」


エルダ「…ちゃんと話聞きなさいよ」

 今から500年前、二つの大陸を巻き込んだ戦争があった。後に聖魔戦争と呼ばれる戦いである。


 一年間を氷で閉ざされた大陸、カンバライス。この大陸に人間はほとんどいない。かわりに獣人や魔族といった特殊な種族がいるのだ。


 ある時、魔族の中の一人が世界に向けて宣戦布告をした。理由は自分達を見下した世界への復讐。各国は驚き半分、呆れ半分な面持ちで軽く治安を乱すやからを捕まえる気持ちで兵を送った。


 その結果は…全滅


 わずか百人程度の軍勢に一万の軍隊が敗北したのだ。これに焦りを覚えた各国は直ちに戦闘態勢に移行した。


 魔族のリーダーは自らを魔王の生まれ変わりだと宣言した。かつて全ての大陸を支配し、その後天使によって滅ぼされたと言われる存在。


 魔族の力は増し、数を増やし、ついにはカンバライス大陸を完全に支配下に置いた。


 それを危惧した魔族以外の種族が国や思想も関係なく一丸となって立ち向かった。これが聖魔戦争の始まりである。




 戦争が始まって数年、連合軍は最新の兵器を開発し、今までの戦況を覆した。そのことで勢いを増した連合軍は次々と魔族を押し返していった。


 そしてついに敵の本陣があるカンバライス大陸に乗り込んだ連合軍は拠点を確保し、ついに最終決戦を前にしていた。










 連合軍本部は谷を見下ろすように山の上に作られていた。その谷を見ながら夜風にあたる一人の軍人がいた。

 身長は150センチあるか、というぐらいの小柄だが顔は全体的に整っていて長い金髪を一つにまとめて背中に垂らしている。瞳は青空のようなスカイブルーで顔だけ見れば間違いなく女だとわかる。


 しかし、その顔とは対称的に身につけているのは男物の軍服である。


「断罪の谷…か」


 凛とした声でそう呟く。この谷は魔王が天使との戦った時にできたと言われている。天使が放った最後の一撃が大地を割ったそうだ。だからついた名前が“断罪の谷”ということらしい。


「まだ起きてたのか?……シャル」


「……眠れないんですよ」


 後ろから聞こえた声に振り返らずにシャルは答えた。


「そうか、だが明日は最後の拠点を確保する大事な作戦がある…しっかり休んでおけよ?」


「……わかってますよ」


 シャルは振り返って声の主を見つめる。肩まである青い髪を風に揺らして立つその男は第7部隊隊長である、ラグナ・ クライラスである。

 黒いロングコートを着て立つその出で立ちは力強く、一つ一つの動作に無駄がない。しかし、見た目とは反対に彼の黒い瞳は優しい。


「…今日は月が綺麗だな」


 ラグナの言うとおり、夜空には美しい満月が輝いていた。


「まったく、ここにいるお前が女だったらいいムードなんだがな」


「……何言ってるんですか隊長」


 二人はしばらくその場で笑い合った。








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 私は、アイナ・シャールイン。現在は連合軍第7部隊の副隊長をしている。私は女だが、連合軍で女性は非戦闘員にされるので私は男装をしてこの部隊に入った。私はどうしても自分の力を人々のために使いたかったのだ。ちなみに現在はクロドという偽名を使っている。


 入隊の時も体までは調べられなかったので何とかごまかせた。周囲からは女みたいだとよく言われているが、実際女だから気にしていない。


「シャル、いくぞ」

 ラグナから声をかけられて私は立ち上がり彼の後をついていく。ラグナは誰にでも平等に接しており彼の人気は連合軍のなかでトップといえるだろう。


「なぁ、シャル」


「何でしょう?」


「今日は俺とお前の二人で別行動だ」


 確か昨日のブリーフィングでも言っていたな。


「確か囮の部隊が敵を混乱させているうちに僕達で拠点のリーダーを潰すんでしたね」


 ラグナは満足そうに頷く。


「俺達は敵拠点の側面から一気に最深部に突入する。俺とシャルなら大丈夫だろ?」


 そう言うとラグナは私を見て微笑んだ。


「…ええ、そうですね」


 私もつられて微笑んだ。ラグナと知り合ってもう二年だ。すっかり兄弟のような関係になっていた私達のコンビネーションはばっちりだった。


「さて、そろそろ出発だ!」


 ラグナに背中を叩かれた。痛かったが彼なりの仲がいい者どうしの挨拶みたいなものなので苦笑いしながら私は急いで彼の後ろをついていった。










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 谷を見下ろす山の中にその砦はあった。主に谷に近づく敵を迎撃するために作られたのだが、現在は補給ラインを潰されており、さすがの魔族も士気がかなり低下していた。


「よし、作戦開始だ!」


 ラグナの掛け声とともに囮の部隊が正面から突撃する。予想通り敵は正面入口にバリケードを作り、そこにほとんどの戦力を投入してきた。


「いくぜ!シャル!」


「了解!」


 私達は岩場を利用し、砦の側面に魔術で大穴を開けてそこから中へと突入した。

 作戦は順調だ、しかし何故か胸の内にはもやもやしたものが残っていた。


「……嫌な予感がする」


 私の呟きは戦場の叫び声に掻き消されて誰にも聞かれることはなかった。







キャラクタープロフィール(過去編1)


アイナ・シャールイン

22歳

性別・女

身長・150cm前後


 さらさらの金髪とスカイブルーの瞳をした女性。連合軍の第7部隊の副隊長に就いている。軍隊に女性は入れないためクロドという偽名を使い男装をしている

 隊長のラグナとは二年前に出会い、様々な任務を一緒にこなした。そのため兄弟のように仲がいい。

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