1-10 魔法学
なんだかどんどんエルダのキャラが変わってきたような…
晴れ渡る青空を見ながらエルダは窓側の席に座り、頬杖をついていた。
ちなみに現在は数学の授業中である。そんな時でもエルダは窓から外を眺めている。
季節も夏に変わりそろそろ蒸し暑くなってくる頃であり生徒が気分転換に席替えをしようと言い出して窓際の一番後ろという場所を確保したエルダはほとんど外ばかりを眺めている。
別に勉強をサボっているわけではない。空を眺め、なおかつ平和だなぁと心で呟きながら耳から入ってくる先生の言葉を理解し、ノートに書くという素晴らしい荒業をやってのけている。
天使だから、という理由だけでなく元々エルダの情報処理能力が高いからこそできるのだ。
「では、エルダさん。この問題を解いてみてください」
「…はい」
教師に名前を呼ばれたエルダは黒板にすらすらと答えを書いてまた自分の席に戻ると、再び外を眺めだした。
慣れとは恐ろしいもので、全く黒板をみていなかったエルダが完璧に答えを書いてしまったことに驚く者はもはや極少数であり。ほとんどが「まあ、エルダだからなぁ」という感じである。
すでに全校生徒が知っていることであり、先生達さえこの現状を見て仕方がないと言わせるほどだ。
実際エルダはほとんどの授業では窓から外を眺めるか、寝ている。寝ていても手はしっかり動いているのでもはやパソコンよりも高性能と言えるかもしれない。
午前中の授業全てをやる気のない形で受けるエルダだか、一つだけ真剣に取り組んでいるものがある。
「リリィ、午後からの授業は何だったかしら?」
「ああ、確か魔法学じゃなかったっけ?」
それを聞いた瞬間にエルダの顔色が変わった。そう、エルダが真剣に取り組んでいるのは魔法学、いわゆる魔術やそれに関係することを学ぶための科目である。
「エルダって本当に魔法学好きよね~」
リリィの言葉にエルダはムッとした表情を作る。
「楽しいじゃない。私は魔法が好きだし、オリジナルの魔法の研究にもなるしね!」
ちなみにエルダは現在新しい魔法の研究に乗り出している。色々と属性を混ぜ合わせてみたり二種類同時に使ってみたりしてみるが、中々上手くできない。
「う~ん何がいけないんだろ」
なんとか原因を探るが中々いい結果が浮かばない。
しかし、意外なところでその問題は解決した。
「よし、今から魔法学の授業を始めるぞ。今日は魔法の相性と多重発動についてだ」
「(ラッキー!丁度いい時にきたわ!)」
その後の話を簡単にまとめると、魔法には相性があり相性がいい魔法どうしを組み合わせることにより多重魔法と呼ばれる魔法を発動できるらしい。
例えば火と風の二つを組み合わせた場合はは火の魔法を風の魔法がサポートする形になりスピードや威力、範囲が格段に上がる。火だねに風を送るといきよいよく燃えるのと同じ原理だ。
ちなみにエルダ本人とエルダと契約したリリィには天使だけが使える光属性の魔法があるが、これは全ての属性と相性がいい。
「凄い、これなら一時間もあれば50個くらいはオリジナルの魔法が作れるわね…」
今のエルダは完全にオリジナル魔法の研究に没頭しておりリリィ以外の人が話かけても反応しないほどだ。
「エルダさん、授業終わりましたよ?」
「………」
シャーリーが話しかけるが反応無しである。
「…リリィさんよろしくお願いします」
「はぁ…仕方ないなあ」
リリィはエルダの耳元で何かを呟く。
「うわああああああああああ~!!」
するとエルダは顔を真っ赤にして飛び上がった。
「エルダ、授業終わったよ」
「リ、リリィ…あ、ありがとう…」
シャーリーやサイは何を言われたのか知りたがったがエルダが猛反対するので結局わからず仕舞いである。
寮に帰った後、エルダはリリィと共に草原に出かけると魔法の練習を始めた。
「えっと火は風と、水は雷、氷は土と相性がいいのよね」
リリィが今日の授業の復習をするかのように呟く。
「そう、まずは試してみましょう」
エルダは右手を真っすぐに伸ばして詠唱する。
<我が前に現れるは焔の嵐、フレアトルネード!>
すると目の前に炎の竜巻が現れる。普通に炎や風を単体で出すより強力だ。
「す、凄い…」
リリィは唖然とした表情をしている。
「成る程、確かに強力ね…」
エルダはどこか満足そうである。
「……あっ!ひらめいた!」
エルダがいきなり顔を輝かせたのでリリィは首を傾げる。
「ふふ、リリィ見てなさい!面白いもの見せてあげる」
そう言ってエルダは両手を伸ばす。
<重力に従い大地にひれ伏せ、グラビティ!>
すると目の前の空間が歪み突然直径十メートルくらいのクレーターができた。
「……なっ!」
リリィは思わず驚きの声を漏らした。
「エルダ、今のはどんな属性を組み合わせたの?」
「今のは光をベースにして雷と地を組み合わせたの」
リリィは首を傾げる。雷と地は相性が悪いはずだ。
「普通なら相性が悪いけど私達には光属性があるから、それを土台にして調節したのよ。これなら私達は属性の相性なんてあまり関係ないのかもね!」
リリィは驚愕する。もはや世界の理を無視した力である。改めてエルダは凄いと実感した。
ついつい夢中になりすぎて寮に帰ったのは夜中だった。玄関は閉まっているので空を飛んで屋上から中に入った。
しかし、このことが後に大変な騒ぎを起こすことを二人はまだ知らない。
明日から大学の部活の合宿が始まります。
はたして私は生き残ることができるでしょうか…
生きていたら執筆しようと思います。