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天使として…  作者: 白夜
10/49

1-9 契約

キャラクタープロフィール3


フィアナ・ルツ・フレイラル


年齢17歳

身長160cm


 長い金髪に茶色い瞳が特長のいかにもお嬢様みたいな感じの女の子。負けず嫌いで成績がエルダに負けていたので彼女をライバル視していた。しかし、彼女に助けられてからは密かに好意を抱いている。





 真っ暗な部屋で一人の女性が椅子に座っていた。


 見た目は20代前半くらいの美しい女性だ。漆黒の髪は立ち上がっても床につくほど長い。瞳もまがまがしい雰囲気をかもしだす程の漆黒。


「……あらあら、やっぱり普通の人間では駄目ねぇ」


 女は鋭い目つきで何もない空間を睨んでいた。


「忌ま忌ましい…この結界がなければ私自ら手を下すのに……」


 女はそう言うとその場から消えた。後に残るのは静寂のみ…










「……んっ」


 淡い眠りから目覚めてエルダはゆっくりと体を起こした。


 そこは見慣れた自分の部屋。それをぼんやりと眺める。


 ふと隣を見るとリリィが椅子に座ったまま眠っていた。


(そういえば私あのまま寝ちゃったんだっけ…)


 エルダは戦場の光景を思い出す。自分が奪った数々の命。本当にあれ以外に方法はなかったのだろうか…そう今でも思ってしまう。


 でも、私は選んだのだ。甘さはすてる。皆を守ると…


「……う~ん」


 しばらくしてリリィが目を覚ました。

まだ眠いのか目が虚ろである。


「リリィ、おはよう」


 リリィがエルダの方を向いてそのままぼーっとしていたがやがて意識がちゃんと覚醒したリリィは勢いよくエルダに抱き着いた。


「エルダァ~!」


「きゃあ!」


 そのまま押し倒されてしばらくリリィはエルダを離さなかった。


「よかったよ~!酷い怪我とかしてなくて」


「…うん、心配かけたね」


 エルダがリリィを抱きしめ返すとリリィは再び椅子に戻った。


「あの時は大変だったよ。だってエルダってば血まみれなんだから。どこかけがしたんじゃないかって心配したよ」


 エルダはリリィの言葉に苦笑いを返す。確かに殆どが返り血だが全く怪我をしなかったわけではない。


 実際に腹に剣を突き刺された。普通の人間なら間違いなくそのままあの世行きである。


「……痛かったな」


 エルダは小さく呟き腹を少しさすった。


「どうかしたの?」


「…いや、何でもないわ」


 エルダは改めて自分の回復力に感謝した。しかし、あれだけの深手を治療したわけだから当然以前のように血が欲しくなるわけで…


「ねぇ、リリィ?」


「何?エルダ?」


 リリィがエルダを見ると何やらもじもじと落ち着かないように体を動かしている。


「(はぁ~可愛いわぁ~)」


 リリィが危うく別の世界に行きそうになったところでエルダが決心したようにリリィを見ると口を開いた。


「その、血が欲しいの…」


 恥ずかしそうに赤くなりながら上目遣いでお願いをするエルダの姿は今のリリィの中の悪戯心を十分に刺激した。


「……って呼んで」


「……え?」


「お姉ちゃんお願いしますって言ったらあげるわよ?」


「……なっ!?」


 リリィの言葉にエルダは思わず顔を真っ赤にする。


「な、なな何でそうなる…のよ」


 リリィは意地悪な笑顔を向けるとわざと服の衿元を開いて見せる。


「ほらほら~欲しいんでしょ~?」


「…うっ……あ、ああ……そんな」


 本能が血を欲しがるのに近づけばリリィは巧みにそれを避けてみせる。そんな一種の生殺しみたいな状態にエルダはとうとう観念した。


「…うう~お、お姉ちゃん!私に血をください!」


「ぶはっ!!」


 先程の顔を赤くした上目遣いに加えて涙目とお姉ちゃん発言にリリィは鼻血を出してその場に倒れた。


「……これ、私が血を飲んだら貧血になるよね」


 結局リリィが復活するまでお預け状態だったエルダはリリィが復活した後、何かを言う前に即座に噛み付いて血をもらった。



 その後はいつものように髪の色を黒にして学校に行く支度を済ませ、二人で寮を出た。


 サイとシャーリーとルイス、フィアナに挨拶をして教室に入る。


 全員で一カ所に集まるとサイが最初に口を開く。


「それにしても、反政府軍の奴らもこんな時に来なくてもいいのになぁ」


「私としては二度と関わりたくないですわ…」


 フィアナはおそらく森での演習を思い出していたんだろう。


「でも、結局反政府軍を倒した人は誰かわからないんでしょ?」


 シャーリーの言葉にエルダとリリィが一瞬表情を歪める。


「確かに、実際の戦場は見ていないが、相当の人数だったようだ。それを一人で全滅させるなどにわかには信じがたい」


 淡々と告げるルイスを横目にエルダはため息をはいた。


 あの後、リリィがなんとか他の人達が来る前にエルダを連れて帰ったがどうやら戦闘を一部見ていたらしい人物がいたらしく戦ったのは一人で、しかも翼のある人だったとあちこちに言いふらしたらしいのだ。


 エルダとしては自分だとばれていないだけでもかなり良かったかもしれないがどうも不安でしょうがないのだ。


「変なことにならないといいけど…」


 エルダがそう呟くと同時に授業開始の合図が鳴った。





 学校が終わり、夕食を済ませた後、リリィとエルダは寮の屋上に来ていた。


「じゃあ、今日も行こうか」


「…うん」


 リリィの手をしっかり握り、エルダは翼を羽ばたかせて空に舞い上がる。


 最近日課になったリリィとの空中散歩だ。夜ならば人目につかないため二人はゆっくりと星空を見ながら空を飛ぶ。


「……やっぱり空を飛ぶのは気持ちいいね」


「…そうね」


 リリィの言葉にエルダは頷く。エルダの銀髪が月の光を反射してキラキラ光る。リリィは手を引かれながらそれを眺めていた。


「…ねぇ、エルダ」

 不意にリリィがエルダに声をかけた。


「どうしたの?リリィ」


 リリィはしばらく俯いて何も言わなかったがゆっくりと顔を上げた。


「この前の返事なんだけど…」


 エルダはその場に止まってリリィを自分と同じ高さまで引っ張りあげて体を支える。そうすると自然に抱き合うような形になった。


「私はね、家族がいないんだ…」


 リリィの言葉をエルダは黙って聞いている。


「皆、五年前に反政府軍に殺されたの」


 リリィは父と母と姉とリリィの四人家族だったらしい。


「いつもと同じような朝だったわ。私は元々小さな村に住んでたの。

 あの日は私はお昼ご飯を食べたあと一人で山に花を摘みに行ったの。村の近くの山には年中色々な花が咲いてる場所があってね…私はそこで花を摘んでるうちに眠くなっちゃって、起きたのはすっかり夕方だった。」


 リリィの抱き着く力が少し強くなる。


「私は急いで村に帰った。そしたら…村は無くなってた。跡形もなくね。ただ一面焼けた家と、人がころがってるだけだった…朝まで平和だった村は…もう、なくなってた…」


 リリィの声が震えてるのがエルダにはわかった。


「私は…それから親戚の人に引き取られて今まで生活してきたわ…そして今の学校に入った…周りの皆が羨ましかった…入学式にはちゃんと親や祝ってくれる人がいて…」


 リリィはエルダと向かい合う。


「入学してすぐに私の村を襲ったのが反政府軍だってわかったの。私は悔しくて必死に勉強して、いつか仕返しするんだって思ってた」


 エルダは黙って彼女を見つめる。


「そんな時にあなたに出会った。あの湖でね。そしてエルダを見てたら何だか今までの自分が馬鹿みたいに思えてきたのよ。

 エルダは誰かのためなら自分を犠牲にするような人だからさ…それに比べたら復讐なんて考えてる私は何だろうって考えたの」


 リリィは少し笑うと話しを続ける。


「今まで自分のことばかりで他人のことなんて考えたこともなかったのに…エルダに初めて噛まれた日にね、私も誰かの役に立てるって初めて気がついた。

 それを教えてくれたエルダが今まで以上に好きになって、エルダに一緒に生きてるくれないかって聞かれた時は本当に嬉しかった…だから」


 リリィはエルダを真っ直ぐ見つめて言う。


「あなたと…一緒に…生きていいですか?」


 エルダの答えは最初から決まってる。今更だというようにリリィを抱きしめる。


「もちろん。これからもよろしくね…リリィ」


 それを聞いた瞬間リリィの目から大粒の涙が零れた。しかし、リリィの表情はどこか満足そうだった。


「リリィ、手を出して?」


 リリィが右手を出すとそこに緑色のリングが現れた。


「これは私との契約の証だよ」


 エルダはリングをリリィの右手の薬指にはめた。


「…不思議、何だか暖かい」


 リリィはリングから暖かいものが流れてくるように感じた。


 そして、ふわりと体が軽くなり自然とエルダの体から手を離す。


「……あ」


 思わずリリィは声を漏らす。リリィの背中には純白の翼があった。エルダよりも一回り小さいが、確かにリリィの背中に繋がっている。


「……エルダ、私達…ずっと一緒だよね?」


「ええ、ずっと一緒よ」


 月を背にして二つの影が再び重なり合った。

 すみません、今回はちょっと駆け足でした。文章力なくてすいません(汗)


 誤字を訂正しました。たぶん大丈夫です。

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