里帰り
娘「あけおめー」
母「あら、正月早々誰かと思ったら」
娘「いやー、久しぶりに帰ってきたけど変わったねこの辺も」
母「まったくこの子ったら200年も帰ってこないで。親不孝なんだから」
娘「そんなエルフみたいな時間軸で生きてないよ」
母「あなたの母校もとっくに廃校になって」
娘「初耳なんだけど」
母「今じゃ高齢者の健康施設よ」
娘「セブンイレブンじゃないんだから」
母「ところでどうしたの急に。つまんない理由抜かしたら許さないから」
娘「正月だからだよ」
母「ママを失望させないで頂戴」
娘「大喜利厳しいな」
母「もう離婚よ」
娘「お父さんかわいそうだよ」
母「あなたお腹は?空いてるんじゃないの?」
娘「お昼食べられなかったからちょっと空いてる」
母「私はさっきカニを食べたわ」
娘「いいなあ」
母「羨ましいでしょ」
娘「マウントだったなんて」
母「冗談よ。イナゴでいいかしら?」
娘「やだよ」
母「まあこの子ったら金太郎みたいなわがまま言って」
娘「そんなイメージ無いけど」
母「そういえばあなたがよく行ってた駄菓子屋さん覚えてる?」
娘「あー田中商店?おばあちゃんが1人でやってたよね」
母「そうそう」
娘「今どうなってんの」
母「おばあちゃんが2人になってるわ」
娘「なにがあったの」
母「うん。まあ……ほら、世知辛い世の中だからねえ……」
娘「言い淀むのやめてよ。怖いから」
母「そんなどうでもいいことよりお父さん水虫になったのよ」
娘「今絶対そっちの方がどうでもいいから」
母「お父さんの存在そのものが『水虫』と化したのよ」
娘「噓でしょ」
母「嘘よ」
娘「嘘なの」
母「正しくはお父さんに宿るチャクラが宇宙の波動に触れ水虫となったの」
娘「ちょっとお母さんの方が心配になってきたんだけど」
母「あんたに心配されなくてももうとっくに狂ってるわ」
娘「自覚あるんだ」
母「そうね。外からはそう見えるわよね。でもね、それでも」
娘「うん」
母「あんた仕事はどうなの」
娘「ちょっとめちゃくちゃ気持ち悪いところで話題変えないでよ」
母「まだプラプラしてるんでしょどうせ」
娘「まあたしかに今は無職だけどさ」
母「もういい年なんだからそろそろあなたも落ち着いてバンドとか始めたらどうなの」
娘「逆にいいの?それで」
母「誰かいいギターとかいないの?いたら連れてきなさい」
娘「やだよ」
母「まあこの子ったら、たかしみたいなこと言って」
娘「知らない人だけど多分言わないよその人も」
母「それで?今日は何時までいるつもり?門限あるんじゃない?お家の人心配してない?熱いお茶お出ししましょうか?」
娘「すごい帰ってほしいやん」
母「もしかして泊まるの?」
娘「そのつもりで来てるよ」
母「でもあなたの部屋、今はたかしが使ってるわよ」
娘「ちょっと待って本当に誰なのたかし」
母「あなたのお兄ちゃんよ」
娘「せめて弟だったらまだギリギリ自分を納得させられたのに」
母「たかしベース出来るわよ」
娘「組まないから。たかしとは組まない」
母「そんなわがまま言うならもうお母さん一人でたかしと組んじゃうからね」
娘「いいよ」
母「まあこの子ったら」
娘「ところでさ、お母さん」
母「どうしたの?」
娘「実は大事な話があって」
母「どうしたの、怖いわね」
娘「わたしもさっき気付いたんだけどね」
母「引力の存在に?」
娘「ニュートンじゃないから」
母「じゃあなに?」
娘「今日、まだ大晦日じゃない?」
母「嘘でしょ」




