薄氷
瀬田と、意外な人物が過ごす冬の朝。
冷たい空気の中の、静かなひとときを…。
「寒い…寒すぎる…」
イヤーマフに手袋、マフラー、冬の装備は完璧なのに。
……ちょっと寒すぎない?
コンビニでコーヒー買って来るんだったな。
そういえば、昨日の天気予報では3日間ほど寒波で気温が上がらないって言ってたっけ…。
手袋をした手で鼻を触ると、なんとなく感覚が鈍い。
思わず手に“はぁ〜”っと息を吹きかけるが…。
手袋してる手に息吹きかけるって…頭回ってないな。
大きな溜息を吐きながらも、局へ行くために歩く。
「あっ、公園突っ切った方が…数秒はショートカットになるか?」
とにかく寒すぎて、暖かい場所が恋しい。
ほとんど変わらないのに、足はすでに公園へ。
「この時間、噴水止まってるのか…」
いつもはもっと遅い時間に出勤するから、止まってる噴水って珍しいかも。
そんな小さな発見に気を取られ、足が止まった。
「あっ、氷が張ってる」
静かな水面には曇りガラスのような氷が。
落ち葉が覗いている部分はこの朝の空気を閉じ込めたかのようだ。
日の出から30分ほど。
まだ上りきっていない白い光が氷に反射している。
キラキラとしたその光景に……思わず時間が止まった。
空気が冷たくて、さっきまで文句を言っていたはずなのに。
気づいたらしゃがみ込んで、水面を覗き込んでいた。
片手だけ手袋を取り、そっと、氷に触れる。
薄い氷は少し力を入れただけで割れてしまいそう。
そんな繊細な氷をぼーっと見つめる。
周りのノイズすらも消え、頭の中もスッキリしていく感じが心地いい。
「縁はもう溶けかけてるのか…」
氷と水のなんとも言えない境界線。氷なのに柔らかく感じるって、なんか不思議だよな…。
他の部分よりも、より、キラキラと光を反射していて…。
思わずスマホを取り出し、夢中で写真を撮った。
「瀬田君、こんなところで何してるの?」
びっくりして声がした方を見上げると…
「横川さん?おはようございます」
スマホを構え、笑いを堪えてる横川が。
え?もしかして……。
「横川さん…。一応、聞きますけど…。何か撮ってます?」
いまだにこちらへスマホを向けているっていうのが返事なんだろうな。
大きな溜息が漏れた。
「なんか、瀬田君が百面相していて面白かったからね。陸也に送ってあげると喜ぶかなって」
横川のことだ。ここで送らないでくださいって言っても無駄だろう。
再度、心の中で大きな溜息を吐いた。
今日の夜、絶対、久保さんに何か言われるな…。
もう、今日は家に来るなってメールするか?
でも、そんなことしたら局で絡まれる…。
だったら家の方が…まだマシだな。
ものの数秒で考えをまとめると、立ち上がった。
「横川さん。寒いんで、もう行きますね」
まだ笑いを堪えてる横川を置き去りにして、少しだけ早足に局へ向かった。
初めての組み合わせでしたけれど、どうですかね…?
ユズ的には、思いついた時に「え?」となりましたが…




