距離感バグってる幼馴染
距離感が近すぎる幼馴染の短編です。
五月。桜も全て舞い散った。
新生活にも慣れて、気が緩み始める頃だ。
そして、不思議と脳のやる気がなくなってしまう月でもある。
今日は暖かい。
ポカポカと暖かい日差しは昼食を終えた生徒たちを夢の世界に誘おうとする。
そんな穏やかな日に、とある高校の屋上で二人の生徒が寝そべっていた。
「青玄…ちょっと暑い、寝苦しい。」
「ああ、悪い。」
女子生徒は青玄と呼ばれた男子生徒の腕を枕にしている。
青玄は空いてる方の腕を女子生徒のお腹辺りに回し、後ろから抱きつくような形になっている。
そして女子生徒は抱きついていることを咎めるのではなく、それによって伝わってくる体温による寝苦しさに文句をつけていた。
「でも春花も重いぞ、腕痺れてき………ッいて。…顎しゃくれちゃうだろ。」
春花と呼ばれた女子生徒は最後まで言い切らせないとばかりに後ろ頭突きを青玄の顎にクリーンヒットさせる。
青玄は頭突きを食らった顎を撫でながら抗議の声をあげた。
大してダメージは入っていないようだ。
一方、春花は頭突きの反動が思ったより大きかったらしく、静かに後頭部を両手で抑えながら悶絶していた。
「この石顎め…。」
「丈夫な体をくれた両親に感謝だな。」
二人はこの高校に入学したばかりの一年生。まだ入学して一ヶ月程だが学校ではちょっとした有名人であった。
二人共注目を集めるのだが特に青弦の持つ白い髪は特に人目を引くだろう。
少したれた目尻にキリッと引き締まった口元。
常に眠そうな感じだが決して眠たい訳では無い。
そして春花は美しく艶のある黒髪を腰のあたりまで伸ばし、前髪は目にかからない所で綺麗に切り揃えられている。俗にいう姫カットだ。
深く黒い瞳には吸い込まれそうな錯覚さえ覚える。
小柄だがスレンダーで可愛いと綺麗を両立したような容姿をしていた。
「お!ここにいたのか青玄、探したぜ…って、ま〜たお前らはそんな……。」
「おお潤、なにか用か?」
潤という青年は青玄と春花のクラスメイトだ。
金髪と凶悪な目つきのせいでクラスメイト達から色々と誤解されがちだが心優しい青年である。
入学式の日、遅刻しかけて急いで学校に向かっていた際、同じく遅刻しかけていた青玄と春花と遭遇したのが初めての出会いだった。
以来この二人の御目付役のような位置に収まっている。
「『なにか用か?』じゃねぇよ。委員会の集まりがあるから昼飯食ったらすぐ指定の教室に来いって言ったよな?」
青玄は少しの沈黙の後答えた。
「忘れてた。」
「──想定内だよ!ほら、これプリントな。」
「いつも悪い。」
「そう思うなら次はちゃんと来いよ?」
「………。」
「黙んなや。」
潤は手に持っていたファイルを手渡す。
まだ付き合いの浅い二人だが、いい関係を築けているようだ。
「…青玄はたまに抜けてるから。いつもありがとうね、潤。」
「…たまに?」
潤は春花の言葉に一部引っかかりを覚えるが深くは追求しない。
「まぁいいさ。それ、ちゃんとプリント読んどけよ?」
「あぁ。」
「あともうすぐ昼休み終わるし、一緒に教室戻ろうぜ。」
「はいはい…っと?」
潤と一緒に教室に戻ろうと立ち上がろうとするが制服の裾を引っ張られる。
見ると春花がこちらに向かって小さな両手を伸ばしていた。
「……………………おんぶ。」
そしておんぶの要求。
「はいよ。」
春華の要求に青玄はためらいもなく首を縦に振る。それを見て潤は頭を抱えた。
「正直に言えよ?
お前ら、ほんとは付き合ってるんじゃねぇのか?」
「「…?いいや?」」
頭にはてなを浮かべ、口を揃えて言う二人に潤はため息混じりに言った。
「お前ら距離感バグってね?」