表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/44

第三十二話 探せ、焔閃姫と呼ばれし者を

俺はたちは、アルグレア帝国の西方に位置するバルグロスについた。

鉄と石の街が目の前に広がり、灰色の岩山が連なる山脈のふもとに築かれた要塞都市。


街の上空には煙突から立ち上る煙が漂い、武装した兵士と、筋骨隆々の冒険者たちが行き交う荒々しい雰囲気が漂っている。

俺はリィナの隣で、入国審査の列に並びながら周囲を見渡した。


神「ここが、アルグレア帝国……」


そう呟くと、リィナが少し緊張した表情で頷く。


リィナ「はい、ここが西方都市バルグロス……帝国でも一番、鉱山資源と武器製造が盛んな街です。だから、ちょっと治安は荒いけど……」


確かに、列の後ろでは、いかにも荒くれ者風の冒険者同士が揉めている声が聞こえる。

……まあ、絡まれたくはないな。


しばらく待つと、入国ゲートに辿り着いた。

帝国の兵士が立っていて、鉄製の巨大なゲートの隣には、魔鉱で造られた端末装置が設置されている。


「冒険者か。なら、アーカ・ノートをかざせ」


そう言われ、俺はアーカ・ノートを取り出す。

端末の上にアーカ・ノートをかざすと、淡い青白い光が走った。


【冒険者認証完了】


低く機械的な声が響き、ゲートのランプが緑に変わる。


「よし、通っていい」


まるで自分の元いた世界のような便利さに関心する。

簡単に終わったな……と思いつつ、リィナも同じようにアーカ・ノートをかざし入国を終える。


ゲートを抜けた瞬間、鼻を突く鉄と油の匂いが広がった。


まず目に飛び込んでくるのは、灰色の岩を積み上げた頑丈な建物群。

石造りの家々はどれも無骨で、装飾よりも耐久性を重視した造りが目立つ。

そこかしこに鍛冶屋の煙突が並び、白い煙が空へと昇っていた。


リィナ「うわぁ……すごい、ごつごつしてる……」


リィナがぽつりと呟く。

確かに、この街は全体が要塞のような印象を受ける。

大通りの石畳はしっかり整備されているが、路地裏へ入れば入り組んだ迷路のように見える。

行き交う人々も、一目で冒険者だとわかる連中ばかりだ。

大剣を背負った男、槍を肩にかけた女、魔法使い風のフード姿──。


エステリアとはまた違った印象を受ける街並みだ。


神「なんていうか荒々しい雰囲気だな……」


俺が呟くと、リィナは小さく笑った。


リィナ「うん。でも、その分、腕の立つ人も多いんだよ。装備とか武器も安くて質がいいし……」


確かに、道沿いには露店が並び、剣や鎧、魔鉱石を売る店が軒を連ねている。

中には、怪しげな黒いマントの商人が、密かに何かを取引している場面も見かけた。


そして──


「ゴォォォォン……」


低く響く鐘の音が街全体に鳴り渡る。

見上げれば、遠くの崖上に巨大な鐘楼が見えた。

どうやら、時間の合図らしい。


街の奥には、巨大な岩山が聳えており、その麓には採掘場らしき施設が見える。

そこから鉱石を運ぶトロッコが線路を走り、荷車が往来していた。


俺は再びアーカノートの取り出し、ギルドの位置を確認した。

エステリアでもギルドの世話になったし、色々と教えてくれた。

ここでもギルドで情報を収集しようと思った。


神「ギルド、ギルド……っと」


アーカ・ノートの表面を軽く撫でると、薄い光が走り、地図表示が浮かび上がった。

この街の簡易地図だ。

俺の現在位置は赤い点で示され、目的地を入力すれば、ルート案内もしてくれる。

もはやスマホだなと思いながら操作する。


リィナも同じようにアーカ・ノートを取り出し、二人で地図を確認する。

ギルドの位置は街の中央、鉱山へ続く道の途中にあるらしい。


神「よし、行くか」


リィナ「はい!」


俺たちは人混みを避けながら、大通りを進んだ。


途中、道端の露店では鍛冶屋が剣を打ち、商人が魔鉱石を並べて客を呼び込んでいる。

武器屋、鎧屋、回復薬の店──とにかく、冒険者向けの設備が充実している街だ。


リィナ「やっぱりバルグロスってすごいな……」


リィナは興味深そうに周りを見ている。


神「リィナは、バルグロスに来たことないの?」


リィナ「は、はい。私、国境を超えるような旅はしたことなくて…」


神「そうなんだ。冒険者ランクが高いから結構色々と行っているのかと思った」


リィナ「本当は、魔鉱細工の勉強のために色々と行った方がいいんですが。私、怖がりなので…」


てへっと恥ずかしそうに笑うリィナ。

そのあまりに可愛い笑顔に、マジ天使!と心のなかで叫ぶ俺――。


そうして歩いているうちに、巨大な看板が掲げられた石造りの建物についた。

《冒険者ギルド バルグロス支部》


頑丈そうな扉と、賑やかな人の声。

どうやら、ここが帝国の西方都市・バルグロスのギルドらしい。


神「よし……行くぞ」


俺はリィナと並んで、ギルドの扉を押し開けた。


重い扉を押し開けた瞬間、熱気と喧騒が俺たちを包んだ。


神「……賑やかだな」


思わずそう漏らしてしまう。

ギルドの中は広い石造りのホールになっていて、分厚い柱と高い天井が印象的だ。

木製のテーブルと椅子が並ぶ休憩スペースには、武装した冒険者たちが酒を飲み、談笑し、時には口論している。


壁際には掲示板が設置され、そこにはびっしりと依頼書が貼られていた。

エステリアのギルドは、もう少し綺麗な印象を受けたが、こっちは無骨で荒々しい印象だ。


リィナ「うわぁ……人、多いね」


リィナが少し気後れしながら俺の背後に隠れる。

俺とリィナは受付カウンターへと歩み寄った。

このバルグロスのギルドは、建物の無骨さに似合わず、受付カウンターはしっかりと整備されている。

魔鉱端末が設置され、職員たちがテキパキと対応していた。


カウンターの奥、対応しているのは、若い女性職員だ。

肩までの赤茶色の髪を後ろでまとめ、黒い制服に身を包んでいる。

表情はやや硬いが、冒険者たちの雑な態度にも怯まず、淡々と仕事をこなしていた。


神「すみません。シグレ=アマカゼっていう冒険者について聞きたいんだけど」


俺は、シグレについての情報を少しでも貰えないかと聞いてみる。


「申し訳ありません。通常、S級冒険者に関する情報は一般公開されていません。特例許可、または国の勅命がなければ開示できません」


しかし、返って来る答えはエステリアの時と同じだ。

リィナも隣で残念という顔で目を伏せている。


リィナ「やっぱり、S級冒険者の情報は教えてもらえませんでしたね…」


神「そうだな」


帝国全部をしらみつぶしに探すとなると、さすがに時間がかかりすぎる。

俺は、アーカノートで地図を開いて考える。

アルグレア帝国は、東西南北でそれぞの都市があり、その中央に帝都がある広大な国家だ。


神「せめて、バルグロスにいるかだけでも聞けたらよかったのに」


考えていると、きゅ~~~というかわいらしい音が聞こえる。

音の方に目をやると、リィナが恥ずかしそうに顔を赤らめてお腹に手をやっている。


神「そういば、腹減ったな」


俺は優しく微笑んで言った。


リィナ「うぅ…すみません…」


神「とりあえず、飯と宿を探すか」


リィナ「…はい!」


ぱぁっとリィナの顔が明るくなる。

シグレを探し出せるか不安はあるが、焦っても仕方ないと思いながらギルドを後にする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ