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第十七話 黒き叛徒 再び

フィーナ「やっと見えてきたね!」


そう言って指さした先に村が見え始めた。


神「あれが目的の場所か」


フィーナ「そう!やっぱり君を連れてきてよかったよ!途中危ない目にもあったけど、無事ここまで来られたよ」


そう言ってフィーナは笑顔を見せてくれた。


神「あ、ああ…当たり前だろ!」


俺は歯切れ悪く答える。

そういうのも理由があるのだ。



―――2時間前


俺はフィーナと目的の村に向かって歩いていると、森のほうから魔物の大群が走ってくる。

数はゴブリンが十数体とオークが4体ほどだろうか。

異世界系の王道()()()()()()()

俺は既に魔王を倒したことによる自信と余裕でフィーナの前にサッと出る。


神「ここは俺に任せて!」


そう言って俺は手をかざしてフィーナに下がってと合図した。


フィーナ「わかった。任せたよ!」


あ、大丈夫なの?とかはないんだ…。

フィーナのあっさりした反応に少しガッカリしつつも気を引き締めた。

数が多いな。出来れば武器で一気に倒せればいいけど、周りに武器になりそうなものがない。

なら―――。


神「白虎!」


神は白虎の形態に変化し、右足に力を溜めて一気に魔物の群れに突撃する。

――瞬間、神は自分の動きの異変に気付く。


なんだ…?なんか、体が…。

いや―――。


自分の違和感を振り払うように、魔物との距離を詰め、前の方にいるゴブリン数体を一瞬でぶっ飛ばす。

神を囲うように魔物は陣形を組み、オークが手に持つこん棒を振り上げ、殴りつけてくる。

それを片手で受け止める。

ズンという衝撃からまた体の僅かな異変に気を取られるが、間伐入れずにもう一体のオークがこん棒で横なぎに殴りつけてくる。

受け止めていたこん棒を払い、右拳で向かってくるこん棒を打ち砕く。

体勢を崩した2体のオークにすかさず一撃ずつ入れて倒す。

神の強さに他の魔物は後ずさりを始める。


神「逃がすか――!瞬牙乱舞(しゅんがらんぶ)!!」


白虎の如き猛撃を、目にも止まらぬ速度で連打し、残りの魔物を一気に吹っ飛ばす。

倒した魔物は黒い炎のような煙のようなものに巻かれ消えていく。


ふぅーと一息ついて元に戻る。


神「さっきのは……明らかに、動きが鈍かった……」


俺は自分の動きが前回と違うことに戸惑って手を見つめる。


白虎『おめーはダメージが抜けてないんだから動きが鈍いのはあたり前だろ!』


……だから、そういうの早く言ってよ…。

四神の後出し情報にうんざりしながため息をついた。


白虎『まあ、この程度の奴らならどうってことないけどな!』



―――現在


異世界来て3日で弱体化ってホントにどうなってんだよ。

そんなことを思いながらフィーナと村に入っていった。


村は異様な静けさに包まれていた。

鳥の声さえも聞こえない。人影もない。

木造の民家、風に揺れる洗濯物、家畜小屋。

そこに“人”の気配だけが、すっぽりと抜け落ちている。

いつもなら村の子供たちが駆け寄ってくる。荷車の音や農作業のかけ声が響くはずだった。


神「これは……」


明かな異常事態に、俺はフィーナを見る。

先ほどまで見せていた笑顔はなくなり、事態を把握するかのように真剣な顔つきだ。

そして、フィーナは静かに村の奥に向かって歩み始め、それを俺は後からついていった。


二人は慎重に村の中を捜索した。家々の扉は施錠されておらず、食卓には食べかけの皿が残っている。

脱ぎ捨てられた衣服、途中で止まったままの針仕事。

そこにいた“生活の痕跡”だけが残り、人々だけが忽然と消えていた。


次第に、空気が重くなる。

まるで、時間ごと攫われたかのような異常さ。


フィーナ「ジン、あれ……!」


フィーナが納屋の裏を指差した。見ると、そこに小さな身体が倒れていた。少女だ。

二人が駆け寄り、容体をみると多少の怪我はあるものの息はあるようだった。

人の気配を感じたのか、少女は薄れかけた意識を必死に起こし、うっすらと目を開けた。


「……た、すけ……て……ママも……パパも……」


少女は震えながら、かすかな声を漏らした。

その目には恐怖と絶望から光を失っている。


フィーナ「大丈夫だよ。パパもママもきっと助けるから!」


そう言ってフィーナは少女の手を握りしめた。

その時、淡い光がフィーナと少女を包みこみ、フィーナの瞳に不思議な光が宿る。

フィーナは少女から何かを読み取るようにじっと彼女を見つめる。

そして、光が弱まり消えるのと同時に少女も意識を失った。


少女が再び意識を落とした、その瞬間だった。


——カン。


金属が石を踏む、鋭く冷たい音が響いた。


「……おやおや、まさかこんな所にいたとはね」


その声は、すぐ後ろ。低く、よく通る。

だが不思議なことに、そこに怒気はなく、むしろ嬉々とした響きを帯びていた。


二人はすぐに振り返る。

俺はその男を見たときに、一瞬、自分の目を疑った。


ありえない―――。

だって、奴はずっと昔の―――。


実際に会ったわけだはない。

あの時、あの記憶に出て来た人物。


そして、そいつはそこに立っていた―――。

黒い外套を翻し、余裕の笑みを浮かべたヴァル=クロノス・ドレイガ。


神「お前は……ヴァル……」


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