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第十五話 それぞれの思惑(痛みを伴う)

――冥月の間(めいげつのま)――


場所は、世界のどこにも記録されていない――“逆理界”に存在する〈冥月の間〉。

地上では“星なき月”と呼ばれる禁忌の空に、裂け目のごとく浮かぶ漆黒の宮殿。


扉も、壁も、天井もない。

ただ広がる虚空の中に、螺旋にして無限の大玉座が存在する。


そこに集うは四人の魔王―。

策略の王、魔力の王、破壊の王、巨槌の王―。


「さて、皆さん。お集まりいただきありがとうございます」


最初に言葉を発したのは、策略の王 ゼル=ヴァレンティス。

黒と金のマントを纏い、黒い燕尾服を着た男だ。

釣り上がった目に口角をあげて、笑顔貼り付けたような顔をしているが、その目はとてつもなく冷たく鋭い。


「わざわざ俺達を呼びつけるってことは、それなりのことなんだろうな!」


荒々しい声をあげたのは、巨槌の王 ガルザード=ヴォルクス。

巨大な筋骨隆々の体躯に、身長は3mを越している。

鍛え上げられた肉体は金剛石のように硬く、鎧など不要とばかりに誇示している。

短く荒々しい赤髪と燃えるような赤い瞳が特徴的だ。


ゼル=ヴァレンティス「ええ…。これは我らにとってとても重要なことですよ」


物腰は柔らかく話しているが、その言葉には威圧的なものを感じられる。


ゼル=ヴァレンティス「まあ、実際に見てもらうほうが手っ取り早いですね」


そう言ってパチンと指をはじくと、目玉のような魔物が三体現れて魔王達の前で三角に配置し、映像を投影する。

ゼル=ヴァレンティスの眷属―メモリアルアイ(記憶の眼)―だ。


そこに映し出された映像は、影の王 スカー・ブルートと神との戦闘の一部始終だった。


ガルザード=ヴォルクス「……スカーが、追い詰められている……?」


ガルザード=ヴォルクスがわずかに目を細める。


「あっはー!ほんとに押されてる!……誰だろう、この人間? つよーい!」


そう言って椅子の上で両足をぶらぶら揺らしながら、興味津々に映像を見るのは、魔力の王 アルメリア=エクリプス。

見た目は少女の姿、琥珀色の髪に異国風の戦闘舞装(せんとうぶそう)に布地の魔術衣装ミックスし、動きやすさを重視しつつも、魔術的な意匠を融合。


もう一人の魔王、破壊の王 ヴァルド=カインは何やらブツブツとつぶやいている様子。

黒いフードを目深に被り、覗き出るガリガリの左手首には漆黒の革製バンドが巻かれ、そこには死の象徴である骸骨のチャームがぶら下がっている。

腰には細い黒革ベルトが巻かれ、小さな魔力結晶や暗黒のルーンがぶら下げ見た目はまるで死神ような風貌だ。


ゼル=ヴァレンティス「この戦いにより、影の王―スカー・ブルートは倒されました」


ガルザード=ヴォルクス「ヤツがか?つまり…ついに()()が召喚されたってのか?」


ゼル=ヴァレンティス「いえ、()()と我らは因果で繋がれています。もし、召喚されたのなら我らが気付かないはずがないでしょう」


ゼル=ヴァレンティスは、冷静に話す。


アルメリア=エクリプス「じゃあ、勇者でもない奴にスカーは倒されたってことぉ?」


小首を傾げながらアルメリア=エクリプス問いかける。

その目はキラキラとヒカリ、まるで新しいオモチャを見つけた子供のような目をしている。


ヴァルド=カイン「………チッ………ッ………………ス………」


何を言っているか聞き取れないが、ヴァルド=カインの独り言はさっきより激しくなっている。


ガルザード=ヴォルクス「結局何が言いたいんだ!?どんな奴であれ向かってくるなら倒せばいいだけの話だろ!!」


イラつきだしたガルザード=ヴォルクスが猛獣のように咆える。


ゼル=ヴァレンティス「これは()()ですよ。あくまで情報の()()――」


ゼル=ヴァレンティスは仮面を貼り付けた笑顔のまま言う。

しかし、その瞳にはすでに何かしかの策略を張り巡らかしたかのような、鈍い光を帯びていた。





そんな世界の情勢など知らずに、神は新たな脅威に出くわしていた。

フィーナの父親にかれこれ30分以上、無言の圧力をかけられながら、鬼の形相で睨みつけられていたのだ。


何これめっちゃ怖いんだけど、なんで無言なの?

魔王と対峙してるのと変わらないくらいの圧力なんだけど?

怖すぎてまともに目を合わせられないんだが?


フィーナ「もう!父さんったらそんなに睨まないの」


腰に手をあててフィーナが父親を窘める。


「だって、俺の溺愛する大事なフィーナたんをこんな男にまかせるなんて…!」


フィーナの父親は鍛冶師なだけあって、巨漢のいかつい顔つきだ。

そんないかつい父親が娘に対して野太い甘えた声で駄々をこねている。


フィーナ「しょうがないでしょ!父さんは仕事抜けるわけにはいないんだから!」


フィーナの叱責に父親はしょぼんとして、借りて来た猫のようにその巨漢を小さくする。


フィーナ「それに、私の見る目については父さんだって知ってるでしょ」


そう言われた父親は、ものすごく嫌々そうに説得に応じたらしい。


「む…娘を……ぐぅ…よろしく頼む…」


俺の手を取って父親は言ったが、その顔は般若(笑顔)となっている。

そして、お父さん、手がとても痛いです。

僕の手が出かける前に潰れたトマトになっちゃいます。


俺は父親のミシミシと音をならす想い(痛い)を受けて言った。


神「まかせてください!……ぅぐあ!!」


その言葉を聞いて、より一層強い想い(痛い)を受け、俺の手は潰れたトマトになるカウントダウンを開始する。

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