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第十三話 出会いそして――

知らない天井だ――。

人生で一度は言ってみたいワードだ。まあ、修学旅行で既に何回も言っているのだが――。

なんてバカなことを考えていられない。本当に知らない天井だし、俺は一体どうなったんだ?

俺は体を起こして周囲を見渡した。

簡素な部屋だけど綺麗で整然としている。

まず状況を知るために窓から外を見ようとベッドから出ようと思ったが、全身に激痛が走る。


神「ぬ…おおぉぉぉおお……」


朱雀「無理をしないでください。傷は癒したとはいえダメージは残っているのですよ」


そういうの早く言ってくれない?

激痛に悶えていると扉が開き誰かが入ってきた。


「あっ、目覚ましたんだ!」


扉から入って来たのは自分の同じ年くらいの女の子だった。

淡い金髪で腰までのふわふわロング、瞳は透き通る水色でいわゆる美少女というやつだ。


「家の前で倒れてるんだもん、びっくりしたよ~」


そう言って彼女は顔を覗き込んできた。

美少女にまじまじと顔を見られて、耳まで真っ赤。というか、もう全身が羞恥心で染まってるレベルだ。


神「き、君は――!?」


フィーナ「私?私はセレフィーナ・アルメリア。フィーナって呼んでちょだい!」


彼女はニカッと笑顔をみせた。

雰囲気は穏やかで静かな祈りのような空気を纏っているのに、話し方や仕草は活発な女の子そのものだ。

そのギャップがまたいい!俺の心に突き刺さる!


フィーナ「で、あなたの名前は?」


神「お、俺は宿樹 神!」


フィーナ「ヤドリキ…ジン…変わった名前ね」


フィーナは小首を傾げる。


フィーナ「それで、どうしてあんなところで倒れてたの?服はボロボロだったけど、大したケガはしてなかったし…」


神「そ、それは……」


なんて答えればいいんだ?

魔王と戦って死にかけた挙句、四神の力でここまで飛んできましたってか?

そんなの初対面の人に言ったところで信じてもらえるわけないし。


神が反応に困っていると、何かを察したようにフィーナは話を変えた。


フィーナ「ま、いいわ。それよりお腹減ったでしょ!」


神「え…?そういえば……」


目覚めたばかりで気にしてはなかったが、確かに腹が減ってる。

腹の虫も思い出しかのように大きな音を立てた。


フィーナ「あはは!ちょっと待ってて。今持ってくるから」


なんていい子なんだ。可愛いし。

そう、これだよこれ!異世界に来たならこういうシチュエーションがなきゃな!

異世界万歳!


神は両手で拳をつくって感激した。

そうしている間に、彼女はパンと温かいスープを持って部屋に戻ってきた。


フィーナ「はい、どーぞ。食べて!」


そう言って食事を俺に渡してくれた。

異世界での初めての食事。

フランスパンのような少し硬いパンにスープはシチューのようなものだろうか。

白いトロッとしたスープに野菜や肉が入っている。

ほんのり甘くすごくおいしい。

俺は空腹なのも相まってがっついて食べた。


フィーナ「そんながっつかなくても大丈夫だよ」


フィーナは半分呆れながら笑っている。


神「いや、すごくおいしいし、久々に食事した感じがして――」


フィーナ「まあ、そうだろうね。ここに来て三日は寝込んでたんだから」


フィーナの話を聞き、神はピタッと動きが止まる。

え?三日?寝込んでた?

いやいやいやいや、異世界来て初っ端なから三日寝込むほどの激闘するってどういうことだよ!?


白虎『結果的に生きてたんだからいいじゃねーか!』


朱雀『傷も癒していますしね』


玄武『結果オーライというやつじゃな』


青龍『ですね』


相変わらずこの四神たちは勝手なことばかり言っている。

せっかく異世界での感動を噛み締めたばかりなのに。


神はがっかりとした感じで肩を落とす。


フィーナ「どうしたの?」


不思議そうな目でフィーナが見つめてきた。


神「あ…何でもないよ。ははは…」


苦笑いしか出てこないとは、我ながら情けない。


フィーナ「それより、ジンはこれからどうするの?見慣れない服だったし、荷物もなかったから旅人ってわけでもないよね?」


そういえば、そうだな。

転生してすぐに魔王と戦って、四神の力でここまで転移してきたから何も持ってないや。

金もないし、装備もない。本当にどうしたらいいんだ?


フィーナ「特にアテもないなら私の頼み事を聞いてくれないかな?」


神「頼み事…?」


フィーナ「そう!ちょっと用事があって遠出しないといけないの。君、強そうだしその道中の護衛をお願いしたいんだ!」


フィーナは満面の笑みで手を差し伸べる。


神「護衛って…そんな、どこの馬の骨ともわからない俺に…」


フィーナ「そのどこの馬の骨ともわからない人を介抱して、食事まで提供したんだからそれくらいいいでしょ!」


また、覗き込むように顔を近づけてフィーナは言った。


フィーナ「それに、人を見る目には自信があるんだから!」


ウィンクをしながら笑顔で言うフィーナ。


可愛い…じゃない!

フィーナのその言葉はその自信のせいか、どことなく真実味があり妙に納得してしまう。


神「わかった。その頼み事、受けさせてもらうよ」


フィーナ「うん!よろしくね!」


フィーナは再び手を差し伸べる。

俺はその手を取った。

その瞬間、不思議な感覚を感じた。

運命――そんな感じだろうか、まるで世界が俺と彼女を繋ぎ合わせたかのようにフィーナとの出会いは必然だった気がしたんだ――。

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