第一章 03 プロローグ3
「さて、まずは、夢かどうか確認をしよう」
コウはヌイにそう提案した。ヌイはコウの横にぴったりと座っていた。不安で、怖かったからだ。コウはまだ、夢の中だと思いたいために提案した。
「うっ、うん。でも、どうするの?さっき握手できたから夢じゃないと思うんだけど?」
「うん。そう思うのは分かるよ。でも、僕はまだ、認めたくない。だから、この世界を夢と思ってる」
ヌイはコウの目が泳いでいたのを見て自分も夢ではないのか?という気持ちが再燃して来た。
「だから、・・・」
コウは言葉を詰まらした。顔を俯かせて手を合わせると大きく深呼吸をした。
「そのおっぱいを揉ませてくれ」
「え?」
ヌイはコウがなんて言ったのかを理解できなかった。あまりにもさらりと当然のように言ったから頭が理解できなかったのだ。また、コウが早口で言っていたのもある。
「そのおっぱいを揉ませてくれ」
コウは今度は顔を上げてヌイに顔を近付けて堂々とゆっくりと語った。
「は?バカなの?いくら、夢の中だと思っていてもやっていいこととやったらいけないことの区別ぐらいできるでしょ?」
コウは深く頷いていた。
「ああ。そこら辺の常識は当然、僕もある。だが、これが、夢だとしたら、もし、君のおっぱいを揉んだ時、寝ている俺は勃起して目が覚めるはずなんだ。だから、揉ましてくれ」
コウは至って真剣な目をヌイに向けて一言も噛まずに言った。ヌイは呆れて何も言えなかったのをいいことに更に言葉を重ねた。
「君もきっと興奮して濡れるはずだ。そしたら、この夢の世界から抜け出せると思わないか?」
「君はバカなのか?」
「至って論理的な思考だが?もし、君のおっぱいを揉んでしばらくこの世界が壊れなかったら僕はこの世界を夢ではなく現実と、つまりは異世界召喚と認める腹積もりだ」
「やっぱり、バカでしょ?」
「待て。僕はバカじゃない。至って真面目だ。夢の中だと思っていても、ちゃんと許可を取ろうとしている。つまりは、僕は紳士だとジェントルマンだと言えるだろう?」
「さすがに、怖くなって来たわ、君のこと」
ヌイは全く恥ずかしがらずにずっと表情を変えずに淡々と話すコウに本当に怖くなって来た。
「もしかしたら、美少女ゲームなのかもしれない。僕はこの子を攻略しないと目が覚めない的な。なるほど。だが、初めての僕には少々難易度が高い女の子だぞ」
「何言ってるのよ!」
「やっぱりだ。台詞がテンプレだ。つまりは、ガードが堅い女の子設定か。もしかしたら、この街に女の子を説得する道具があるのかもしれない」
ヌイは呆れてため息を漏らした。ヌイはもう異世界召喚されたと信じているがコウはまだ信じていないらしい。
まあ。異世界召喚はオートで始まるけど、ヌイたちは何かトリガーを引かないといけないみたいだから、混乱して夢と判断するのはいいけど、この子、バカ過ぎない?
「僕はコウ。名前は?」
コウは立ち上がって手を出した。ヌイはその手を流れに身を任せて一応取った。
「ヌイ。ヌイって呼んでだらいいわ」
「そっか。ヌイか。可愛い名前じゃないか」
コウは恥ずかしげもなく堂々と言った。だから、思わずヌイは照れたがコウの美少女ゲームと勘違いしているのは正さなければと思った。
「ヌイがコウに惚れることなんてないんだからね」
「やっぱり、テンプレだ。マジか。僕は異世界で童貞を捨てるのか」
ヌイはもう、呆れて何も言わないことにした。コウから手を放そうと思ったが、ヌイはこれからの異世界生活が不安でいっぱいだったため放さなかった。
「手を放さない。・・・増々現実味を帯びて来たな」
「はあ」
コウのこの独り言に増々呆れたが、今は人肌に触れていないと不安で仕方がなかった。
かくして、二人は時間の止まった異世界で探索を開始した。
今日、あと二回投稿します。