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いつか来るその日を待つ


霊安室の奥に、隠れたエレベーターがあった。

内なる声に導かれ、それに乗り込むと、落ちるような速度で箱が降りていく。

到着した先にはタラップがあり、その先に琥珀色の金属に囲まれたコクピットが見えた。

急ぎ乗り込むと、自分の脳裏に何かが書き込まれていくのが分かる。


「ガルフランAアンバー、デパーツ!」


何を言ってるんだと冷静に思う自分もいるが、ともかく掛け声と共に機体を発進させた。


射出口から出ると、そこは海中だった。多少陽が差し込むから、そこまで深くはなさそうだ。

脳感レーダーで、感覚的にどこで戦闘が行われているのかを感覚的に掴み取る。

南南西、二百メートル先に向かって全速全身で進むと、ほんの数秒でステルスカーテンに囲まれた現場に辿り着いた。


ひと目見て、鳴島Bが苦戦しているのを察する。


相手はこちらより二回りは大きい、マッコウクジラ型のメカが三体。

うち、一体は両腕を、もう一体は片腕を失い、Bが補修した跡がある。


しかし、二機とも何か甲高い音波のようなものを発している。

それがBの機体に何か影響を与えているようで、残りの一体の攻撃をかわすのに精一杯のように見える。

クジラ達は俺に気付いたらしく、こちらに向けて音波をぶつけてきた。


「クジラが歌ってる」


頭に声が響いた。


「B!?」


「電気系統に障害を起こす攻撃だ。

本来そこまで効く攻撃じゃないが、こっちの機体は戦闘中にガードシステムに損傷を受けちまったらしい。

A、右腰のウィップでクジラの頭部を破壊してくれ」


「ウィップ……これか」


俺は機体の右腰に装着された筒を抜くと、その先端から光る鞭が長く伸びる。クジラ達のコブに向かって、その鞭を思い切り振り下ろした。


弧を描く白い光がうねり放たれて、一体のクジラからコブをレーザーメスのように切り離した。容量をつかんだ俺は残りの二体のコブも刎ねていくと、そのすぐ後に、Bが手際よく切断面を塞いでいった。


途端に音波が消えて、周囲が静まり返る。

すでに両腕を失っている二体のクジラは抵抗をやめて、そのまま少しずつ深淵へと潜り始め、残りの一体は動きを止めた。


【フィアー砲、使用許可】


フェーヴの指令が頭に響く。


ガルフランBが、抱えていたフィアーライフルの銃口を逃げる二体に向けた。

俺もパニックに陥っている残り一体に向けて、引き金を引く。

三体のクジラ達は何かを恐れるように仰け反り、恐慌を起こし、闇雲に深海へと逃げていった。



◇ ◇ ◇



俺達は格納庫へと帰還した。


「やれやれ、とりあえず今日はお帰り頂いたな……」


溜息を吐きながら、鳴島Bが呟く。


「それより……お前さ、何でこんな生活してんだ?」

「さあ……俺にもよく分からない。

気が付いたらフェーヴが統括するシステムの歯車になってたんだ。それ以前の記憶もない」


「なあ……お前の、その、『鳴島イツキ』ってのは、本名なのか?」


「それも分からない。

昔は記号や番号で呼ばれてたけど、任務に着いたら、その名前になってた。

……もしかしたら名前を付けた人間に何かの意図があったのかもしれない」


「そっか……」


面倒なことに首を突っ込んでしまった……

そんな気持ちもないではない。


だけど、鳴島Aの自分と鳴島Bのコイツにどんな因縁があるのか……

海底生物のこともひっくるめて、全てを知りたい。

モヤモヤを残すよりも、スッキリさせたかったんだ。

8月30日を過ぎてしまったので、諦めかけていましたが、何とか完成しました。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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