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時が満ちるまで

「フェーヴって……、受付ロボットの?」


【あれは、ごく一部、且つ仮の姿に過ぎません。

ネットを介して世界中にまたがっている、自律式AI。それが私……

話を聞いてくださいますか?】


「分かった、話してくれよ」


俺が即答すると、鳴島Bが声を上げた。


「正気か!? 後戻りできなくなるぞ!」


しかしフェーヴは、それに構わず語り出した。


【この数年、得体の知れない海洋事故が増えております。

ネットワークを駆使して、私個人で調査しておりました。


そしてこの地上ではない場所、深海に、人類とは別の知的生命体を確認したのです。


科学レベルは、現時点で人類とほぼ同等。

知的レベルの高い生き物…ですが、彼らは人間とは全く異なる体内構造を持っています。

人類からすると化け物に見えるかもしれません。

もちろん逆の立場からも同じことが言えます。


いくら知能があっても、あまりにも形態の違う生物に対して、尊重し、付き合うことができるかと言うと…

現時点では、人類にも海底の生物にも、それは難しい状態です。

どちらも、まだまだ未成熟……

出会ってしまえば、全面戦争は避けられないでしょう。


しかし彼らは今、地上に非常に強い興味を持ち、時折やって来ます。

人が宇宙開発を目指して、何度もロケットを打ち上げるかの如く。


だから、どちらも生き物として成熟し、出会った場合に友好が成り立つ状態になるまで……

我々は彼等を出会わせてはならないのです】


突拍子もない話だった。


【私は現在、海洋生物を調査しながら、得た情報は人間には渡さず、独自に管理しています。

しかし、興味本位で海上まで近付く個体がいますから、それに対処していただきたいのです。


彼らの命は奪わず、攻撃力のみを奪い、地上で得た記憶やデータを消去して、本体は海底に帰す。

それが基本です。逃亡した相手は追跡し、海中で消去処理をしてください】


「俺にそんなことできるわけが…」


【ガルフランの操縦法は、あなたの体内のナノマシンに任せれば、自然と身に付くようになっています。

思考力、体力、反射速度もかなり上乗せされているはずです。

どうですか? 了承いただけますか?】


そこに鳴り出すサイレン。


【ミニフロートに3体の擬態メカが接近しています。体長20メートル級のマッコウクジラタイプです。

既存のパイロットに出撃を命じます】


「……了解!」


一瞬返事に戸惑いを見せたBだが、そのまま部屋を飛び出して行った。

その背中を見送りながら、俺は、ふと我に返った。


「ちょっと待てよ。20メートルって、さっきのメカよりかなり大きいぞ。

そんなの3体も、あっちの鳴島が一人で対処するのか?


【そうです。

ナノマシンが安定して定着しているのは、あなた以外彼しかしかいません。

戦闘中の様子を観察し、何かあったらすぐ回収します。

クジラサイズの相手とは、滅多に遭遇したことがありませんから】


「そんな……」


あいつのことは、正直好きでも嫌いでもない。

だけど、命の恩人だ。

自分と同じ年頃で、同じ名前で、なのにこんな日々を送っている……

それを知って、一人だけ日常に戻って、俺は普通の顔をして暮らせるだろうか。


わずかな時間なのに、何度も逡巡し、答えが見つからないのに、言葉だけが自然に口を突いて出た。


「分かった。俺も一緒に行く」


【了解しました。

我々はあなたを歓迎します、二人目のナルシマ・イツキ】


戦いの日々は、こうして始まったのだ。

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