遭遇
四体のシャチ型のメカに向かい合う、銀と碧のロボット。
ロボットは、左腰から筒のようなものを取り出し、握り締める。するとそこから光る鞭のようなものが現れた。それをそのまま、俺たちに銃口を向けていたシャチに向かって振り上げる。
ヴィイイイイン……
その熱と衝撃でシャチの両腕が一刀両断された。
どうやらコイツは味方らしい。
だが、そう思ったのも束の間、碧いロボットは即座に右の腰から短銃を抜き、その切断面に向け、弾を放った。
命中した部分に、何か粘り気のあるシーリング剤のようなものが広がり、破損部分を塞ぐ。
なんだ……? 補修した? コイツら敵同士じゃないのか?
訳が分からない。
そうこうしている間にも、一体のシャチが俺の方に向かって進んで来るのが見えて、叫んだ。
「だ、誰か! 助けてくれ!」
【民間人の救助優先】
そんな言葉が頭の真ん中を横切ると、急に硬いラバーのような感覚に包まれて、身体が宙に浮く。
俺と高橋はロボットの片手に掴まれて、虹色のカーテンの外に出され、体育館の出入り口の前に、そっと置かれた。
大きな腕が消えていき、辺りが急に静かになる。
「な……?」
身体を起こし、周囲を見回す。目の前の景色は、普段と変わらない、鉄柵と海の景色だけだ。
ロボやシャチどころか、虹色のカーテンも見えない。
「ちょ……何だよ、これは! さっきのシャチは……ロボットはどうしたんだよ!」
俺は立ち上がって、さっき自分達がいた場所へ駆け寄った。
すると、途中に見えない壁のようなものがあって、そこから先に進めない。
虹色のカーテンがあった場所らしい。
だが、目を凝らしてみると、向こうの様子がうっすら見える。
シャチどもは揃って両腕や、武器などを破壊されていた。
碧い方のロボットは、シャチ型のメカの攻撃に使われる部位を破壊しては、そのつど破損部分を直しているようだった。攻撃はできないが、移動はできる。そんな直し方だ。
そしてまたロボット宛らしき『命令』が脳内に響く。
【フィアー砲、使用許可】
白く鋭い光線がシャチ四体に浴びせかけられると、彼らは急にのたうち回り始めた。まるで何かに怯え、恐怖を振り払うかのように、次々に海へと飛び込んでいく。
【任務完了。ナルシマ機、帰還せよ】
ロボットも最初に切り落としたシャチの両腕を持ったまま、シャチメカの後を追うように、海中へと消えていく。
誰の姿も見えなくなったところで、フッと透明な壁が消え、俺はつんのめって、地面に膝をついた。
「何だったんだ、あれは……俺は夢でも見てたのか?
それに、ナルシマ機って…………
いや、まさか。まさかだよな……?」
混乱の中、眩暈がしてきた。
鼓動が早まり、少しずつ呼吸がし辛づらくなってくる。
発作……? こんな時に……
意識を失った俺は、その場にくずおれた。