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第25話「ツアーインジアルビダイア2」

 その後屋台での食事を終えたオレたちは一通り見回った。

 オレやジュリアーノはすっかり満腹になったのだが、ガイアとベルはまだまだ食べ足りないらしいので、2人は経津主(ふつぬし)に任せてオレたちは魔具などの店があるエリア散策していた。



「へえ、魔導書とかも売ってるんだね」



 赤いクロスの上に並べられた赤や青と色とりどりの分厚い本と、それらをまじまじと眺めるジュリアーノ。

 表紙にはそれぞれ炎や水、風なんかの模様が描かれており、いかにもな雰囲気を醸し出している。



「結構状態が良いな」


「1冊買ってみようかな。依頼の助けになるだろうし」



 そう言ってジュリアーノは水色の魔導書を1冊手に取った。

すると、商人の男が高めの声で意気揚々と話しかけてきた。



「お、お兄さんお目が高いねぇ。そいつぁアスガルドから取り寄せた特別な品でねぇ。大きな声じゃ言えねぇが、なんと神格級(しんかくきゅう)魔術が乗っているんだぜ」


「「し、神格級魔術!?」」



 神格級魔術といえば最上級を超えた魔術の最高峰じゃないか!

 ジュリアーノから聞いた話じゃあ、神々が神々のために作った超強力な魔術で、その威力は地形を豆腐のように軽々と削り取る程。

 あまりに膨大な魔力消費と難解な魔力構築で、どれだけ熟練の魔導士ですらあつかうことができないそうだが……。

 この本にはそれが載っている……!



「本当なら100万は下らない品なんだがね、ミフターフ人は魔術にほとんど興味が無いんで全く売れなくて、俺ぁもう腹ペコで死にそうだぜ〜……っつーことで、今回は特別に15万ルベルで譲ってやっても良いぜ」


「ええ、本当ですか!?」



 オレたちは一旦店前で相談をした。



「凄いよケンゴ!神格級魔術の載った魔導書が15万ルベルで買えるなんて、破格だよ破格!」


「でもなんか怪しいぞ。100万が15万だなんて妥協が過ぎるし、そもそもそんな凄い魔導書が露店で売ってるものなのか?」


「小説じゃよくあるでしょ、お店でセールしてた錆びた剣を磨いたら実は伝説の聖剣で、それを使って悪い魔物を無双するとか!きっとそういうことだよ!」


「ジュリアーノ……それはあくまでもフィクションの話で、現実じゃそんなことそうそう起きないんだぞ」



 懇願するように訴えるジュリアーノをどうにか説得しようと試みるが、キラキラとした瞳に押されてしまっている。

 そりゃオレだって成長を応援したい気持ちだってある。

 だが彼の頑張りを間近で見てきたからこそ、ガッカリさせるような思いはさせたくないのだ。



「それに、載ってたとしても神格級魔術なんて扱えるのか?どんな手練(てだ)れだって習得できないっていうのに……」


「まあ、そこは僕も無理があると思う。だけど、神格級魔術の載っているような魔導書なら、きっと上級魔術も最上級魔術も凄いものが載っているはずだよ!」


「そういうもんなのかぁ……」


「ちょいとお2人さん」



 相談が長引いたからか、痺れを切らした商人が口を開いた。



「内容が気になるんなら試しに読んでみてもかまわんぜ」



 そう言って商人はオレたちに本を手渡した。

 随分気前がいいじゃないか。

 そういうのならば遠慮なく……、!!

 本を開いてみればページの後半、確かに記された神格級の文字。



「まさか……本物……?」


「あたぼうよ」



 複雑な魔術構成が無数の文字の羅列で説明されている。

 オレとしては全く理解ができないが、ジュリアーノの方は本の内容に更に瞳を輝かせて食い入るように見つめている。



「ケンゴ……!」


「……うん……まあ本物なら止める理由も無いか……」


「やった!僕頑張るね!」



 しかし、手持ちじゃ15万ルベルには全く足りない。

 一度銀行へ行って下ろしてこよう。

 そう考えた矢先……。



「待ちな」



 背後から声がした。

 低めでよく通る女性の声だ。

 見ればそこにいたのは長身の女。

 で、デカいな、2メートル近くあるだろうか。

 褐色肌に赤みがかった黒髪の彼女は、鋭く座った目つきで商人を見据えながらゆっくりとこちらへ近づいてきた。



「げぇっ、アイツ……」



 彼女を認識した瞬間、商人はバツが悪そうな声を出して少し引け腰になった。



「その男を簡単に信用しちゃいけない。アンタ達は騙されてるんだよ」


「「ええっ!」」


「ちょっ!言いがかりはヤメロ!!」



 商人は慌てた様子で店から飛び出し、オレの手から魔導書をふんだくって女性へと突きつけた。

 そして大声でまくし立てながら自らの主張を意気揚々と述べる。



「この魔導書はなぁ、アスガルドのオーディンが記した正真正銘の本物だ。神格級魔術だってちゃんと乗ってるんだぜ、ホラ!」



 商人はそう言いって、彼女の目の前でバッと本を開いて見せた。

 オーディンってまさか北欧神話の……?

 神が記した書物であるのであれば、神格級魔術が記載されていると言うことにも納得がいく。

 そんな代物が露天で売っていることには確かに納得いかないが、材質や内容を見るに本物っぽいし、騙されてるとしてもそれと引き換えにできるくらいにはこちらの利益は大きいと思うが……。

 女性は本を手に取ると、ページをペラペラとめくった。



「確かに本物だね。けど、何処で手に入れたんだい?」


「うっ」



 ギクリとでも言うように、商人は肩を揺らして一歩下がった。

 しかし、そんなことはお構いなしにと彼女は一歩前へ出て商人へと詰めよる。



「そ、それはアレだ……も、貰ったんだよアスガルドの知人に!蔵から出てきたけど俺ぁ魔術なんてサッパリだーなんて言って、俺に送ってきたんだぜ!」


「え、でも取り寄せたって……」


「同じだろうがっ!!」



 オイオイオイ、だいぶ(きな)臭くなったぞ。

 本当に大丈夫なんだろうな。

 女性はため息を一つ吐くと、魔導書を商人へと返した。



「わかった。だけどね、1つだけ確かめさせて欲しい」



 そう言うと彼女は大きな巾着袋を取り出し、真っ赤なクロスの上にドカっと置いた。

 商人が袋の口を開けると、そこに入っていたのは大量の金貨。



「金はアタシが出す」


「えっ、でも……」


「良いんだよ。その代わり、もし嘘だったらアンタ分かってるね」


「も、もちろんだとも!」



 やりとりの意図がよく見えない。

 本を買えば彼の言っていたことが嘘かどうかが見抜けるのだろうか。

 金を受け取った商人はジュリアーノへと手渡した。

 すると、


バサッ


 なんと、ジュリアーノが掴んだ瞬間に亀裂が入ったかと思うと、分厚い魔導書は一瞬にして緑色の羽へと変わってしまったのだ。



「なっ!?」


「なにこれ!?」



 彼の手からこぼれ落ちた羽たちは地面に付くやいなや紫色に燃え上がり、全て跡形もなく真っ黒の灰になってしまった。

 予想だにしなかった事態に唖然とするオレたち。

 女性はやれやれと言った具合で灰をすくうと、商人の前へ突き出す。



「この本は図書館から借りたものだね。あそこの本は全てにトト神の魔術が(ほどこ)されているんだよ。返却期間を大幅に過ぎたり勝手に処分や売却なんかをすれば、本は自動的に図書館へと返却される仕組みなのさ」


「……くっそぉお……」



 まさか、借り物の本を売りに出していたのか。

 トト神……確かエジプト神話の神様だよな。

 エジプト神話はあんまり知らないから正直ジ⚪︎ジ⚪︎の知識しかないけど、こんな対策を施すなんてさすがは神だ。

 バックれられてしまえば終わりだもんな。



「それに炎が紫に燃え上がったね。つまりアンタは金輪際図書館を出禁になったってことさ」


「なっ!?そんなあんまりな!!」



 出禁という言葉を聞いて慌てた様子を見せる商人。

 そんな彼を見て女性はハァと大きくため息を吐いた。



「あほだねぇ、入口にも館内にも書いてあっただろう?『管理者の許諾無く販売、処分などの行為に及んだ場合は今後図書館への入館を禁止する』と。今後一切アンタは図書館へ出入りすることは出来ない。もちろん本を借りることもね」


「そんなぁあ……」



 商人は肩を落としてガックリと項垂(うなだ)れ、その場に膝をついた。



「あ、あの、すみません。ありがとうございました」


「気をつけるんだよ。ミフターフは商売についての法整備がしっかりしていないからね。だから騙されたとしても、九割九分は泣き寝入りするしかないんだ。この国じゃカモられた方が馬鹿になる」


「ええ……こわぁ……」



 完全に騙されていた。

 節約してたせいで店にはほとんど出向かなかったしな。

 いかにアウローラが平和だったかがわかる。



「さてと、この本たちも借り物だね?」


「……はい……」


「なら返しに行かないと……」


「それなら僕らが返しに行きますよ。ちょうどこの後に予定があるので」


「おや。それならアンタ達に任せようかね」



 オレたちは4冊ほど本を受け取った。

 全てが写本なせいで1冊1冊が分厚いし大きいので、分けて持ってもなお重い。

 女性はオレたちへ本を託すと、いつのまにかいなくなっていた。

 名前を聞いていなかったよな、また会えるかな。



「ケンゴォ“ー!!」



 背後から響く怒声。

 ガラついた声でオレの名を呼ぶのは、額に青筋と汗を垂らした経津主だ。



「ふ、経津主!?どうしたんだよ……」


「手前ェコラ!2度と俺様にあの2人を一気におもりをさせるんじゃねぇ!2度とだ!」


「ええ……」



 何故こんなに怒っているのか。

 聞けば、2人が食べ物の匂いに釣られてあっちゃこっちゃ自由に歩き回るもんで、経津主だけではとても収拾がつかなかったそうな。

 よく見れば経津主は右手でサンドイッチを食べるベルの襟を掴み、左脇に口へパンを突っ込まれモゴモゴしているガイアを抱えていた。




 そんなこんなで経津主たちと無事合流した後、オレたちは図書館へと足を運んだ。



「なんというか」


「しょぼいぜ」



『国立フォウスサピエンティア図書館』。

 世界中の書物が全て保管されていると言われている、神の管理するミフターフを代表する建造物の一つとのことだが……。

 なんというか小さい。

 いや建物自体は田舎の小学校くらいの大きさなのだが、“世界中の書物が保管されている”という割には小さい。

 それに見た目も素朴というか、木製の壁は美しい彫刻こそあるものの、主張が小さく質素だ。

 ただ建物自体のデザインはシンプルで美しいし、静かなイメージの図書館としてはとても合っているデザインと言えるだろう。

 ただ、宮殿があまりにも豪華絢爛(ごうかけんらん)だったもので、そのギャップに驚いているという感じだ。


 入口に受付などは無かったので、大扉をくぐって直接中へと入った。

 すると、扉を開けた瞬間に広がる本の森。

 床には2mほどの本棚がいっぱいに立ち並び、壁にもびっしりと本が並んでいる。



「すごい本の数……」


「こんなに広いのか!?」



 建物は長方形だったのに内部の作りは正方形に近い形で、また周りには通路らしきものが見え、人々が行き来していることからまた更に別の部屋があることが予想される。

 これだけの広さを持ってまだ部屋が続くのか!?



「よし、ここからは自由行動にしよう。とりあえず5時にはここへ集合だ」


「おう」



 オレはガイア、ジュリアーノ、ベルの3人と図書館の中を散策していた。

 入口の部屋は主に文学エリアで、幼児向けから青年向けまで実に様々なジャンルの本が置いてあった。

 いくつか薄めのを手に取って読んでみたが、この世界ならではの価値観や感覚で書かれているので、オレにとってはとても新鮮でどれも面白い。

 アウローラで読んだ図鑑なんかは写本が主だったけれど、これは単行本くらいのサイズだしたぶん印刷なのかな、楷書文字が綺麗で読みやすい。

 製紙技術も意外に良いもんで、少し黄ばんだ色合いと時々の掠れを除けば前の世界のクオリティにも劣らない。

 インクが青みが勝っているのが少し不思議なところだが。



「え〜、『199X年、世界は神々の炎に包まれた。だが、人類は死に絶えてはいなかった。』……」



 なんだろう、ものすごく既視感がある。

 記憶をまんま保持したままの転生ってことはないだろうし、これが断片的な記憶の弊害(へいがい)というものなのだろうか。



「お、料理本もあるのか」



 この世界の料理本は基本的に写本なので、前の世界のものとは違って写真ではなく挿絵が描かれている。

 ベルが興味津々な様子で本を(のぞ)き込んできた。

 この食材ならミフターフでも手に入りそうだし、1冊くらい借りて行って作るのもアリだな。

 それにオレ自身料理のレパートリーを増やしたい気持ちもある。

 その時、隣で文学書を読んでいたジュリアーノがハッとした顔でオレの肩を叩いた。



「そうだケンゴ、僕ら本を返さないと」


「あ、そうだった」



 しまった、風呂敷(ふろしき)に包んだままですっかり忘れていた。



「本ってなぁに?」


「屋台で返すように頼まれたんだ。カウンターは確か無かったよな…」


「職員さんに訊こう。ええっと……あ、いた!」



 ジュリアーノの目線の先には、脚立の上で本棚を掃除する男の姿があった。

 浅緑色(あさみどりいろ)の髪に金色の丸メガネをかけ、長いローブの袖を押さえながら棚に溜まった埃を小さな(ほうき)でパタパタと落としている。

 彼が職員で間違いないだろう。



「あの、すみません。本を返却したいのですが」


「ああ」



 男はそう返事をすると、箒を袖の中にしまって脚立から飛び降りた。

2mもある本棚の上に手の届くほどの高い脚立。

 そこから男は飛び降りたのにも関わらず、着地はとても柔らかく、コツンという靴の音だけが静寂広がる図書館の中に落ちただけだった。

 ずいぶんと身軽なんだな。

 オレがそんな関心の目を向けていると、男はローブの埃をぱっぱと叩いて言った。



「良いか」


「あ、はい。お願いします」



 オレが風呂敷から本を取り出して男へと渡すと、男の手に触れた本たちがいきなり宙を浮き出した。

 魔術も使えるのか。

 ……何をしてるんだ?

 男は1冊1冊を指先でチョンと触れて何かを確認しているようだった。



「うむ、問題ない。他に用は」



 え、あ、終わり?

 これで良いのか……?

 そういえばさっきから表情が一切動いていない。

 声の抑揚も全然無いし、ずいぶんと無愛想な職員だな。



「あ、あの、その魔導書たちってどこにあるんですか?」


「魔導書エリアは第五書庫の西側の棚の約14列が全てそうだ」


「全てですか!?」



 このサイズの本棚で14列って、いったい何千冊の魔導書があるっていうんだ。



「そうだ。『第五書庫』と書かれている通路から行ける」



 男はそう言って天井を指差した。

 その方を見上げてみれば、透けた緑色の『第五書庫』という文字と矢印が頭上に浮いていた。

 これも魔法だろうか、便利なもんだな。

 矢印に従って通路を進み第五書庫に行ってみれば、やはりこちらにも広がる本の森。

 しかしこちらの本棚に並べられているのは、図鑑のような分厚い本ばかり。

 その中でも西側のエリア、焦茶色の本棚に並べられた色とりどりの魔導書たち。



「うわあ!すごい!」



 ジュリアーノは興奮冷めやらぬ様子で「夢みたいだ!」と言って1冊を手に取り、水色の重厚な表紙を開いた。

 その中に記されるのは果てしなくびっしりの文字の羅列。

 露天で見た時もそうだったが、オレには全くもって内容が理解できない。

 しかしジュリアーノときたら、「なるほど、こんな方法が……」「これが聖地アスガルドの……すごい!」といったことを呟きながら、キラキラとまるで宝石のように輝かしい瞳で読み入っていた。



「ジュリアーノは本当に魔術が大好きだね〜」



 確かに、それ以外でもジュリアーノは宮殿じゃ修行や任務以外の時間はほとんど読書に(いそし)しんでいるほどの本の虫だ。

 本×魔術。

 好きなものと好きなものの掛け合わせを大好きにならないわけがない。

 そんな彼の様子を微笑(ほほえ)ましく眺めていたその時、背後からコホンッという何者かの咳払いが聞こえた。

 振り返りギョッとしたオレは、すぐにジュリアーノの肩を叩く。



「お、おい、ジュリアーノ!」


「え?……あっ」



 そこにいたのは、先ほどオレたちが本を返却した丸メガネの職員の男。

 男は相変わらず無愛想で、無表情のまま口元で人差し指を立てると「図書館では静かに」と一言だけ言って去って行ってしまった。

 い、いつの間に……ていうか、第一書庫にいたんじゃないのかよあの人!

 移動するの早くね?

 まさか着いてきた……ワケじゃないよなぁ。

 どちらにしろ、驚きで彼の顔が脳裏にハッキリと焼き付けられてしまったことには変わりないが……。




 その後一通り本を堪能した後、オレたちは図書館を後にした。

 オレとジュリアーノ、経津主がそれぞれ1冊ずつ本を借りた。



「経津主、小説とか読むんだね」


「どういう意味だコラ。俺様にゃ合わねぇってか?」


「そうじゃないよ。咲耶(さくや)先生の本は僕もよく読むからさ」



 経津主が借りたのは『サメに喰われた漁師の息子、転生したら最強魔導師ヤクザで海の神になりました』というタイトルのライトノベル。

 コイツがラノベを読むということ自体意外すぎるし、まずこの世界にこんなバチバチのがあることに驚きを隠せない。

 著者・咲耶華宰( さくや げいさい)

 ラノベ好きのオレとしては機会があればぜひともお会いしてみたいものだ。



「そう言うお前は何借りたんだよ」


「僕はね、魔導書。最上級魔術に挑戦してみようかなってね」



 そう言って水色の分厚い魔導書を見せるジュリアーノ。



「ッハ、魔力足りんのかよお前」


「昔の僕とは違うんだよ?今でも魔力増やす修行は続けてるんだからね!」



 ジュリアーノの魔力は昔より向上したといえど、普通の魔導師よりも少ないことには変わりない。

 彼の師匠であるフィオレッタいわく、こればかりは生まれつきのものだからどうにもならないんだそう。

 ただ伸び代が一切無いというわけではないので努力次第で増える可能性があるんだとか。

 実際、2年間修行を続けたジュリアーノの魔力は上級魔術を数発撃っても切れないほどには向上した。

 それに、フィオレッタがジュリアーノは魔力構築が特出して上手く、覚えも早いと言っていた。



「ジュリアーノならきっと使えるようになるさ」


「そうだよジュリアーノ!応援してるからね!」


「が、がん、ばれ、れ」


「ありがとう。僕頑張るよ、みんなの役に立てるように」



 皆に鼓舞されジュリアーノのやる気がみなぎる。

 今日の観光は成功だ。

 たった一日の旅であったが、皆のモチベーションは明らかに向上している。

 

 ミフターフへ飛ばされてはや1ヶ月、もう右も左もわからなかったあの頃とは違う。

 オレたちは今、このアルビダイアの真ん中で営みを続けている。

 全ては目的地『鎧銭』を目指すため。

 そしてそれはガイアの体を取り戻すため。

 道のりは長い。

 だが足は着々と進んでいる。

 このまま全身全霊で旅を続けようじゃないか。

 出会いの(おもむ)くまま、運命の導くままに。

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異世界転移
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