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おいしいものをおいしくたべさせたい

作者: xoo

 朝の番組で、とろみをつけられる飲料の自動販売機が紹介されていた。以前よりネットニュースで存在は知っていたが、地上波のそれもワールドビジネスサテライトとかがっちりマンデーじゃなくZIPだから一般の人に紹介されているなあ、時代は変わったなあ、と感動していた。妻は、「こんな自動販売機、いるの?」と言っていたが、必要な人、というより有ったらいいな欲しいなって人はそれなりの数がいると思う。

 飲み物にとろみをつける理由。食感を変えるとか保温性を高めるとかもあるが、この場合は飲み物で咽せないためである。私たちの大部分は、食べたり飲んだりした時に大抵は咽せない。咽せるのは、慌てて食べたとか一気に食べ物を掻っ込んだとか、飲み込むタイミングで笑わせられたとか、つまりは正常な嚥下ができない状態になった時である。一方では、これらのアクシデントがなくても病気や加齢により嚥下機能が損なわれた人が一定数いる。食べ物や飲み物にとろみをつけることで、咽頭期での嚥下反射(気管の閉鎖+食道への送り込み)のタイミングを合わせやすく出来る。この用途で、病院施設や在宅療養では増粘剤(とろみ剤)が使われ、ドラッグストアなどでも普通に入手できる。

 では出先の食べ物飲み物はどうしようもないのか。増粘剤(とろみ剤)を利用すれば自宅と同様に対処できるのだが、物によっては混ざりにくかったりダマになる心配もある。混ぜるためにスプーンとかマドラーも必要だし。しかし飲料の自動販売機でとろみ機能があれば、カップで販売されたものをそのまま飲むことができる。便利だし、同行の家族友人と一緒に飲むことが出来る(この視点は私も欠けていて、APEX社の紹介ページで気づかされた)。


 食べ物飲み物で咽せないためには、1回に口にする量の調整も重要である。私たちの生涯では病気や加齢じゃなくても咽せやすい時期がある。それは離乳食の時期。

 離乳食は食べる機能の発達に合わせて食物の形態もトロトロペーストから固形のものに変わっていく。ただ最初は口の中に入れた物を全量そのまま飲み込むので、食べさせる人が量を調節しなければならない。これは飲み物も同じで、哺乳びんの場合は月齢に合わせて数種類の乳首が準備され、一口量を調整できるようになっている(ビーンスタークのように1種類のものもあるが、へたり易いな、と感じた)。コップ飲みできるようになってからも、夢中でゴキュゴキュ飲んでは咽せて吹く、なんてのはよくある話である。

 上の子どもが4ヶ月か5ヶ月ぐらいの時、おっぱいでも哺乳びんでも上手く吸えなくなったことがあった。頑張って飲もうと吸おうとしているのだが、吸えない。お腹が空いて子どもは泣く、親もオロオロして半泣きだった。病院に行くにも夜遅いし、何か変わったことあったっけ?と思い当たる節を探していたら、「先月、ポリオの予防接種をした」と思い当たった。当時、ポリオの予防接種は生ワクチンの経口投与だった(2012年9月より現在の注射による不活化ワクチンに切り替わった)。育児雑誌やネットの情報を漁ると、「ポリオの予防接種1ヶ月後におっぱいを吸う力が落ちることがあります(数日で回復する)」とあった。これならば救急外来に駆け込む必要はないな、と判断したが、お腹を空かせてなく子どもはどうにかしてあげたい。で、ミルクをコップ飲みさせることにした。紙コップに少量入れ、一口ずつ飲ませる。目を爛々と輝かせていた子どもは、お腹がいっぱいになって、寝落ちした。8ヶ月か9ヶ月の時にも同じことがあったが、2度目は慌てずに済んだ(離乳食も始まっていたし)。


 離乳食時期から自分で食べるようになった初期、子ども用のスプーンは一口量に合わせたサイズを使う。また、スプーンを口の奥に突っ込みすぎないようにストッパーをつける。スプーンの柄がオフセットされているものもある。これらの工夫は発達中の子どもだけでなく、介護が必要な人にも同じようにされる。当たり前と言えば当たり前なのだ、子どもの摂食機能は低いものから高いものに発達するが、病者高齢者は高いものから低いものに発達するのだから。来た道、と、行く道。

 障害がある子どもの摂食機能に興味があって読んだ本の中に、「平らなスプーンを銀職人に作らせた熱心なお母さん」の話があった。障害のある子どもは一口量の調整を親が行い、食べ物を舌の先に載せる。ただ、口の中にスプーンを入れられた瞬間に歯をガチッと噛んでしまう子どもがいるので、窪みが小さい平らなスプーンが望ましい。簡易的にはプリンやヨーグルトのスプーンが使えるが、プラスチックなので破損の心配がある。また、乳児でない年齢になった子どもには、(離乳食期用の市販品があっても)一口量が小さすぎる。そこで子どもにあったスプーンをオーダーしたのが「熱心な」という話、だったのだけど・・・色々とモヤモヤした記憶もあるなあ。


 日経ビジネスオンラインを介して知った本で、料理研究家のクリコさんが書いた「希望のごはん」という本を、いま読んでいる。口腔底がんで食べ物を噛む機能を失った夫のアキオさんのために、噛めなくてもおいしいご飯を作る妻のクリコさんの話。ニッチな、でも当人たちにとっては全てな、愛の話。

 朝コメダしながら読んでいたら胸がいっぱいになって、途中で止まっています。いやヘンだなあ、たっぷりサイズのブレンド&モーニングセットにホットドックくらいでは、まだまだ余裕のはずなのに。

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