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第68話「リアーヌをナンパ?③」

 ダンを好きになったという、リアーヌの告白。

 だけど……

 ナンパして助けたなんて、話は『とんちんかん』だ。

 

 当然だが、エリンはダンがナンパするなんて嫌なのだ。

 でも、リアーヌはとても嬉しそうである。

 辻褄つじつまが全く合わず、エリンにはまだ、話が見えない……


 不可解に思ったエリンは、じっくり詳しい話を聞こうと身構えた。

 一方、自らの記憶を呼び覚ましながら、リアーヌは話し続ける。


「私をさらおうとしたのは、普段から評判が悪い冒険者クランでした」


「悪い冒険者?」


 エリンが聞き直すと、リアーヌはいかにも不快そうに言う。


「ええ、街中で暴れたり、女性に絡んだり無法者として恐れられていました……でも、悪さをするくせに、ずる賢こくて衛兵の目を巧くすり抜けて……とんでもない奴らでした。私、たまたま目をつけられたようで、何かにつけて誘われていましたが……相手も相手だし一切断っていたのです」


「当然! そんな悪人男に女子は絶対惚れない」


「ええ、私だって、あんな奴らは大嫌いでした。だけど相手が、とてもしつこかったので終いにはアルバンさんも怒って出禁にしました」


「デキン?」


 エリンは、首を傾げた。

 聞き慣れない言葉である。


 すかさず、リアーヌが微笑んで『解説』してくれる。


「はい、出禁とは、この店……勇者亭へ出入り禁止って事です」


「成る程、出入り禁止。大いに納得、当然だよね!」


 そんな奴らが店内に居たら、美味しいご飯だって不味くなる。

 大きく頷き同意したエリンへ、リアーヌは話を続ける。


「ですね! 幸い私はこの店に住み込みなので、ひとりになるのは危ないと思って、アルバンさんが一緒の時以外は暫く外出も控えていました」


「うん、当然、危ないよ」


「ええ、ですが……ある日、たまたま食材が切れてしまって……」


「食材が? じゃあ、料理が作れない?」


「はい! アルバンさんは予約の入っていた大事なお客さんに出す為に、どうしても必要だと……悩んだ末に、私に留守番を頼んで市場へ買い物に行きました」


 護衛役であるアルバンが居なくなる……

 と、なるとリアーヌは?


「留守番? それ……危ないよ!」


 エリンが思わず声を出すと、今度はリアーヌが頷く。


「ですよね……出禁なので奴らは店内に居ませんでした。ですが、店内に居た誰かに、お金を掴ませていたらしくて……アルバンさんが居なくなると、奴らがどこからともなく現れて、お店の中へ踏み込んで来たんです」


 出禁になった自分達だとリアーヌを見張れないので、金で人を雇い監視させるとは?

 

 どこまで、小賢しく愚かな奴らなのだろう。

 どこまで、女に粘着する下衆どもなのだろう。


 エリンは、ムカムカしながら問いかける。


「最低! 悪知恵働くね、それで?」


 リアーヌが、絶体絶命の危機!

 それで、どうなったのだろう?

 状況は?

 

 気になるエリンは、先を知りたがった。

 リアーヌも頷き、応えてくれる。

  

「はい! 奴らは大人数で無理やり私を連れ出そうと、危ない雰囲気になったのですが……たまたま居合わせた、クラン(フレイム)の方々が私を守ろうとしてくれました」


 クラン(フレイム)……

 リアーヌから、聞いた事のある名前を告げられて、エリンが微笑む。

 冒険者ギルドで会った、チャーリーを始め、人懐っこそうな風貌の男達がエリンの脳裏に浮かんで来る。


「クラン(フレイム)? チャーリー達だ、それ」


「エリンさん、ご存知でした? チャーリーさん達?」


「うん、昼間会ったよ、とっても温かかった」


 とっても温かい……

 エリンの『表現』を、聞いたニーナが微笑む。


「ええ、クランフレイムはこの店の常連で、クラン名通り、温かく優しいし、勇敢で良い人達です、私の危機ピンチに見て見ぬ振りなんかしませんでした。普段は酔っぱらって、私のお尻を触るとか、ちょっとエッチなのが玉に(きず)なんですけど……」


「え? お尻を触る? うわ! 嫌だなチャーリーって、確かにエッチかも! それで、それで」


「はい! その悪い冒険者っていうのが、実はランクB、ランカーの猛者達で……ランクCの チャーリーさん達、相当酔っていましたし、実力を出せずにあっという間にのされちゃったんです。思い切り殴られて、痣が出来るくらい怪我もしちゃって……私の為に……本当に申し訳なかったです」


 リアーヌは、とてもすまなそうにしていた。

 エリンはチャーリー達が気の毒だと思いながら、『自分の見立て』が間違っていなかったことが嬉しい。


「偉い! チャーリー達、立派な男子だよ! リアーヌを守る為に頑張ったんだ、そしてその極悪人共が偉そうに勝ち誇ったところに、もしかしてダンが登場?」


「そうなんです! ダンさんもチャーリーさん達と飲んでいて、だいぶ酔っぱらっていました」


「そうなんだ、ダンは酔っぱらい!」


「はい、でも私……思わずダンさんへ『おにい、助けて』とか叫んじゃって! 今から考えると、怯えて相当混乱していたんですね」


 死んだ兄の面影を、リアーヌはダンに求めたのだろう。

 いつもピンチになると、助けに来てくれた唯一の肉親だった兄を。


 エリンは、「そっ」と聞いてみる。


「でも……もしかしてダンが似ていたの? リアーヌのお兄さんに?」


 しかし、リアーヌはきっぱりと否定する。


「いいえ、ダンさんの顔は全然似ていません……私、いつもお兄に助けて貰っていたので、つい……」


「そうだよね……」


 口ごもるエリンに向かって、リアーヌが一転悪戯っぽく笑う。

 どうやら、思い出し笑いのようだ。


「それでダンさんったら、その悪い冒険者達を完全にスルーして……私に向かって『俺と遊びに行かない』って? うふふふふ」


「わぁ! それ、やっぱりナンパだぁ! ダンの超エッチ、飢えた狼」


「あははは! 何ですか、その飢えた狼って? 可笑しいっ!」


 エリンの表現が、言い得て妙で、相当面白かったのだろう。

 

 リアーヌはつい、大笑いしてしまったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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