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第31話「仲直り①」

 今朝も、ダンとエリンは仕事に励んでいた。

 ペット?の『犬』『猫』、そしてニワトリに餌をやり、続いて畑の手入れをしている。


 昨夜は、それぞれ自分の身の上を話した。

 『距離』は更に近くなり、お互いを思いやれるようになった。

 ダンもエリンも、ふたりで頑張って助け合い、共に生きて行こうと改めて思うのだ。


 エリンが大きな声をあげながら、必死に草をむしっている。


「わぁ! 昨日むしったのに、もうこんなに生えているのっ? やっぱりアマイモン様の力って凄いんだね」


「そうだな」


 全世界における、植物の繁茂を司る大地の上級精霊が地界王アマイモン。

 ダークエルフ達の守護を担う大地の精霊(ノーム)達の支配者だ。

 高貴なる4界王のひとりと呼ばれている。


 ここで、エリンが提案する。


「でもエリンもダンも土の魔法が使えるから、ちゃちゃっと魔法で雑草が生えないようにすれば良いのに、その方が絶対に楽ちんだよ」


 しかし、ダンは首を振る。

 エリンと話しながらも、雑草をむしる手は休んでいない。


「確かにエリンの言う通り、魔法を使えば楽だ。だけど……基本はこうやって地道に働かないといけない。楽をしてばかりだと人間が駄目になりそうな気がしてな」


「楽をしたらダメになるの? エリン達が駄目に? ふう~ん……」


 エリンは、可愛らしく首を傾げる。

 ダンの言う事を少しでも理解しようと、頑張っているのが分かる。

 そんなエリンのちょっとした仕草が、ダンは愛しいと思う。


「それに汗を流して一生懸命に働けば、腹も減って飯も一層美味い」


 労働の後の食事という、紐づいた言い方をしたら、エリンはすぐ理解したようだ。


「成る程! 一生懸命働いてお腹が空くと、ご飯が美味しい……そうか、そうだよね……うんっ! ダンの言う通りだねっ。エリンにも段々分かって来たよ」


 エリンの言葉に、笑顔で応えていたダンであったが、急に眉間に皺を寄せる。


「む! 誰か、来る」


「誰? あ、この気配は?」


 エリンも、ダンの真似をして眉間に皺を寄せた。

 不快そうな表情になる。


「この気配……エリンに酷い事を言ったふたりだ」


 エリンへ、酷い事を言った……

 となると、来るのはあのアルバートとフィービーのふたりであろう。


 ダンも、誰が来るかは分かっていたようである。


「ああ、そうだな。まあ……そろそろ来る頃だとは思ったよ」


「そろそろ?」


 何故、ダンが予想通りのような言い方をするのか……

 エリンには不思議であった。


 しかしダンは納得しているらしい。

 小さく頷く。


「うん、このままにしてはおけないから、お互いにな」


「???」


 ダンの言う意味が……分からない。

 エリンはちょっと悔しくて、ねたような表情になる。


 気付いたダンは、エリンの顔を見て苦笑した。

 片手を挙げて、謝罪する。


「ああ、御免。少し説明が必要だな」


「説明?」


「アルバート達が王家に命じられた、俺の監視役だとは言ったよな」


「うん、言った。エリンは覚えているよ」


 エリンの記憶力は良い。

 抜群と言っても良い。

 監視役と聞いたアルバート達が、何か理由があってダンを見張っているという認識は持っていた。


 エリンが頷くと、ダンは言う。


「そう、アルバート達は、な。この王国の元騎士で、宰相様から命じられた俺の監視役兼連絡係なんだ。たまにヴィリヤ……あいつから直接使い魔が来ることもあるけどな」


「連絡係? 使い魔?」


 エリンは、まだ話の中身が見えない。

 ダンはようやく、自分のミスに気付いたようだ。


「ああ、御免。最初から順を追って話そう。そうじゃないと良く分からないよな」


「うん! お願い」


 やっぱりダンは、エリンの事を考えてくれている。

 そう思ったエリンは、嬉しくて堪らない。


 ダンは微笑み、ゆっくりと話し出す。


「まず大元は創世神の巫女さ。この国で創世神の巫女はたったひとり。彼女は神殿ではなく王宮に居る。その巫女に神託とやらが降りて、俺に仕事の依頼が来る。その神託は直接俺ではなく、間接的に来る。俺に連絡をくれるのが王宮魔法使いであるヴィリヤ・アスピヴァーラなんだ」


 宿敵の名前が出たので、エリンの目付きが鋭くなる。


「むむむ、そのエルフ女が創世神様の巫女から神託の話を受けるのね。偉そうにぃ!」


「その通り。下された神託の内容を、反映させた魔法の指令書をヴィリャが作る。その指令書を預かって、ここへ持って来るのがアルバート達。俺はその指令書に従って仕事をするんだ」


「ああ、そうだったんだぁ!」


 創世神の神託により、ダンは地下世界へ来た。

 エリンの居る地下世界へ来て、助けてくれた。

 やはり運命だ!

 エリンは、一転して機嫌が良くなった。


「それで、指令書にあの最低悪魔の名前があったの?」


「そうだよ。それで魔王アスモデウスを倒してお前を助けて、今回依頼された仕事が完了しただろう? そうすると創世神の巫女へ再び神託が降りるそうだ。(わざわい)が去った……ってな。それで巫女からまたヴィリヤへ連絡が入る……最後にヴィリヤから、つまり俺の仕事が終了したという連絡が来るのさ」


「つまり、これからあのふたりが来るって事は……ダンの仕事が終わったていう創世神様のお報せ?」


「そういう事……俺の監視と、ヴィリヤからのパシリもやっているのがアルバート達だ。彼等が連絡をくれたら、俺は報酬を受け取りに、王都へ行く」


 漸く、エリンにも話が見えて来た。

 簡単に言えば、ダンは創世神様の神託を受けて働いているのだと。

 そして現在は、ちゃんと働いた分の見返りも貰っているようである。


「良かったね、もうただ働きじゃなくて」


 エリンの言葉を聞いた、ダンは悪戯っぽく笑う。

 ヴィリヤというエルフに、お仕置きした事を思い出し笑いしたのだ。


「ああ、全くだ。散々ただで働かされて、怒った俺がつんつんヴィリヤのお尻をぺんぺんしたからな」


 気取ったつんつんエルフに、お尻ぺんぺん!

 エリンは、ダンの言い方が面白くて堪らない。


 つい、「あははっ」と大笑いしてしまったのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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