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第153話「必然たる理由①」

 太陽の光が全く射さない、暗く深き地下の為……

 魔力で動く魔導時計でしか、現在の時間を知る事は出来ない。

 だが……

 翌日ダン達は、最初案内された『会議室』に居た。


 いよいよダンがリストマッティ達デックアールヴ復権の為に協力するのか、それとも否か……の返事をするのだ。


 昨日居た先方のメンバーは全員揃っていた。

 つまり、リストマッティと、配下のデックアールヴ達である。


「さて……ダン殿。貴君の回答や、いかに?」


 リストマッティの問いかけに対し、ダンは即座に答える。


「ああ、了解した。喜んで協力させて貰う」


 ダンのOKを聞き、リストマッティは満足そうな笑みを浮かべた。

 『予想通り』の答えという感じだ。


「ありがたい! では、私の話を聞き、ダン殿は納得し、賛同して頂けた……という、理解と認識で良いのだな?」


「それもある」


「ん? それも……とは、どういう意味だね?」


 不可解な面持ちになったリストマッティに対し、

 ダンは「ここからが本番!」という雰囲気をかもし出している。


「さて……ここで、ふたつのサプライズを、リストマッティ、貴方達へお見せしよう」


「何? ふたつのサプライズだと?」


「そうだ。俺には貴方達に協力すべき、必然たる理由がふたつあるからだ」


「むう! 私達に協力すべき必然たる理由があると?」


「ああ、これから教えよう。まずは、我が嫁エリンがその理由さ! さあエリン立ってくれ!」


「はいっ!」


 ダンに呼ばれ、エリンが、「すっく」と立ち上がった。

 そして胸を張り、リストマッティ達を見据えた。


 しかし、リストマッティ達は、怪訝けげんな表情をする。

 目の前の人間族の少女に、いかなる理由があるのかと?


 ダンの変身魔法は……

 それほど、完璧であった。

 上級魔法使いだと思われる、リストマッティと配下達が、エリンの正体がデックアールヴの王女だと、全く見抜けないのだから。


「ダン殿……その娘エリン殿が、貴君の妻という認識はある。だが……どうして彼女が私達に協力する理由となるのか? ……皆目、見当がつかん」


「…………」


 リストマッティの疑問に対し、ダンは、暫し無言であった。

 時間を与え、リストマッティ達の答えを待つが如く、試しているようにも見える。


 ダンの意図を理解し、リストマッティは少し考えたようである。

 だが、答えを出すのを、すぐに諦めた。

 彼にとって、ダンが協力する『理由』よりも、不可解な『事実』の方が、ずっと重要なのである。


「ふむ……まあ、いかなる理由にせよ、ダン殿……君が私達に協力してくれるのなら問題はない」

 

 しかしダンとエリン、ヴィリヤにとっては、ここでしっかりと伝えておかねばならない事がある。

 エリンとヴィリヤの、真の正体を。

 デックアールヴにかけられた『呪縛』からの解放に協力する、必然たる理由なのだから。


「……リストマッティ、これから起こる事を良く見てくれ。貴方が絶対に納得する理由さ」


 ダンはそう言うと、「ピン!」と部屋中に響くような音で、鋭く指を鳴らした。

 すると、変化の魔法は解けた!


 目の前の……

 エリンの身体の輪郭が……

 曖昧となり、ぼやけて行く……


「お、おお!……これは魔法なのか!? こ、この娘の顔立ちは!? 髪が! ま、まさか! デックアールヴ!?」


 リストマッティが驚いて叫んだ通り、あっという間に、エリンの顔立ちが変わって行く。

 瞳は落ち着いた色彩のダークブラウンから鮮やかな菫色すみれいろへ、髪の毛が淡い栗色から輝くようなシルバープラチナへ、そして耳も変わった。

 左右の髪の間からエルフ族特有の、小さなとがった耳が「ぴょこん」と飛び出したのだ。


 やがて……

 真の姿を見せたエリンは、「じっ」と、リストマッティ達を見つめた。

 そして、りんとした口調で告げる。


「リストマッティ、良く見なさい! これが、本当の私よ!」


「おお……」


「ああ!」「まさか!」「どうして!」「ありえない!」


 まさしく!

 エリンは、純粋なデックアールヴ族。


 ひと目で分かる『同胞』の姿を目の当たりにして、リストマッティと配下達は、驚愕の二文字に固まっていた。


「リストマッティ、エリンは地上で俺と暮らす為、今迄は変身の魔法で、人間に擬態していた。擬態した理由は、貴方なら分かる筈さ」


 ダンの物言いを聞き、少し混乱しながらも……

 リストマッティと配下は、ダンが仕掛けを施したり、嘘をついていないと判断した。

 何故ならば、ダンは、リストマッティ達を偽り騙す必要が全くないからである。


「う、うう……ダン殿! 貴方がここまで来て、今更! う、嘘をつくなど! あ、ありえないっ」


「ああ、エリンがデックアールヴ族であるのは、真実だ」


「う、うむ! 確かに! わざわざ人間の娘を、変身魔法でデックアールヴに擬態させるなど……全く意味のない行為だ」


「リストマッティ、貴方の言う通りさ。そんな事をする意味がない」


「ならばっ! た、頼む! こ、この子の正体を……正体を教えてくれっ!」


 必死の形相となったリストマッティの要望に、ダンは即座に答えてやった。


「エリン良いぞ……彼に名乗ってやれ」


「はいっ!」


 エリンは即座に返事をすると、大きく息を吸い込んだ。

 そして、朗々とした声を発し、名乗る。


「私の名は、エリン・ラッルッカ。偉大なるデックアールヴの王、トゥーレ・ラッルッカの娘よ」


 驚くリストマッティ達を、正面から見据え、エリンは堂々と名乗った。

 それは彼女の人生の中で、最も誇りをこめた挨拶であったのだ。

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