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第142話「未知の世界へ④」

 ダン、エリン、ヴィリヤ……3人はまだ、ダンの創った異次元空間、すなわち異界に居た。

 しかし、話を始めた時の緊迫した雰囲気は微塵もない。

 とても、なごやかなのである。


「あはは」


「うふふ」


 お互いの心と心が通じ合ったエリンとヴィリヤは、嬉しそうに笑いながら、ずっと他愛もない話を続けていた。

 ダンとの田舎暮らしや、好きな食べ物とか、失敗談とか……

 話題は尽きない……


 そんなふたりを、優しく見守っていたダンであったが、『頃合い』と見て、新たな話を切り出す。

 

 今回、この迷宮へ来た『本来の目的』についてである。

 すなわち迷宮の調査と、クランフレイムやニーナの兄など行方不明者の救助だ。


「実は、この異界への転移は、奴らへ仕掛けた俺の罠の仕上げでもあるんだ」


 罠の仕上げ……

 エリンとヴィリヤは「意外だ?」という顔をする。


「え? ここに居る自体が罠なの?」

「ダン、そうなんですか?」


 首を傾げるエリンとヴィリヤへ、ダンは言う。


「ああ、俺達が姿を消しただけで、奴等は戸惑っているだろう」


「それって、エリン達が急に居なくなったから?」

「うふふ、あいつ、さぞ吃驚したでしょうね? あちこち探し回っているかも?」


 想像したら、可笑しくなったのであろう。

 エリン達は笑顔だ。

 特にヴィリヤはさも面白そうに笑っていた。


「だな。それにもし魔法で消えたと推測しても、何故、地下10階へ来てから消えたのかという中々解けない疑問を持つだろう」


「確かに! 10階に来て居なくなったら変だと思うよね?」

「ええ、最終目的地の目前ですものね」


「うん! 想像してみてくれ。奴はず~っと待つうちに……段々、いらいらして来る、最後には凄く腹が立っているだろう。どうして自分の下へ来ないのかとね」


「あははっ」

「今頃、頭から湯気を出していますね、あいつ」


「おお、それで俺は奴らの正体や目的をいろいろと考えてみた」


「奴らの正体? 目的?」

「一体、何者なのですかね? ダンには分かるのですか?」


「ああ、いくつかの事象を基に、あくまで俺の勘というか、あてずっぽうなんだが……」


「旦那様、なになに?」

「もったいぶらず、教えて下さい、ダン」


「もし言っても、おいおい何それ? って思わないでくれよ」


「分かったから、早く!」

「ダン、じらさないで」


「じゃあ、言うぞ。奴らは……ダークエルフの一族かもしれない」


「え?」

「あいつ、ダークエルフ……なんですか? エリンさんと同じ?」


 あの憎き謎の『影』がダークエルフ?

 ダンの、推測を聞いたふたりはとても驚くが……


「ヴィリヤ、改めて聞く。ダークエルフが呪われてなどいないと、はっきり分かっただろう?」


「は、はい……」


 ダンからいきなり問われ、ヴィリヤは、思わず口籠る。

 

 ふるい本を読んだり、周囲から教えられたせいもあったが……

 つまらない迷信を、頭から信じていた自分が、あまりにも恥ずかしいから。

 エリンと親しくなった今となっては、もう『黒歴史』でしかない。


 羞恥しゅうちで、顔を少しあからめたヴィリヤへ、ダンは言う。


「俺はエリンと暮らしてみて分かったが……ダークエルフはとても優れた種族なんだ。お前も、エリンと一緒に迷宮を探索して強く実感した筈だ」


「た、確かに……」


 大きく頷いて同意するヴィリヤ。

 片や褒められて、照れるエリン。

 こちらも、少し頬を染めている。


「そ、そんな事ないよ……私なんて」


 しかし、ダンはきっぱりと言い放つ。


「いや、お前はとても優れている。自信を持てエリン」


「あ、ありがとう、ダン! 私の、エリンの旦那様……」


 ダンから褒められてはにかむエリン。

 更にダンはヴィリャにも告げる。


「それとヴィリヤ、これから言うのは人間である俺の客観的な意見だ。申し訳ないが、ふたりとも気を悪くしないで聞いてくれ」


「りょ、了解!」

「了解です!」


「ダークエルフは、エルフに比べ、魔力量や魔法の行使には少し遅れを取るかもしれない」


「う………」


 と、口籠るエリン。

 どうやら納得出来なくて、凄く反論したいらしい。

 だが、さすがに場の空気を読んで、「じっ」と我慢している。


「…………」


 一方、ヴィリヤは無言だ。

 嬉しいのか、少しだけ顔がにやけていた。


 ダンの『分析』は続いて行く。


「だが、身体の頑健さ、戦闘力、そして順応性ではエルフに勝る」


 今度の『反応』は全く逆である。

 エリンが勝ち誇り、ヴィリヤの表情が暗くなる。


「…………」

「う………」


「総合的に見て、エルフとダークエルフの能力は互角と言って良い」


「互角……」

「う………」


 ダンからは、ダークエルフとエルフが能力的には、『互角』だと言われてしまい……ふたりは、また口籠ってしまったのである。

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