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第134話「確信」

 「なんやかんや」ありながら……

 地下7階を難なくこなしたダン達は、更に地下8階へ到達した。


 魔物は下層へ行くほど、強くなる。

 それは、このフロアでも変わらない。


 この地下8階で探索者達を襲うのは、主に『上位種』である。

 そうギルドの地図には記載してあった。


 上位種とは文字通り、『希少種』とも言われ、通常の個体、すなわち普通種より能力上位といわれる存在だ。

 ごく稀な確率の、イレギュラーで誕生する。


 身体、膂力、そして魔力等々……

 通常の個体の数倍以上の能力を有するのだ。


 ギルドの地図は正確であった。

 オークの上位種オークジェネラル、オーガの上位種オーガキングなどが、『配下』を引き連れ襲って来たのだ。

 無論、ダン達を『餌』として捕食する為である。

 ちなみに、オークの場合は性的欲求を満たす事も含んでいるのだが……


 しかしダン達の戦いは、通常種に対するものと、全く変わらなかった。

 力加減を、若干変えただけだ。


 火蜥蜴とケルベロスが吐く猛炎、ヴィリヤの氷化魔法、エリンの岩弾、そしてダンの爆炎をパワーアップして対処したのである。


 こうして……

 ダン達は出現した魔物を全て蹴散らし、難なく地下9階へ到達した。

 いよいよ、最下層の地下10階は目前である。


 気合が入りまくりの、エリンとヴィリヤへダンは言う。

 何となく、教師然としている。

 

『ふたりとも、順調な時こそ気を抜くなよ。好事魔多しと言うからな』


 ダンの言葉にすかさず『反応』したのは、エリンである。


『ねぇ、ダン、それことわざ?』


『ああ、エリン、諺だ』


『教えて!』


 ダンから教わるのが好きなエリンは、「もっと!」とせがむ。

 ヴィリヤも同様である。


『うん、私も知りたい』


 そんなふたりに対し、ダンは簡単に説明してやる。


『文字通りさ。さっきも言ったが、順調な時こそ、突然邪魔が入ったり、気付かない所に落とし穴がある。油断大敵って諺もあるぞ』


『成る程!』

『慢心はいけないって事ですね』


 こうした会話で分かる通り、3人の気持ちは、今やひとつだ。


 そんなこんなで、「どんどん」進む3人であったが……

 この地下9階も8階同じく、上位種がどんどん襲って来る。


 そして何体か、上位種を倒した後に現れたのは……

 今迄に出現した、オーガキングよりふた回り以上も大きい個体であった。


 一応、3人は相手の様子をうかがう。


『ヴィリヤ、あいつ、手ごわそうだね……』

『ですね、エリンさん、結構強そう』


 凶悪な形相の敵を遠くから見やるエリンとヴィリヤ。

 ダンも、真っすぐに『敵』を見据える。


『あいつは、オーガの中では最上位種のオーガエンペラーだ』


『旦那様! オーガエンペラー? 初めて見るよ』

『エ、エンペラーですか? 確かに大きくて、風格はありますね、成る程……』


 「ポン」と手を叩いたダン。

 何か、思いついたようだ。


『よし、ここは俺に考えがある』


『え? 旦那様、考え?』

『ダン、どうするつもりですか?』


 というエリンとヴィリヤへ……


『ここは俺が単独で行こう』


 何と!

 ダンはひとりで戦うと申し出たのである。

 こうなると、


『え? どうして?』

『そうですよ、ダン。さっき言った諺と反します。言行不一致って事ですよ』


 責める? ふたりに対し、ダンは「しれっ」と笑う。


『ははは、まあな。だが……大丈夫、お前達なら、分かるだろう? アスモデウスが物差しだ』


『アスモデウス!?』

『ダン!』


 ダンは何か指示を出したらしい。

 火蜥蜴はオーガ共を一段と明るく照らすと、ケルベロスは飛び退り、エリンとヴィリヤを守るよう、ふたりの前面に立った。


 ケルベロスとは対照的に、ダンは「ずいっ」と前に踏み出したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 エリンとヴィリヤが見守る中……


 ダンは「どんどん」進んで行く。

 何体もの火蜥蜴に煌々と照らされ、真っ赤に染まったオーガ共は……

 先程から全てが興奮と憤怒の表情を浮かべ、思いっきり咆哮していた。


 最初ダンが単独で行くと言った時ほど、エリンとヴィリヤは心配していなかった。

 ダンが告げた物差しだと言った名前……『悪魔王アスモデウス』というとんでもない敵の名がその理由だ。


 アスモデウスは……

 

 エリンにとっては、『一族の憎き仇』であり、ヴィリヤにとっては、創世神から下された神託にあった、『世界の災厄』の根源だ。


 ふたりに共通していたのは、アスモデウスがとんでもない強敵だという事、そしてダンがあっさり倒してしまった事。


 『物差し』というのは、「アスモデウスを基準に考えろ」というダンの投げ掛けだ。

 または、ダンの安否を心配するふたりに対し、「懸念を払拭しろ」という投げ掛けでもある。


 そうはいっても、ヴィリヤは不安が少しだけあった。

 ダンが、アスモデウスを倒したのは紛れもない事実である。

 だが……

 実際に彼がその悪魔王と『戦う場面』を見てはいない。


 そして、疑問もある。

 あのような諺を、敢えて言いながら……

 「何故、ダンは単独でオーガ共に戦いを挑むのか?」という、「もやもや」した疑問だ。


 ヴィリヤは、ふとエリンを見た。

 もう、癖になったと言って良い。


 果たして……

 エリンは、目を「きらきら」させていた。

 まるで、「あの時と同じ! ダンは、私の王子様!」とでも言うように……


 すかさず「ピン!」と来た。

 ヴィリヤは、もう確信した。

 エリンは……アスモデウスを倒した『現場』に居たのだ。

 間違いなく!


 そしてダンは、悪魔王アスモデウスから助けたのだ。

 目の前の、この美しい少女を!


 やはり、エリンには大きな秘密がある。

 ダンと結ばれた、それも固く固く結ばれた絆にも関わる重大な秘密が……


 知りたい!

 その秘密を!


 ヴィリヤはそう思うと同時に、またも『複雑な感情』が心を満たしたのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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