表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/191

第133話「宝箱②」

 今迄は、完全スルーしていた『宝箱』を開ける……

 

 と、いう事で、地下7階に居るダン達の前には、宝箱がひとつある。

 床に「がっつり」固定された物で、簡単には持ち去れない。

 

 また不思議な事に……

 何らかの魔法が掛かっているのか? 

 それとも何者かが、気まぐれに入れて行くのか?

 ランダムに、中身は変わるのだ。


 そして、開けてみて吃驚する事も。

 稀れにだが、『からっぽ』という、ハズレの場合もあるから。


 ……今は施錠されていて、新たなお宝が仕舞われているようだ。

 当然、危なそうな罠も仕掛けられていた。

 まあ苦労して開けて、万が一『からっぽ』だったら、目も当てられない。

 エリンとヴィリヤが「暴れる!」事は間違いないだろう……


 さてさて……

 今更だが、シーフ不在のダン達はどうやって、この宝箱を開けるのであろうか?


 エリン達の『おねだり』を渋々承知したダンではあったが……

 一応、方法は考えていたようである。


 期待に胸を膨らませ、ウキウキ気分のエリンとヴィリヤ。

 そんなふたりへ、ダンは言う。


『エリン、ヴィリヤ、宝箱を開ける為に、お前達にも協力して貰うぞ』


『当然!』と、エリン

『喜んで!』と、ヴィリヤ。


『ねぇ、旦那様、どんどん指示をしてくれる?』


 エリンが「にっこり」笑い、促す。

 「準備はOK!」の雰囲気だ。


 しかし、ダンはいつも通り慎重だ。

 『前振り』を忘れない。


『ああ、俺の魔法でも罠の種類は特定出来ない。なので罠は敢えて無視。強引に開けるしかない。だから覚悟はしておいてくれ』


『という事は? 何? 旦那様』

『ダン、覚悟って?』


『ああ、もし仕掛けられたのが爆発系の罠だったら、宝箱ごと吹っ飛ぶからな。当然中身もおじゃんさ』


 中身が「おじゃん!」と聞き、エリンとヴィリヤの表情が曇る。


『う~、それ悔しい』

『何とかなりませんか、ダン』


 縋るようなふたりの顔を見ても、ダンはきっぱりと言い放つ。


『ならん! お前達の要望を聞いたんだから、それくらいは譲歩しろ。その代わり安全は優先されるから』


『う~、分かった』

『納得です。私達の安全には代えられませんね』


 こうして……

 宝箱は、いよいよ開けられる事となったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 15分後……


 ……ダン達の前の前にあった宝箱は……

 もはや、完全に見えない。


 何故ならば……

 周囲を「ぐるり」と何重にも囲われているからである。


 まずはエリンの地の魔法、岩壁ロックウォール

 そしてヴィリヤの水の魔法、水壁ウォーターウォール……それも氷の壁だ。


 無論、ダンも魔法を使う。

 3人を守る為に魔法障壁を張るのだ。

 物理的、魔法、両方に効果のある万能タイプの障壁である。


 最後にダンが開錠の魔法を使う。

 罠を解除せず、単純に蓋を開けるのだ。

 当然、罠は作動してしまうから……何が起こるか予測出来ない。

 なので、このような防護処理を施したのだ。


 準備が整い、ダンが合図をする。


『さあ、じゃあ開けるぞ』


『いよいよだね!』

『わくわくですよ!』


 何と!

 エリンとヴィリヤは手を取り合っていた。

 ふたりの仲はもう完全に親密となっている。


 暫し経って、ダンの開錠魔法が発動され、宝箱の蓋は勢いよく跳ね上がった。

 その瞬間!


 迷宮内には、けたたましい音が鳴り響いた。


 宝箱に仕掛けられていた『罠』は……『警報』であった。


 これは魔法により、周囲の魔物を興奮させ、呼び集めた上で……

 侵入者を喰い殺させるという間接的な罠だ。


 襲来したのは、オーガとオークの混成軍であった。

 当然、こんな奴等は敵ではなく……

 火蜥蜴サラマンダー、ケルベロスの猛炎で多数を焼き殺した後、ダン達3人により、あっさり屠られたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ……罠により、呼び寄せられた魔物との戦闘が終わった。


 周囲に張り巡らされた遮蔽物も取り除かれ、いよいよ宝箱の確認である。


『ヴィリヤ、良かったね!』


『ええ、本当に、エリンさん!』


 ふたりは「にこにこ」していた。

 危惧していた『爆発系』の罠ではなかったからだ。


 もし爆発したら、お宝ごと、破壊される可能性は充分にあった。

 

 それに、エリンとヴィリヤは改めて認識していた。

 ダンが宝箱を放置していた意味を。


 たったひとつの宝箱を開く為に、ここまでの手間と危険が伴う。

 もし今迄見つけた宝箱を、いちいち全て開けていたら……


 まだまだクランは、浅い階層に居ただろうから。


 そして……気になる宝箱の中身は……


『え~? アミュレットふたつだけ?』


『箱は結構大きいのに、中身はこれだけなんですね?』


 ふたりは、宝箱の底にあった、ふたつの貴金属を凝視していた。

 ダンから念を押されたので、いきなり手を伸ばして、拾い上げたりはしない。

 お宝自身に呪い等、細工がされている場合もある。


 ダンが魔法で『確認』し、危険が無い事を報せると……

 エリンとヴィリヤは、とうとうアミュレットを手に取った。


 ふたつとも、破邪の効果がある銀製の鎖を使ったペンダントである。

 実のところ、エリンは宝石に少し詳しい。


『ええっと、ひとつはトパーズ、ひとつはローズクオーツだね』


『綺麗です!』


 エリンはかつて王女だった頃、宝石が好きで多数所持していた。

 地下世界では、普通の物資と比べ、金属や宝石は比較的楽に手に入ったから……

 だが、アスモデウスとの戦いで全てが失われ、今はひとつもない。

 

 一方、ヴィリヤは「普通に」宝石が好きでいくつか持っている程度だ。


『危険はないようだし、ふたりでそれぞれつけたらどうだ?』


 ダンに言われ、ふたりは悩む。

 お互い相談し、悩んだ末に……


 エリンはローズクオーツ、ヴィリヤはトパーズを納得の上、選んだ。


『似合う?』と、エリン

『似合いますか?』と、ヴィリヤ。


 ふたりは、アミュレットを首から下げると、ポージングをした。


『おお、似合うよ』


『やったぁ!』

『嬉しいです!』


 ダンに褒められ、エリンとヴィリヤは満足そうだ。

 『お約束』で、フィストバンプをした。

 

 ちなみに、ローズクオーツは恐怖や嫉妬、悲しみ……そして『孤独』から守ってくれる宝石。

 そしてトパーズは、暗闇に居る者へ、『希望の光』をもたらす宝石なのだ。


 嬉しそうなエリン達を見ながら……

 「この先で苦難が起こったら、アミュレットの加護があれば」と、ダンは優しく微笑んでいたのだった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ