表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/191

プロローグ第1話「勇者召喚」

リニューアル新連載です!

本日『2月23日』は、『19時から23時まで』段階的に『第7話まで更新する』予定です。

何卒宜しくお願い致します。

 私は名もない『語り部』でございます。

 

 これから私がお話しするのは……

 魔法のない異世界から連れて来られ……

 数奇すうきな運命に翻弄ほんろうされ、

 一旦、いいようのない孤独と絶望におちいりながらも……

 

 最後には愛する家族と大切な仲間に巡り会い、

 不可思議な人生をまっとうした、ある男の生涯ででございます。

 では……

 お話を始めましょうか。 


 男……いや少年の名は大星オオボシダン。

 体格は中肉中背。

 大きくも小さくもなく、顔立ちも人並み。

 どこにでも居そうな、さして目立たない平凡な17歳。


 日本在住。

 都会から少し離れた私鉄沿線に住む。


 家族は父トオルと年が10歳離れた妹ネネの3人。

 母は……

 残念ながら、ダンが12歳の時に病気で死んだ。


 都心に勤める会社員の父は多忙だった。

 朝早く出勤し、帰宅するのはほとんど深夜である。

 馬車馬のように働いても、会社から正当に残業代を貰っていなかったのではと、ダンは疑っていた。


 母が亡くなった直後から……

 ダンは幼い妹ネネの面倒をずっとひとりで見ながら学校へ通った。


 重ねていうが、ダンは平凡な容姿に特筆すべきところがない体格。

 そして運動神経も並以下であった。

 

 武道は勿論、競技スポーツもやった事はない。

 ただ読書だけは大好きであり、自分が足を踏み入れない架空のファンタジー世界を良く想像する夢見る少年ではあった。


 そんなダンが高校3年生の時に、不運が襲った。

 父がリストラの余波を受け、失策などないのに、年齢を原因に理不尽ともいえる仕打ちを受けた。

 給料を下げられてしまったのだ。


 幸い通学していた高校は公立。

 学費未払い等の問題は生じなかった。


 でもダンはまともに高校には通えなかった。

 母の代わりに幼いネネの面倒を見るのは勿論……

 具合が少しでも悪くなったら、休んでつきっきりで妹を看病した為、出席日数はギリギリであったから。

 

 でも勉強は真面目にやった。

 何とか、まずまずの成績で卒業した。


 やがて高校を卒業したが、遊んではいられない。

 生活費が足りない。

 ネネにお人形やお菓子でさえ買ってやれない。


 ダンは安定した就職を考えたが……

 自宅で妹の面倒を見ながら、正社員として決められた時間に勤める事は無理だった。

 その為、まずは時間に自由がきく様々なアルバイトを多くこなし、生活費を稼いだ。

 いわゆるフリーターである。


 そんなこんなで月日が流れ……

 ダンは成人し、20歳となった。

 

 アルバイトでダンが家に不在だと10歳のネネはひどく寂しがった。

 「おにいちゃん大好きぃ!」が口癖で、ダンも妹を目に入れても痛くないくらいに可愛がっていた。 

 その為、友人と酒を飲んだり夜に遊ぶなど一切しなかったのだ。


 アルバイトが終わったら、買い物をする以外はほとんどまっすぐ帰宅の日々。

 しかしダンはそんな生活を苦にしなかった。

 幸い、家族皆が病気もせず、致命的なアクシデントもなく……

 ささやかな幸せを感じて暮らしていたのだ。


 しかし運命の神は残酷であった。

 かけがえのない肉親の父と、同じく愛する妹との永遠の別離という非情な裁決をくだしたのだ。


 ある日ダンが、街中を歩いていたら……

 いきなり足元の感覚がなくなった。


 手足をばたつかせ、必死にもがいたが……

 抵抗など出来なかった。

 そのままダンの意識は遠くなって行ったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ……気がついたら、ダンは見知らぬ場所に居るようだった。

 目が良く見えないから、はっきりした事は分からない。

 その上、身体の調子もおかしかった。

 以前より腕に力が入るが、使いこなせず持て余すという表現がぴったりな気がした。

 

 まるでダンは自分が自分でないようだった。

 頭へ膨大な知識も流れ込んで来て、大いに混乱した。

 クラクラして、とても立っていられなかった。


 しばし経ち……

 めまいは、何とかおさまっていた。

 目は少しづつ開き、ダンの視界がはっきりして行く。


 ようやく見える目でゆっくりと周囲を見やれば……

 ダンはうつぶせで、薄暗く広い部屋の中心に這いつくばっていた……


 ここは……どこだろう?

 とダンは朦朧もうろうとした頭で考えた。


 床に書かれているのは?

 人間の文字ではない、特異な文字である。

 本で見た事がある。

 バイキングが使ったという、ルーン文字に似ている。


 その文字と変わった形の絵を組み合わせ、直径5mはありそうな何か巨大な魔法陣が描かれており、その中心にダンは居たのだ。


 ここは、普通の部屋という感じではない。

 窓が全くない。

 灯りは淡いランプのような光を放っている。

 何か、儀式を行う祭儀さいぎの間という感じだ。


 あ?

 目の前に誰かひとり居る?


 細身のシルエット……

 どうやら女性のようだ。


 もしかして人間?

 た、助けてくれるのか? 


 しかし何か違和感を覚える。

 ああ、髪から突き出た耳が!?

 と、とがっている

 女性は……

 人間ではない?


 このような特徴を持つ者も本で見た事がある。

 そう!

 エルフだ!

 物語の中の架空の存在といわれるエルフだ。


 虫けらのように這いつくばっているダンへ、エルフは言った。

 細い腕を組みながら偉そうにして見下ろすように。


「お前はダンという名らしいな。しかし冴えない奴だ」


「な?」


「お前という男は、本当に不細工で不器用。どうしようもなく馬鹿で未熟だ」


「な、何?」


 ダンは身体に少し力をこめた。

 うつぶせのまま、何とか半身の状態になる。

 そんなダンへ、エルフは罵倒ばとうを続ける。


「しかし! 愚かで不完全なお前がこの世界へ来たのは、偉大なる創世神様の意思であり御心みこころである。だから勇者として崇高なる使命を果たせ」


「お、お前は!? だ、誰だ!」


「無礼者! 口をつつしめ! あるじとなる召喚者の私を敬いたたえるがよい!」


「な、何!」


「私は高貴なソウェル、ヴェルネリお祖父様の血を引く者。人間にはエルフと呼ばれる、リョースアールヴの魔法使いヴィリヤ・アスピヴァーラである!」


「だ、だ、誰でもいいっ!! お、お、俺を元の世界へ帰してくれっ!!」


「ははははは、無駄だ。絶対に不可能だ! お前を異世界から呼んだ召喚魔法は一方通行。元の世界への扉は閉じ、既に消滅したぞ」


「な、なに~~っ!? じゃ、じゃあ!」


「ああ、お前が思った通りだ。さすがに馬鹿でも理解出来るか?」


「ぬうう……」


「そうだ! お前はもう二度と元の世界へは戻れない」


「戻れない!? ふ、ふざけるな! 俺をネネの、妹のネネの下へ帰してくれ~~っ!!!」


 ダンは心が暗くなる。

 

 ネネは……今頃、どうしているのだろう?

 なかなか帰宅しない俺に待ちくたびれ、寂しがり大泣きしているかもしれない……


 帰りたい! 帰りたい!

 ネネの下へ帰りたいっ!!!


「おお、いいぞ、いいぞ。元の世界に戻りたいという渇望と執念の波動を感じる。その思いがお前の力を目覚めさせ、増幅させる」


「な、何だと!」


「ダン! もう諦めろ! お前は良き勇者となるであろう! は~はははははっ」


 もう二度と元の世界へは戻れない…… 


 うつぶせになっていた半身のダンから……

 完全に力が抜けた。

 再び這いつくばるダンの背に、ヴィリヤの嘲笑が容赦なく降り注いだ。


 こうして……

 後に『救世の勇者』となる大星ダンは、遥か遠き異世界へ召喚されたのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ