思わぬことで怒られることってあるよね。
この学院の図書室は膨大な数本がある。
歴史の本のコーナーを探して読んでみるも、当たり前ながら何年に戦争が起こったとかそういったことしか書いていない。
というより、この程度のことなら授業でもやってたりする。
「歴史っていうより宗教とか思想の方かな……?」
本のコーナーを変えてみるも、中々悪魔関連のようなものは出てこない。
諦めて帰ろうかと思った時、絵本が目に入った。
「おじいちゃんがあくまにとりつかれちゃった……」
見るからにひらがなで子供向けの絵本だ。
でもここは学院で民間の図書館ではない。
置いてあるのも宗教のコーナーだ。
私は手に取り本を開いた。
『おじいちゃんは、いつもやさしい。
ぼくといっしょにかくれ✕✕をしてくれる。
おじいちゃんは、いつもやさしい。
おか✕✕んにないしょだよってごはんをくれる。
おじいちゃんは、いつもやさしい。
おとうさんに✕✕✕
おじいちゃんは、ある日みんなを✕✕✕』
所々文字がマジックで消されている。
何だこの本は……
気になり、借りてジュリオかシャマリオ先生に聞いてみようと思いカウンターに向かう。
カウンターには似つかわしくないメルクリオが座っていた。
「うわっ、メルクリオって図書委員かなんかだったの?」
「悪りぃかよ。」
「悪くはないけど……似合わないね。」
「係りに似合う似合はないはねぇだろ。」
そういいながらも手際よく貸し出し処理をしてくれた。
うーむ、黙ってたら好みの顔なんだけどな。
「何みてんだよ。ほら。」
本を渡されてシッシッと手振りで追い出される。
この性格が良ければきっとモテたのになぁ。
ジュリオの居場所はわからないので、シャマリオ先生が確実にいるであろう職員室へと向かった。
先生に本を見せようとすると、先にシャマリオ先生が困った顔で話しかけてきた。
「ジュリア、他国のセイメイに手紙を出したんだってね。」
「え、まぁ、メアリーを通してですけど……別に手紙のやり取りは問題ないでしょう。」
「せめて教えて欲しかったなぁ。内容はある程度伏せてたみたいだけど、清めの依頼なんかは個人で出来るものと出来ないものがあるんだよ。」
「別に依頼をしたつもりはないですよ。どうかなー位のニュアンスで書いてもらいましたし……」
「今回はジュリオがセイメイを旅行に誘いたかったって風に丸めてくれたけど、国際問題にもなりかねないからね。彼らはまだ学生だけど、各国で有名なんだから。」
自国にも一応お祓いの人だっているから、その人たちの面目も立たないしね。とシャマリオ先生に淡々と注意をされてしまった。
「で、その件を謝りにきてくれた訳じゃないんだよね。」
「そうですよ、この本なんですけど……」
私はシャマリオ先生に見つけた本を渡した。
ページをパラパラとめくり、不思議そうに私を見つめた。
いや、私だってこれを見せて何が言いたいかってことはあれなんだけど、ほら、学院にあるのは何かキーパーソンみたいな気がするというか……
「ほら……その、今回のセレナのこととかと関係ないかなぁって……」
「まぁ、君が調べてるのはよくわかったよ。」
呆れた顔で本を返されてしまった。うーん、私の勘違いだったのだろうか……
とりあえず、セイメイは来てくれるようなので旅行の日まで待つしかないようだった。




