さよならじゃなくてまたね。
事件の後は何事もなく過ごせていた。
唯一、気になるのはセイメイとメアリーの仲が深まっていることくらいだ。
「セイメイ、昨日くれた簪つけてみたの。どうかしら?」
「うううん、すごく似合ってるよ!」
今日のメアリーは髪をアップにして和風の可愛い簪を頭にしている。どうやら二人で放課後に出掛けたりもしてるようだ。
まぁ、チャラ男やサイコパスより断然良い選択肢かな。
「ジュリアも簪が欲しいの?」
「ジュリオは物をあげれば女の子が釣れるとお考えですか。」
「単純だなぁ、そんなので女の子がなびく訳がないじゃないか。ねぇ、メルクリオ君?」
「知るか。」
メルクリオに毎回一蹴されてるのに絡むのを止めないジュリオの精神力は強いなと思う。
そんなくだらないやり取りをしていると、ロウ先生が教室に入ってきて授業がはじまる。
「今日で交換留学最後の授業です。しっかり学んで帰ってください。」
本来であれば私達は残ったレミジオ達と交代する流れなのだが、ニーナやアルベルトの件もあった為、延期すると発表された。
わかるようでわからなかった授業も終わり、国へと帰る。
「メアリー……あの、手紙……送るからね!」
「ありがとう、私も送るわ。」
「ヒミコ、色々ありがとうね。」
「いえ、お気をつけて。」
色々あったが、寂しくもある。また会える日がくるといいな。
こうして、私の2週間の交換留学は幕を閉じた。
学園へと戻ると、セレナやレミジオが出迎えてくれた。
「ジュリア、寂しかったわ!それに色々……大変だったみたいね。」
「うん……そっちは何もなかった?」
「何もないわ。」
おおう、絶対あった感じがする言い方だが、事件ほどではないだろう。
「えっと……レミジオと何かあった?」
「れみ……?誰かしら。」
「いやいや、あなたのお隣の格好いいお兄さん。」
「知らないわ、そんな人。」
どうしたのかとレミジオに視線を送るが、レミジオも困った顔をしている。これはあれかな、レミジオがきっと留学生にモテて、セレナがヤキモチを焼いている感じかな。
「セレナ、何があったかは知らないけど、そんな態度はレミジオに失礼よ。」
メアリーがセレナを嗜める。しかしセレナはそれも癇に触ったようで、メアリーに対しても言い返す。
「あなたには関係ないでしょ、みんなに媚びを売って、この八方美人が!」
「なっ……」
あれ、このセリフって交換留学の時じゃなかったの?
というか、初めて私の記憶にある展開を見た気がする。
あれ、ということはこの後って……
「セレナ、僕には良いがメアリーは関係ないじゃないか。そういう言葉遣いもよくないと思うよ。」
レミジオがメアリーを庇い、セレナは余計に怒りを隠そうともせずに二人を睨み付けて教室へと戻っていった。
「大丈夫かい?みんな大変だったのに、帰って早々巻き込んですまないね。」
「私は気にしてませんから。」
行きましょ、とメアリーに手を掴まれ教室へと私達も向かう。
まさかの展開だったので驚いたが、メアリーにはその気は無さそうなのでひとまず安心だが。
次に起こるイベントも思い出す努力はすべきなのかと思った。




